4.初めての旅路
晴天の下歩き出す一人と一匹、次の街までは途中村も有るがどうするか、
小さな宿くらいはあるそうだが寄るかどうかはその時に考えよう。
コミ障の自分には村のような小さなコニュニティは居心地が悪い。
住めば都かもしれないがただの通過点なのでスルーしたい。
「休憩しよう。」
「早くない?」
「ほら、前を歩く人。」
百m程前を歩く人がいる、多分女の人だ。
「なんか時折振り返ってこっちを気にしているみたいなんだ。」
安全のため同行しようというのなら速度を落とすはずだがそうしなかった。
サラリーマンあるあるだな、仕事帰りに歩いていると前を歩く女がたまに振り返る。
こういう時はゆっくり歩き距離をとるのが無難だトラブルはゴメンだし社会的に死ぬ。
木陰で水を飲む、まだ朝の涼しい時間なので少し飲んだ。
メイリンは要らないと言ってきた。少し休んでから再度歩き出した。
自分が一番恐れたの敵認識されて不意打ちを受けることだこの世界には魔法がある。
しかも女の身で一人旅なのだから自衛手段を持ってる可能性は高い。
現代日本と違って平和ボケな人間がいるとは思えない。
少し休憩して再び歩きだす。昼食をとりまた歩き出す。
夕方になりあたりが暗くなりかけたとき先ほどの女が休憩していた。
「やあ、こんにちは、一人旅ですか。」歩きながら話しかけた。足を止めるつもりはない。
「こんにちは、ネコちゃんもいるんですね、村までご一緒してもいいですか?」
メイリンはなにも言わなかった。
「いいですよ、歩きながら今夜の野営場所を探しましょうか。」
名乗らなかった、相手が名乗らないのだから別にいいだろう。
女は街で見覚えない顔だ。
多分近くに旅人が野営するポイントがあるだろう。
歩きでは村へは一日ではたどり着かないようだ、
ならばみんな途中で野営するはずだ。適した場所があると思う。
すこし歩いたら見つかった。川があり石で釜土を組み火を起こした跡がある。
「ここにしましょう、枯れ木を集めてくる。」
火を起こしたが料理はしなかったお互い手持ちの干し肉とパンだけの質素な夕食、
アイテムバッグには街で買った串焼きとか他に食材もあるのだがそれは出さずにおいた。
「どこにいかれるのですか?」
「きままな旅だ、とりあえず次の街へ。」
「冒険者なんですよね。」チラッと剣を見た。
「そうです、駆け出しだが。」
女は大きめのバッグだけで武器は身に着けていなかった。
もうすでにあたりは真っ暗だ、空には星が輝きあちこちで虫が鳴いている。
剣を腰から外し横になる火とは反対のほうに体を向ける。
火を見たせいで暗闇への視界がきかない、
横になったまま暗闇の中に何かいないか探したが見つからなかった。
気配を探りながら暗闇に目が順応するのを待つ。
今のところは大丈夫のようだ。火の反対側後ろの女はメイリンが見ている、
不審な動きをすれば合図で教えてくれるはずだ。
ときおり目を合わすが特に何も無かった。
メイリンから合図があった。前足の肉球がほっぺを叩く。
夜更けに女が動いた、そっと抜け出し何処かへ消えた。
すぐにその場を離れ気配を隠し野営場所を観察してみると6人程の人達がそこへやってきた。
全員剣をもっている。
「くそ、いねぇ、逃げられたか。」
「まだ遠くへはいっていない探すか?」
「こんな暗闇では見つからん、気づいて逃げ出すようなやつだ見つかるわけないな。」
「若造のくせに、くそっ。」
「なんだお前薬を盛れなかったのか。」
「警戒してるようで無理だったの。後ろ向いてる時でもネコちゃんがじっとこっち見ててさ。」
「はぁ、ネコ?」
「まあいい、引き上げだ。」
「あいつ薬草とか結構換金してたからカモだ思ったんだがなー。」
「どうする?」メイリンが聞いてきた。
「そうだなー、6人は厳しいな。やるなら全員殺らないとへんな因縁が残るからな。
気配を消してひとりかふたりづつ不意打ちならいけるかも。
鑑定したらレベルは18、16、残りは10以下だった。
まずは何処へ行くか確かめるか。」
それにしても目立たないように気を付けても案外と目を付けられてるものだな。
しかも今日街を出ることまで知られていたなんて。
冒険者かな?小さな街だからよそもの冒険者の行動は噂になっていたのかも。
街の住人の可能性もあるとなると死体は見つからないようにするべきだな。
