8.誘拐犯
森での訓練を初めて5日目の朝
街を出て森へ向かうが少し離れて後ろから冒険者グループがついてくる。
みんなも気づいたようだが何も言わなかった。
そのまま森へはいると俺たちは気配を消した。
「木陰の後ろへ回り距離をとるぞ。」
みんなで木陰に回り込み姿勢を低く移動する。
そして隠れて様子をみると冒険者グループ4人は森へ入った辺りで回りを見回している。
「あいつら。」
「知ってる連中か?」
「前にしつこく勧誘してた人たち。」
少しほっとした、俺を狙う盗賊じゃないようだ、だがどうして。
「メイリン頼む。」
「しょうがないわね。行ってくる。」
「連中は誘拐犯てところね。」
「誘拐・・・。」
「攫って何処かに売り飛ばす算段をしているわ。」
なるほど、親のいない美少女冒険者のふたりは連中にとっていい獲物なのだろう。
いなくなっても誰も不思議に思わない、別の街の娼館にでも売るつもりだったか。
「さて、どうするか。ここで隠れてやり過ごして
もいいが、連中があきらめるかな。」
「行方不明にでもなってもらうか?」
考え込む二人の姉妹。
「行方不明になってもらう。あんな連中に妹は渡せない、その為に強くなったんだから。」
「お姉ちゃん・・・ありがと。」
「よし、ならば森の奥へ誘導しよう。」
再び姿をあらわし連中を森の奥へ誘う。
「連中にはいろいろ聞かないとな。」
歩きながら作戦会議だ、メイリンと俺が『パラライズ』。
姉妹は魔法で攻撃、足を狙う。
辺りに他の人間や魔物がいないことを確認し合図をおくった。
歩くのをやめ近づくのを待った。「いくぞ。」
『パラライズ』『パラライズ』『ファイヤーアロー』
『アイスアロー』3人と一匹で同時に発動する。
連中も警戒し剣に手をかけたがこちらが早かった。
その場で倒れ動けない。
残りふたりにも『パラライズ』をかける。
倒れた男たちにゆっくり近づき見下ろすと苦しそうな表情だ。
「君たちは見ないほうがいい、俺にまかせてくれ。」
「いえ、そういうわけにはいきません。ミリー離れてなさい。」
「わたしもいっしょに見届ける。」
「そうか、きついぞ。」
ひとりの男の剣を抜き腹に深々と突き刺す。
そして残り三人の武器を取り上げロープで縛る。
「さて、聞きたいことが有るんだが誰が答えてくれるのかな。」
三人ともに反応がない。
「はーしかたない。」
またひとりの男に連中の剣を突き刺しそのまま放置。
「剣は残り2本あるぞ。」
ひとりがもぞもぞと動きすこし頭を動かした。
「きみか、話す気になったか?」『パラライズ』を解除した。
「よし話せ。」
「こんなことして、ただでは済まないぞ、
俺たちのバックにはこの街の領主がいるんだ。」
「ふ~ん、なるほど領主ね。そんなことより、
まずは目的を言え。」
「女だ、攫って領主に引き渡す。」
「それから?」
「連絡したら、領主の馬車がくる。」
「なるほどね。誰かに命令されたとか?」
「俺は冒険者だ、誰にも指図されねぇ。」
「ところで、こちらの女性のことは誰かに話したか?」
「話したら他のやつらに先を越される。」
「ふむ、で、領主へはどうやって連絡する?」
「酒場だ、グレンの酒場でシーゲルって男に話す。」
「ありがとう。」『パラライズ』
再び『パラライズ』を掛け剣で腹に突き刺す。
残りの一人は解除した。
「やぁ。君にも聞きたいんだが。」
「何故殺した?」
「ああ、そんなことか、ペラペラしゃべるもんだから信用できなくてね。」
「君にもいろいろ聞きたいんだ。」
男の話す内容は同じだった。そして4人を土の下へ深く埋めた。
「これでしばらくは大丈夫そうだ。移動して休憩しよう。」
昼食はあまり味がしなかった。
シーラが作った弁当はいつもは美味しいのだが
今日はみなもくもくと食べるだけとなった。
「2・3日は休みにしよう。注意散漫の状態だとケガのもとだ。」
「それと外出も控えよう。」
休憩を長めに取り今日は早めに引き上げた。
その日の夜ベッドにシーラが入って来た。
「眠れないの。」
「大丈夫だ心配ない。」
領主は放置することに決めた。今はふたりを落ち着かせることが最優先だ。
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