模索
包丁の技術を活かせる料理を考えていた俺達だが大したものは思い付かないでいた。
「やっぱり見た目を包丁の細工で派手にしてく感じかなぁ」
「それは違うと思います。派手なら最初は珍しさでお客さんもくるかもしれませんけど飽きられたらそこで終わりですよ」
「そうだな、うちは大衆食堂みたいなもんだからなるたけ飽きられないようなのがいいな」
「んーそうなるとなかなか思いつかないなぁ、いちおうお米みたいなのはあるんだっけ?」
「一応はですけどね」
「塩とか醤油はあるっけ?」
「塩はあります、醤油もありますね」
「なら寿司か刺身かなぁ魚を生で食べる習慣はあります?」
「魚を生で食べたら腹をこわしちまうだろうがそんな事はしねぇよ」
「あー、なら寿司はともかく刺身ならいけるか?あれも包丁技術がなければ美味しいのはつくれないし」
「ですね、でも刺身に向いた魚ってあるんですかね?」
「スタットは海にも面してるから釣りするプレイヤーか漁師を目指すプレイヤーとかいないかな?」
「釣りをする人はいますね、何度か魚を買わないか?って聞かれた事ありますよ。アシが早いから遠慮してましたけど、もし刺身に出来る魚があれば名物には出来そうですね」
「そこだよなぁ。まずは釣りしてるプレイヤーに聞いて見るのが早いか」
「おいおい聞いてる限りだとお前らのいう刺身ってのは魚を生で食べるんだろ?食中毒とかだしたらこの店終わっちまうんだがな」
「適切な処理をすれば大丈夫ですよ、それには確かな包丁技術と鮮度が大事なんですよ」
「それに失礼ですけどこのままだとお客さんが減ってくばかりになっちゃいますよね? なら美味しくて新しい料理を出して冒険するのもありだと思いますよ。刺身なら私達≪探求者≫とも被らないでしょうし」
「そうなのか?」
「ええ、刺身にするには魚の鮮度と包丁の技術が必要ですし、ナマモノだけあって味が落ちるのも早いですから私達≪探求者≫は手間がかかる割に売るのに向いてないんですよ」
「なるほどな、うちみたいなとこならすぐに食べて貰えば問題はないってことか」
「そうなります、まずは刺身で食べれる魚探しからですね、すぐには見つからないかもしれませんが見つけたらすぐに持ってきて調理法をお教えしますね」
「おう、待ってるぜ。急かすつもりはないがなるべく早めに頼むな」
「はい、では今日のとこはこれで失礼しますね、御馳走様でした」
「御馳走様でした」
俺達は代金を払って食事処を出て、歩きながら話していた。
「話の流れで刺身のさばきかたとかを教える話になってたけどキキは出来るの?」
「はい、一応は。ただまぁ技術がそこまででもないからクロウさんが本当に包丁が得意ならすぐにおぼえちゃうかと。問題は魚の確保ですね」
「そうだねぇ、釣りしてるプレイヤーとは連絡とか取れない?」
「はい、フレンドとかではないので…」
「なら釣りしてそうなら場所をちょっと探してみるしかないかな」
「それがいいですね、顔は覚えてるので探してみましょう」




