真西暦2120年
あの最終決戦から三年後。私は一年間眠り続け、にも関わらず大学への進学が自動的に決まっていた。私が目を覚ましたとき、両親と妹の他に、私が知ってる人は誰一人居なかった。時々思うことがある。あの戦いは実は夢で、私は今まで眠っていただけなんじゃないか? どうして世界はこんなに平和なんだろう。
今日の講義は午後から。レポートがあるから図書館で勉強して。お昼は学食で食べて。大学に進学してから今日まで。私はずっと一人だった。全く話をしないとか、そんなことはない。でも、ずっと軍で訓練してきた私にとって、友達というのがどんなものか。カラオケ行ったり、サークル活動したり、みんなでお昼したり。私にはそれが楽しいのか分からなかった。
一度だけカラオケに誘われたことがある。
「次レイコ歌ってよ~」
「♪~♪~~」
ずっと昔に流行っていた歌だった。
「上手いじゃん」
「泣くほど感情込めたの?」
気づくと頬に熱いものが伝っていた。
眼鏡を外し、拭ってみる。
「あ……えへへ……そうみたい」
拭うまでもなく涙だった。
それに気づくと止まらなくなってしまい、彼女たちと別れるまで泣いていた。
それからは私から声をかけるわけにもいかず、彼女たちも私にどう接すればいいのか分からないようだった。
講義が終わると寄り道もせず真っ直ぐアパートに帰る。ニュースを何となくつけて、勉強して時間を潰した。ニュースでは自転車に乗った若者が記者にインタビューを受けていた。
「車で行けばいいのになんで自転車で?」
「だって車だとすぐ着いちゃうじゃないっすか」
そんなやり取りをしていた。
「自転車か……」
私も通学に自転車を使っている。
「自転車であんな遠くまで行けるんだ」
若者がインタビューを受けている場所は私がよく知っている場所だった。
そして、もう二度と見ることはないと思った場所だった。
私はそれ以上テレビを見る気もせず、シャワーを浴びる。
夜は懐かしい夢を見た。
ニュースで見た場所に私たちがいて。
そこには戦いなんてなくて。
なぜか私にはそれが夢だってわかった。
覚めなければいいと何度も思った。