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愛のカタチ

作者: SchwarzeKatze

 「私この映画が良いな~」

 「え? この映画? 俺はこっちの方が……」

 「だ~め! 今日は私の方に付き合ってくれる予定でしょ? だから今日はこの映画にするの!」

 「俺は純愛物の映画なんて苦手なんだけど……」

 「あら? 奇遇ね? 私もそっちのアクションものは苦手なんだけど?」

 「……わかったよ。じゃあ好きな映画で良いよ」

 「じゃあ、チケット買ってくるね! ポップコーンはキャラメルとバターのハーフね。あとのみ物はオレンジジュースのLサイズお願いね」

 「はいはい」

 「あ~、はいは一回だけ! なにそのあからさまに嫌そうなのは?」

 「いや、なんでも……」

 「はい、わかったら、買いに行く!」

 「……わかりました」

 「映画館なんて久しぶりね。私見る前から緊張してきた」

 「いや、映画は緊張するものじゃないだろ? ところでどんなストーリーなの?」

 「ん~、雑誌でしか見たことないけど、淡い三角関係から女の子が勇気を出してその友情関係を壊しながら恋に目覚めていくストーリーみたいね」

 「みたいって……」

 「だ・か・ら、私だって雑誌でしか見たことが無いの! 観てりゃわざわざチケット買わないでしょ?」

 「はい……ごもっともで……」

 「じゃあ、そろそろ時間ね。席に座りましょ?」

 「わかった、ってちょっとまって! ボップコーンとか持ってくれないの?」

 「そんな細かいこと言わないの!」

 「はい……」


 「へー、この映画夏に公開なんだ。今度観てみたいなぁ」

 「え? この映画はちょっとグロくない? さっきアクションが苦手とか言ってたのに……」

 「ん~、なんか宣伝見ると観たくならない?」

 「そういうもんか?」

 「そうそう! あ、映画泥棒~! これ好きなのよね~」

 「……まさかこれを観るだけに来た?」

 「そんなわけないじゃない! さあ、始まるわよ。ちゃんとスマホの電源切った?」

 「はい、切ってますよ。お姫様」

 「お、お姫様って……」


 「……」

 「……」

 「これ。」

 「え?」

 「ハンカチ。使って」

 「うん……」


 「あ~! 雑誌の宣伝よりも終わり方が気に食わなかったなぁ~」

 「……あんなに泣いてたのに?」

 「う、うるさいわね! それとこれとは別! あ~、他のにすればよかった!」

 「じゃあまだ少し時間があるからこっちの映画を……」

 「ヤダ! 次はご飯がいい! もう映画はお腹いっぱい」

 「お腹いっぱいなら食事はいらなくない? ポップコーンも……」

 「それは別! さあ私をエスコートしてよ? 王子様!」

 「王子様?」

 「……さっき私の事、お姫様って言ったから……」

 「あぁ、そうでしたね。じゃあお姫様。ファミレスでランチでもいかがですか?」

 「ファミレスかぁ……まぁいいかもね」

 「お気に召したようで。ではお手を……」

 「……え? ちょ、そういわれると急に恥ずかしくなったってば!」

 「おや? お姫様、顔が少し赤いようで? お熱でも?」

 「~~!!」

 「……少しお熱いようで。今日は休憩されてはいかがですか?」

 「あ~!! もうからかわないで! 公衆の面前でおでこ同士くっつけるって……」

 「あはははは!!」

 「……行くわよ?」

 「はいはい」

 「……手」

 「え?」

 「つなぐわよ」

 「はい、お姫様」

 「う~ん!! もうそのお姫様はやめて!」

 「わかりましたよ」

 「あ~!! まだにやけてる!」

 「だって、そう言うところが可愛いからさ」

 「~~!!」

 「あれ? また顔赤いよ? 手も温かく……」

 「……もう」

 「ふふふ」

 「なにさ!」

 「こうして、二人でいるのが幸せだなってね」

 「……」

 「どうしたの? 急に黙り込んで?」

 「……なんでも」

 「そっかぁ……もう店の前だね。ここでいい?」

 「……うん」


 「じゃあ、俺は親子丼」

 「私はスパゲティー」

 「わかった、店員呼ぶね」

 「私にボタン押させて?」

 「……うん」

 「何その顔」

 「なんか、子供っぽいなぁって」

 「なにそれ」

 「いいだろ? 別に」

 「~~!!」

 「あ、怒った?」

 「もう押して! 私スパゲティーだから」

 「あ~拗ねた!」

 「知らない!」

 「親子丼とスパゲティーお願いします」

 「……」

 「なぁ……」

 「……」

 「ゴメン……」

 「……」

 「頼むから許してくれよ……」

 「……」

 「お願いだからさ……」

 「……くすっ」

 「ん?」

 「その顔も好き」

 「へ?」

 「その困った顔よ?」

 「あ~! からかったな!」

 「お返しよ!」

 「たく……あ、料理来たよ。冷めないうちに食べよう?」

