43.魔王の作戦
方位磁石と六分儀が出来たので商人から受け取ってきた。
「それが位置を知る為の道具か。」
「こっちが方位磁石でこの針が北を示す。
まだ完成じゃないな。魔王様磁石は?」
「用意できてるぞ。」
「蓋を開けてこの針を石に一定方向へこうして・・・こする。
すると磁石みたいになって北か南どっちかを示す。」
針を置いてみると片方が北を指した。
「北を指した方に目印を付ければ完成だな。」
赤ペンキがないのでナイフで矢印を入れておいた。
「確かに北を指してるな。」
「これがあれば海でも森でも方向がわかる。」
「100個程追加で作ってもらおう。」
「次に六分儀、これは星の角度を測る道具です。
例えば北の空に見える動かない星を測るとする、
場所によって角度が違うので現在地が南北どのあたりかわかる。
星を地道に観測していけば東西方向もわかるようになる。
これは広い海で使う道具だね。」
「まだ研究が必要だな。」
「時計があればもっと研究が進むよ。この道具も改良が必要だけどね。
うろ覚えで作ったからこれは試作品だよ。
難しいけど広い海を航海するのに必要だから。」
「専任の研究者をひとり選んでおこう。」
「決まったらその人といろいろ議論できる。」
「なんだこういう話が面白いのか。」
「この世界の仕組みとかわからない事が多いからね。
向こうの世界との違いとかあったら面白そうだな。」
◇ ここからは魔王視点
この男の知識は役に立つな、店の料理に信号ネットワークそれに今回は方位磁石。
これからの戦いに優位に立つものばかりだ。
情報の収集と伝達速度の速さは重要だ、王都まではもうすぐ完成するがそれを他国へ広げる予定だ。
「さて私は店に行ってくる。」
面倒なことになったがまずは時間稼ぎをしなければ。
◇
店の裏手から入り二階へ向かった部屋へ入ると既に部下が待っていた。
「報告を聞こうか。」
「信号ネットワークの拠点ですが王都まではもうすぐ完成予定です。
イルバート国方面へも着手してます。
またイルバート国その他の国へも着手済みです。」
イルバート国は勇者を召喚した国だ。
「店の方はどうだ?」
「隣の街はもうすぐ開店できそうです。
問題は料理の指導です。
指導できる者が少なくて育成に時間がかかります。」
「そうだな、一か所に大勢集めたら目立つからな。
開店して落ち着いたら何名か研修生を受け入れてもらえ。
店舗が増えれば追いつくだろう。」
「そのように致します。」
「それとな面白い道具が手に入ったぞ。
これだ方位磁石と言ってこの針が北を示す。
これがあれば森でも迷わずに済む。
あの男が作った物だ。これを必要な分作って配布しよう。
とりあえず100個程商人へ発注しといてくれ。」
「これは軍事作戦でも使えますね。」
「早めに導入したい。」
「もうひとつの道具は扱いが難しい試作品で六分儀というものだが、星を見るのが好きな奴に任せよう。
誰か適任な者はいるか?」
「ひとり心当たりが。」
「ここへ連れて来てくれ、ナオヤと詳しく話せば使い方もわかってくるだろう。
そして星の観測と研究をしてもらおう。将来海を制するのに必要なものだ。」
「勇者の件はどうだ?」
「イルバート国から各国への連絡を邪魔する為に監視中です。」
「それでいい、当面は連絡を邪魔して他国との連携をとれないようにすればいい。
早馬が出たら潰せ、戦いにならない範囲でいい。それで時間かせぎにもなる。
できたら手紙を回収したいな。」
「わかりました。」
「周辺国には使い魔を派遣しようあちこちで出没すれば軍を遠征どころでなくなるかもな。
あとは情報次第だな。今日はこれくらいにしよう。」
店で何か食べて帰るか。
◇
店でピザを食べていると声をかけられた。
「お嬢ちゃんが食べてる物は何かな?」
「ん? ピザだ。美味しいぞ。」
「私もそれにする。」
そう言って店員に注文していた。
「ここって不思議ねー見たことない道具に見たことない料理。
刺激的だわ。」
変な女だな。
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