44.別れ
「魔王様どうでした?」
「む?お使いに行ったわけでではないぞ。」
「魔王様、ふたりとも心配なだけですよ。」
「状況を説明しておくべきだったか、皆には世話になっておるからな。」
「そうですよ、話してくださいね。」
「ふたりは魔族についてどう思う?」
「そうね~寝る前に親が子供に話してくれるような昔話に出てくる存在かな。」
「魔族の領地に接してないこの国の人間ならそうであろうな。
実際に魔族と人間が戦争をしたのは昔の話で
復活した魔王が脅威だから討伐するべきだと声高に主張しているのは
勇者を召喚したイルバート国だけだ。」
「えっ他の国は?」
「魔王については勇者と他数人をイルバート国が派遣しているから他国は追認しているだけだな。
そもそも戦争があったのは昔の話で現在では何の被害もないのだから。
イルバート国の主張を懐疑的に見る向きもある。
そんな状況で軍隊を派遣するとなると簡単ではない、
金がかかるし国の防衛に穴が空く、周辺国は消極的だろう。
かといって勇者パーティーだけで魔族領域の奥深くへ行くなんて無謀すぎる。」
「なるほどね、イルバート国さえなんとかできれば戦争にならずに済むわけか。」
「だからと言ってイルバート国を直接潰したら魔族脅威論が復活するからな。
今は時間稼ぎをしつつ情報を集めているところだ。」
「それでなんとかなりそう?」
「魔王の私が復活してもうすぐ一年だが人間側に被害などないだろ?
時間稼ぎがうまくいけばイルバート国は大義名分を失うわけだ。
かの国はそうならない為に単独でも軍を派遣しようとするだろうな。
それをどうやって邪魔するか考え中だ。いくつかはすでに実行中だがな。
知ってるか?あの国ではがけ崩れで街道が通行止めになったりすることが増えてるようだぞ。」
「うまくいって戦争にならないといいな。」
「それから近いうちに私はイルバート国へ行く。皆には世話になったな、ありがとう。」
「そうかさみしくなるな。」
今回で終了となります。読んで下さりありがとうございました。




