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ジリジリとオーブンの中で焼かれているような朝。

部屋に突如として銃声が鳴り響いた。

バババババッ


「ッ…!」


耳元でバイブレーションしていた四角い物を掠れた目で睨みつけ、そのまま起き上がる。

が、横になる。


うるさいなぁ朝から


枕で頭を隠し、ヘッドショットを逃れたがまだ銃声は止まない。

続けるように来る地震。

近づいてくる。

残り1メートル。

そっと気持ちだけ整えるが、それも意味をなさないようなドアの爆発音で志向がかき消される。


「起きなさいバカ息子ぉぉぉ!」


「うぉぉ」


我が聖地に足を踏み入れたのは参れもない悪魔そのものであった。

血まみれの衣服をまとい(赤いエプロン)、今にも飛びついてきそうな息遣い(階段を駆け上がってきた)。

おまけにこちらを殺すような目つきの悪さだ(これは本当)。


「朝から物騒な目覚まし音鳴らしてるんじゃないわよ!近所迷惑!そしてなぜ寝る!」


「ははっなにを言ってるんだ悪魔よ我は至高の頂に到達した神聖なる存在なのだ。それ以上この聖域に足を踏み入れるではない!」


「それじゃあこれからの学費やら生活費やらは自分負担ということで」


「…え」


それと。と悪い顔を浮かべながらこちらに不敵な笑みで見つめてくる。


「ゲームも取り上げるから」


「申し訳ございませんでしたお母さま。私目は心を入れ替え学業に頑張りたい所存でございますゆえ」


「うむ。よろしい」


これがうちの悪魔。

否、母親である。

佐藤香苗さとうかなえ42歳。

職業、看護師。

シングルマザー。

趣味、息子を論破すること。

いやいやうちの母親なかなかエグイ詳細ですね。

それでもこの家族(佐藤家)を支えていることは事実。

このように頭が上がらない。

俺はこの悪魔の下部である。


「ん?今悪魔って言った?」


「はははーなんのことでしょう」


この超能力者が。

いつもより起きるまでの流れが長かった為、早めに支度を済ませ、朝ごはんを食べる。

今日も飯はうまかった。


「うんうん、美味しいでしょ」


「母上心の中を読むのはお辞めになってください」


「顔みたらわかるのよ」


何そのドヤ顔。

もはや口を開かずとも会話は成立するのだ。

ありがとうございました俺の口。

小走りに玄関へ向かい、履きなれた靴を荒々しく履く。


「いってきます」


「はいよー」


学校までは15分といったところだ。

最近買ったロードバイクに胸を躍らせながらも颯爽と町中を走らせていく。

自慢ではないが、ここは都会。

田舎から上京してきて現在に至る。

やっと見慣れてきた風景に少しあくびをしながら信号待ちをしていると、この街一番のバカでかいビルに映像が映し出される。


バババババッ


突然の銃声。

そこにいた誰もが足を止めた。

殺伐とした映像に誰もが息をのむ。

そうか。今日だったな。


「どうも皆様おはようございます。今日は待ちわびた集計日です」


始まったのはここ数十年間この世界に社会現象を巻き起こしているあるゲームの番組である。

司会はCtube超大物実況者枝豆えだまめ

この映像を見ているすべての人が間違いなく同時に固唾をのんだ。


Chord.BLOOD


自分の脳に直接干渉し、あたかも自らが戦場にいるかのような感覚になれる機械、VO-M23。

その中でもずば抜けて人気なのがこのChord.BLOOD、通称COB。

プレイヤー層は老若男女問わず、これを職業として生活している人も少なくない。

そう、この時代の頂点は間違いなくCOBだ。

信号が青になっていることも気にせず、時が止まったかのように周囲の人々はビル掲示板に釘付けになっていた。

番組内では色々なゲストが登場する中、雑談が続ていく。


「それでは本題に入ろうと思います」


雑談ははなから聞いていないんだよ。


「今年の日本代表戦は白熱した戦いが多かったですが、最終集計が昨日終わりました。これを見ているみんなはどのチームがトップにきても結果に納得することでしょう。まずは戦績オープン!」


