選択の責任
依頼の現場の山に到着した俺達二人。早速アリナさんが気配を探しにかかる
「【集中力】【気配察知】のコンボ中は隙ができるからフォローよろしくね。」
「はい、周りに罠仕掛けときますね。」
「オーケー、はじめるわ。」
そういうとアリナさんは気配を探すのに集中しだす。となりから見ててもそれひとつに神経を注いでるのがわかる。
気配を探しはじめて1分ほどして
「みつけた。あっちに3つくらい気配がする…距離はそこまで離れてないけどこちらが移動中に移動されないかが心配ね」
「お疲れさまです。とりあえず行ってみるしかないのでは?」
「そうね。行ってみましょ。」
罠にしてたトランプを回収してからアリナさんの先導で熊の気配がするほうに向かっていく。
そうすると程なくして熊が3匹いるのが見えてきた。
「ガァァァァ!!」
熊は俺達を見つけたと同時に威嚇をしてきた。
それと同時に俺は気付いた事がある。
「来るわよ!迎撃用意!」
「アリナさん待った!奥をよく見てください!」
「え?あ、子供が二頭?しかも怪我してる?」
そうなのだ威嚇してきた熊の後ろには小熊が二頭ほどいてその小熊達は怪我をしていたのだ。
「あれからみるに子供を守るために人を襲ったんじゃ?」
「だとしても人を襲ったことには変わりはないわ。倒すべきよ。」
「俺としては小熊を治してやりたいんですけど…ダメですか?」
「それで被害が出たらどうするの?言っておくけど被害がでたら自分が倒しますってのは最低限の責任なだけであって責任を取るってことではないわよ?被害が出た時の被害者の家族や友人達に謝ればいいってもんでもないわ。しかも私達プレイヤーなら死にもどりで済むけど、NPCならそのまま生涯を終えることになる。それでも回復するの?」
アリナさんが俺を問い詰めてくる。言ってることは間違ってないと俺も思う。俺がやろうとしてるのは偽善だ、狼やゴブリンなどを倒して来たんだし、それと何が違うって話だな。
「偽善だとはわかってます。でも俺は小熊を倒したくない。」
「わかったわ。なら早く治しなさい、ギルドには報告するけどね。最悪ギルド除名かもね」
「アリナさんまで付き合う必要はありませんよ?俺の独断ってことにしておけばいいのに。」
「見逃したならあたしも共犯よ。確かにに傷ついた子供を倒すのは後味悪いとは思うしね。あたしも結局偽善者だったみたいよ。いっそのこと治したらそのまま襲ってきてくれないかしらね。そうしたらあと腐れなく倒せるのにね。」
「ははっ、たしかにそうですね。……ありがとうございます。じゃあ回復します。」
そうして小熊達を〈ヒールウォーター〉のスペルスクロールで治すことにした。




