第一章 プロローグ 運命
こちら二作品目です。よろしくお願いします。誤字・脱字、感想等あれば教えてくださると有難いです。続けていくつもりですので、改めてよろしくお願いします。
とある漆黒の空間にて、たった一人でぽつんと密かに立っている少年。その少年は自分の体を隅々まで手探りで触りまくり、状態を確認している。
「うん。なにも異常はなし。で、ここは……どこだ?」
足をクロスさせてリラックスをしながら座り、今いる場所を確認しようと周りを見渡すが、やはりなにも見えない。なぜ、少年には周りになにも写っていないように見えるのか。その理由は、一つしかありえない。
「つまり、あれだな。ここは異空間ってやつだな」
訝しそうに顔を横に傾けて思考をフル回転させる。少年が考える時によく使うしぐさだ。これを使うと、少年はまるで天才博士のような発想に至る。
「ふむふむ。周りが見えないのは異空間であり、且つ、真っ暗ということか?」
誰かに問いかけるように独り言を呟くが、当たり前のようにどこからか返事が来るはずもなかった。
「今まで独り言を喋ってみたが、筒が抜けた感じにエグいほど響き渡るな」
あまりにも響き渡りの良さに思わず子供みたいにはしゃぎそうになってしまう。次に、少年は周りになにかないかなと、手探りし始める。
「やはりなにもある気配がないなぁ……」
その結論に至ったその時、左手がなにかを捉えた。
「ん?なんだ、こう、モチっとするようなムチッとするような柔らかさに包まれたものは」
また思考をフル回転させるルーティンに入る。だが、今回ばかりはなぜか結論に至らない。なぜか。それは、そう、
「この感覚はじめてなんですけど!?」
この結論だからである。そして、左手で揉み揉みしているうちにもう一つの手でも触りたくなり、両手で揉みほぐす。
「あーでも、両手で揉んでたら、なにか思い出せそうな気がしてきた」
うーんと考えこむこと実に十五分。ついに結論に至った。
「あっ。この感触……まさか!!」
少年はなぜか顔を赤くしはじめる。少年が口を開き、なにかを言おうとしたその時、少年の周りの部分が崩壊しはじめた。
「い、いきなり崩壊……。やっぱり、手探りするのはダメだったのか?」
だが、まだ揉み揉みしていた。やがて、その揉み揉みしている感覚が遠のき、ついには崩壊は終わりを迎えていた。
「ああ……。この崩壊は、もしかして、俺の人生の終わりを告げているのか……」
少年は痛感した。女性の膝を揉み揉みしたから、自分の人生が半ばで終わったのではないかと。
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一方その頃、彼を召喚し終えたある一人の少女は、召喚の儀式を行っていた神殿にて両足を後ろにしてバタッと床に膝を着いた。
「はぁ……。なんで見習いの私がこんな事しなきゃならないのよ」
儀式の間溜め込んでいた疲れを一気に解き放つ。彼女もまた、巻き込まれた身でもあるのだ。
先日、彼女はたまたま休みであったその日に物足りないと感じて日々、魔法の修行をしている会場であるルーナ神殿に来ていた。それこそが、過ちのはじまりだったのだ。少年をこの世界へ呼ぶ魔法士として、彼女が選ばれることになったことが。
「あーあ。あの時もうひと頑張りしよう!なんて思いつかなければなぁ……」
しかし、それは神様による運命の導きみたいなもので、少年と彼女を繋げる為の経過に過ぎなかった。必ず、彼女は修行を人一倍努力しようと休みの日に神殿に行く。そして、日本よりはるばる召喚された少年が現れる。これは、必ず起きなければならないことでもあった。
「シスター……。ほんとに、私が召喚した者が、この世界を救ってくれるのでしょうか……?もし救ってくれるのならば、私は召喚された者を必ず見つけ出し、必ずや、この世界を救うために導いてあげます。だから、今しばらく……。シスター……。私を見守り続けてください」
今は亡き、最愛の、修行を生きている間たくさんしてくださったシスターに、空の上に居るはずのシスターに、自分の両手を重ねて目を瞑り、祈る。成功して欲しいという、気持ちを。
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この世界へ突如転移させられた少年は、呑気に転移させられた場所で寝ていた。ちょうど寝てから三十分ぐらい体内時計で経った頃、外からなにやら男の声が三つ聞こえ、耳を傾けると怒鳴り合いのようなことをしているように聞こえたので、少年は急いで立ち上がり、居間を走って抜けては、扉を勢いよく開けて喧嘩を止めようとする。
「おい!お前ら、なにやってんだよ他人の家の目の前で」
一人の男が、こちらに気難しい顔を向けて、あ?と威圧をかけてきたので思わず尻もちをつきそうになる。
「お、俺の名は……。え、俺の名は……」
「なんだぁ?こいつ。自分の名前もう忘れちまったのか?」
真ん中の男が首を傾げて?の状態にはいった。周りの男二人も
、似たような状態をしている。我に返った少年は、はっとなり、頭をペコペコ下げる。
「す、すみません!すみません!自分の名前もわからずに、突っ走ってしまって。で、出直してきます!」
少年は急いで元の寝ていた居間へ向かおうと家の扉を開けようとする。しかし、真ん中の男に腕を掴まれて身動きが取れなくなってしまった。
「俺の息子なのに、なんで名前を忘れるんだ」
「はい?息子?」
「そうだ。貴様の名前は、フリューゲル。フリューゲル・ノーウェンだ」
それが、自称親父から告げられた俺の名前だった……。