 「うん!」

 「じゃあ、いただきます」

 「いただいきま~す!」

 「俺さ」

 「なあに?」

 「こうして何気ない食事でも、幸せを感じるんだ」

 「へぇ~。私もよ?」

 「そっか……」

 「うん……」

 「……」

 「……」

 「俺たちさ」

 「ん?」

 「もう付き合ってからどれくらい経つんだっけ?」

 「告白されたのがおととしの3月14日だから、2年と2カ月ってところかしら?」

 「……細かいな」

 「うん! だって私も好きだったから、告白嬉しかったよ? その時の言葉やしぐさも鮮明に覚えてるわよ?」

 「え?」

 「えっと……告白の言葉は……」

 「い、いや、ここではやめてくれ!」

 「ふふふふ……私のターンね? たしか……お前の事が好きだ。良ければずっと一緒に居てほしい……だっけ?」

 「い、言うなよ!?」

 「あら? 顔が赤いですよ? 王子様? 私が体温はかってあげましょうか?」

 「な、なっ」

 「ほれ、おでこ出して?」

 「こ、ここで?」

 「あらあら、また赤くなってますよ? 大丈夫ですか?」

 「くぅ~!!」

 「えへへ! 暖かいや……」

 「……」

 「可愛いなぁ……」

 「……くそぉ……」

 「そういうところも好きよ?」

 「ありがとう……せめてかっこいいと言われたいけど……」

 「ん~、どうでしょうね?」

 「……完全にペース持ってかれたな……」

 「うふふ……悔しそうね? 可愛い……」

 「か、可愛い言うな!」

 「本当、可愛いんだもん」

 「はいはい、可愛いでいいですよ~だ!」

 「……」

 「なに見つめてるの?

 「親子丼」

 「え?」

 「分けて?」

 「……いいよ? じゃあ、スパゲティーも分けてよ?」

 「いいよ! 取り換えっこね!」

 「うん、はいどうぞ」

 「ありがとう! いただきま~す!」

 「はい、いただきますと」

 「……」

 「……」

 「この後さ」

 「なに?」

 「行きたいところがあるんだけど、良い?」

 「ん? どこ?」

 「……秘密」

 「う~、意地悪。いいわよ。行きましょ?」

 「じゃあ、親子丼返して?」

 「いやだ」

 「え? 全部食べるの?」

 「うん! だっておいしいんだもん。スパゲティーは全部食べていいわよ?」

 「……わかったよ」

 「で、どこ行くの?」

 「秘密って言ってるだろ? ついてからのお楽しみ」

 「わかった」

 「ごちそうさま」

 「あ~、早い!」

 「いや、そっちが食べるの遅いだろ……」

 「女の子に早食いを求めてはいけません!」

 「はいはい。わかりましたよ~」

 「じゃあ、待っててね」

 「は~い」

 「……」

 「……」

 「ごちそうさま!」

 「じゃあ、店を出ようか?」

 「え~、まだのんびりしたい~」

 「次の予定もあるからさ」

 「しょうがないなぁ……わかったわよ」

 「ありがとう」


 「……手」

 「え?」

 「手、つないで?」

 「あぁ、良いよ」

 「ダメなんだぞ? 女の子に手を寂しい思いさせちゃ」

 「うん、わかってる」

 「……暖かいなぁ……」

 「……手、冷たいね」

 「冷えてたからかな……昔、手の冷たい人は心が温かいなんて言ってたけど……」

 「うん……暖かいよ?」

 「え?」

 「心がさ。俺、いつも癒されてるから」

 「……」

 「行きたかったところはここ。覚えてる?」

 「うん……私にとっても想い出の浜辺ね。 ここで私は告白受けた……覚えてるよ?どこに立ってたか、どんな表情をしてたかも……」

 「俺もだね……」

 「……」

 「……」

 「じゃあさ、そこに立ってよ。あの時と同じように」

 「え? ここ?」

 「うん。そこだね。俺はこっち」

 「……なんか思い出すなぁ」

 「俺もだよ」

 「……」

 「……」

 「なぁ……」

 「なあに?」

 「受け取ってほしいものがあるんだ……」

 「え?」

 「少し遅くなったけどさ……これを……」

 「え? なにこれ?」

 「開けてみて?」

 「……」

 「答え、聞かせてほしい」

 「いやだ」

 「え?」

 「……先に言うことがあるでしょ?」

 「あ……。うん……」

 「早く言って!」

 「この愛を永遠にしたい。もし子供が出来て、巣立っていって、孫が出来たとしても……この愛は変わらない。お互いおじいちゃんおばあちゃんになっても……ずっと……。だから俺と一緒になってほしい!」

 「もう一声」

 「え?」

 「もう一声言って?」

 「……結婚しよう……」

 「うん……」

 「……そんなに泣くなよ……」

 「だって……嬉しいんだもん。ありがとう。これからずっと……永遠に……お世話になります……」


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