画面に映し出されるのは、今年戦ってきたプロチーム全試合の勝敗。

やはり今年はどのチームも競っている。


「いやー、やはり今年はどのチームも気合が違いますねぇ。これは順位が気になります」


「そうですね。今年は面白い試合が多くて私達実況者も手に汗握りました」


少し間があいて、番組内の電気がすべて消える。


きたっ。


「続いて、団体ランキング発表となります」


心臓の音がやけにうるさい。

大体予想はついているが、この緊張感がたまらなく好きだ。

自転車のグリップを強く握り締める。


「───オープン!」



昼休み。

学校はいつも通り騒がしかった。

新しい人がどうとかあの人がかわいいとか。

おれには関係ない。

どうも、陰キャ代表の影道かげみちです。

今日も教室の隅からお邪魔しております。

気分は中の上の下です。

お天道様も調子がいいようで、ギラギラと輝いている。

私はここらでひと眠りいたしましょうかね。

そのまま机に伏せると、夏のせいか机のひんやりとした温度が気持ちよく感じた。


「おはよう自称陰キャ代表朝だぜ」


「…」


これから気持ちよく寝ようとしている相手に太陽のように明るい声がおれを睡眠からどんどん突き放してくる。

今は絶対会いたくない人間ランキング堂々の1位だ。


「おい、絶対今会いたくない人ランキング1位とか思っただろ」


「うるせえよ太陽。そして心を読むな。おやすみ」


「寝るなよっ」


バシッと頭を叩かれ軽い脳震盪で死にかけると、ようやく意識が覚醒した。

山田太陽。

1つ家を挟んだところに住んでいる幼馴染。

趣味、スポーツ全般、勉強、ゲーム、幼馴染おれをいじること。

容姿端麗、全知全能、唯我独尊、etc…。

簡単に言えば超びっくり人間である。

特徴は名前の通り明るい笑顔と大きい声。

太陽みたいなやつだ。


「人気者は寄るな、俺の存在が霞む」


「今日は何のゲームして遊ぶ?」


「何回言ったらいいんだ。おれとは”ここ”で話しかけるな」


「なんでだよ兄弟~」


「うわっ、ひっつくな!」


後ろから抱きつかれておどおどしているのをみて周りの女子は「また夫婦でイチャついてるわ」「陰陽BL最高」「だれか白飯もってきて!」などと騒いでいる。

いや白飯ってどゆこと。

なんやかんやでクラスメイトから話しかけられることが多いのは太陽のおかげでもある。

実はこういうの嫌いじゃない。


「太陽いるかぁ!」


勢いよく開いた教室のドアから出てきたのはリーゼント頭のよくわからんやつだ。

BOT1と名付けよう。


「おれと怠慢はれやぁ」


「あのなぁ、理由もなしに太陽が怠慢するわけ──」


「──受けて立つ!」


「立つんかい~」


「その頭に免じてなぁ!」


「あ、こいつバカだった」


トコトコと付いて行く太陽を仕方なく追いかけ、学校の技術室に到着。

中は教室というより研究室のような作りで、何十台ものカプセルのような機械が並んでいる。

そう、これがVO-M23である。


「ルールは10点先取のS~Aレートの武器使用、メイン以外の武器使用禁止。デフォルトオンリーだ。双方準備に入れ」


どこから出てきたのか、この道専門の先生が審判に入っている。

お互いが機械の中に入り、試合前の5分間準備に入った。

5分間空ける理由は脳への負担を無くすため、とされている。

武器のレートは上からS~Eのランクがあり、もちろんレートが高いほど性能が上がる。

5分経過のブザーが鳴った。

ステージは[荒野〕。

シンプルかつ狭いステージのため人気度が高く、何度もリニューアルされている怠慢専用ステージだ。

お互いの武器に不正がないか審判が確認し、いざ試合が始まる。


「噂は本当みたいだなぁ{最強のQP使い}なんてよばれてるのがよぉ」


「別にいいだろ。おれはこれが好きなんだ」


QP-7。

このゲーム界隈で有名な弱武器の一つで、キューピーちゃんと煽られている程だ。

今ではDレート最弱武器とまで言われている。

スタート地点にワープし、3カウントで開始の合図が鳴った。

もちろん最初に動いたのはBOT1ことモヒカン男だ。


「俺の武器はSCARだ!表に出てきて戦おうぜぇ」


BOT1は威嚇射撃で岩や木を打ち続ける。

このマップの範囲は端から端までが容易に目視できるが、その分障害物が少ないため隠れるところが限られてくる。

弾幕を張られると相当不利だ。

おまけに使っている武器はAレートに限りなく近いSCAR。

怠慢ルールに関しては使うと嫌われるレベルで強い。


「ちっ反則ギリギリの武器使いやがって」


太陽は木の裏で機会を伺いながら待機する。

弾幕の切れる瞬間がチャンスだ。

銃声を聞きながら少しずつ顔を上げていく。


「今だ!」


「なっ」


素早く照準を合わせてヘッドに5発入れると、BOT1の体が消えた。

1-0。

よし、fastBLOOD(初めの1キル目を取ること)は取れた。

下がっていた太陽は一気に前線に上がり、先ほどのBOT1の立場と逆転する。

目の前には一枚のコンクリートの壁と2本の木。

出てくるのは3分の1だ。

耳を澄ませる。

距離は40mほどあり、このゲームの性質上足音が聞こえる範囲のギリギリである。

タッタッ

右の木から微かな足音が聞こえ、照準を合わせる。


「うぉらぁぁぁ!」


「────今だ」


出てきた瞬間に消滅するBOT1。

2-0。

ここからは悲惨だった。

BOT1は出てきてはやられを繰り返し、あっという間に試合終了。

10-0で幕を閉じた。

カプセルから二人が出てきてBOT1が太陽を睨みつける。


「てめー強いってうわさは本当だったようだがよ。これではっきりしたぜ」


「なにが?」


「てめーが”ウェポナー”だってな!」


「…はい?」


自分の負けに納得がいかなかった様子のBOT1は指を突き立てた。

ウェポナー。

このゲームにはいくつかのチートが存在し、その総称をウェポンという。

ウェポンを所有したプレイヤー。

つまりウェポナーである。


「ありえないぜ、Bレート最強のSCARに対しておまえはDレート最弱のQP-7だぞ!どんなに差があっても10-0なんてありえない!不正だぁ!」


「いいがかりだ。足音もまともに聞けないやつが俺に挑んでくるんじゃないぜ」


「やめなさい君たち。この怠慢は太陽君の勝ちだ。不正はなかった」


「黙れ腐れ審判がよぉどうせ太陽に買収されてんだろぉ」


お互いに認めない状況で審判までも否定する
















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