見つかると俺が殺人で手配されかねない。
気配を消して後を追うと小さな小屋があった。全員中へ入っていく。
しばらくして2人が出て街のほうへ歩いていく手ぶらだ剣は置いて来たようだ。
「やはり街の住人も混じっているのか。」
気配を消して後を追う、小屋から十分離れた所で近づいてゆく。
「アイスアロー」二人に向かって魔法をぶっ放した。すかさづ剣を抜き突っ込む。
氷の矢を体に受けた二人は声を出すヒマもなく倒れたが、かまわずに剣を突き刺した。
二人は死んでいた、一人は女だった。
土魔法で深く穴を掘り2人を放り込み、すぐに埋めた。
そして周りの枯れ葉をかける、よしあと4人。
すぐに小屋を監視できるところへもどる。
どうやら中では酒を飲んでるようだ、また二人出てきて街へと歩き出す。
ひとりはレベル18だ、こいつは剣を腰にさしていた、多分冒険者だろう。
こちらも街へと歩き出す。気配を消して後を追う。
今度はレベル18を狙って魔法をぶっ放した。
すぐに剣を抜き突っ込む。
あっけにとられたもうひとりに対し心臓めがけ剣を水平に突きさした。
ギルド内で見た顔だ。
土魔法で二人を埋めあたりの痕跡を消しているとこちらへ向かってくる気配がする。
「兄貴、どうしたんです。」
「どうもなにかおかしい、いやな感じがする。それにだこのあたりで血の匂いがするぞ。」
「注意しろ、なにかいるぞ。」
「ゴブリンですかね。」
「いや、あいつらなら臭い匂いもする、違うな。」
「さすが、兄貴は鼻がききますね。」
二人の手には剣がある。
「アイスアロー」小さく呟いた。LV16の兄貴は察知し伏せたが隣の男は固まっていた。
メイリンが気配を消して歩いていく。
「出てこい!」剣を構えながら叫ぶ。
「よっいい動きだな。」対人戦もなれてきた。
「ふざけやがって、殺す!」
「ふ~ん、そっちが仕掛けてきたんだろ。」
「先にでた俺の仲間はどうした?」
「今頃寝てるだろ、土の下で。」
ばれてるのだ逃がすわけにはいかない、ここは挑発しておかないと。
逃げる為背を向けたら魔法をがんがん叩き込んでやる・・・がこれは避けたい。
はでに暴れると痕跡が多く残る。
向かって来るなら攻撃魔法をくりだす、避けるだろうが無理に避ければ体勢を崩す。
突っ込んできたので腹にむかって「アイスアロー」をくりだしさらにアイスアローを左へ。
男は俺の左手の示す方向で察知し右へ大きく避けたが体勢は崩れた。
こそへ突っ込み男に剣を突きさす。
そして男は倒れた、こちらをにらんできたがやがて死んだ。
「もう一人は何処だ?」
「ここよ」メイリンの声がした。
声のするほうに男が倒れていた、メイリンの『パラライズ』で動けなくしていた。
「ふぅ、うまくいった、これで全員か。」
二人まとめて埋め痕跡を消す。
あとは放置しても枯れ葉が舞い落ち違和感もなくなるだろう。
小屋に来てみると中には誰もいない。
テーブルには飲みかけの酒、剣が8本他に保存食、水、酒、
盗賊のアジトか、他には金目のものはなかった。
このあたりは田舎の部類に入るし盗賊も不景気らしい。
街の住人が盗賊稼業、若者の暴走かまたは住民の黙認があるのか確かめるにはリスクが大きすぎる。
よそ者の言い分がすんなり通るとも思えない。
やはり連中には行方不明になってもらおう。
小屋を後にして街道へもどる。街道の少し手前で止まる。
「ここで休憩していこう。」
「最後のやつはよかったわよ。」
「さすがに格下相手に負けるわけにはいかない。」
そうは言ったがレベルでは下だがあちらのほうがあきらかに実践経験が豊富なようだった。
剣だけだと負けていたかもしれない。
やはり剣の指導を受けよう、接近された時にやばい。
こっちが犯罪者みたいで夜中に人間を相手に戦うのは気分のいいものじゃないが
顔や流れる血もよく見えないしそのほうが後に引かないかもしれない。
朝になり再び歩きだす。
村の近くまで来たが寄らないことにする。
このまま次の街へ向かう、足跡は消しておきたい。
そのまま旅を続け3日後の午後ようやく街へついた。
『ドガの街』こんどは少し大きな街だ、宿もそれなりにいい、
五日分前払いし食事と体を拭き寝る、旅の疲れをとらなくては。
読んで頂いてありがとうございます。
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