35.言霊
ダンジョンからの帰り道
「どう思う? 今日の戦い。」
「と言うと?」
「戦法を変えたほうがいいかなと思って。
危ない場面もあったから、ほら毒液を飛ばしてきた時とか。
盾を持っていれば楽に防げたはずだろ?」
「まあ悪くないとおもうぞ、しかしあせっておるな。」
「そうかな。」
「私がとっておきの技を教えてやろう、地味だが騎士団など楽に相手にできるぞ。」
「それはいいな、地味なほうが使い勝手がいい。」
「私のとっておきの技だと言ったろう? 人前で使うと魔族かと疑う者も出てくるぞ。」
「それは使いどころを選ぶ技だな。」
「だからとっておきなんじゃ、だが危ない時に使って切り抜けられる。」
「そうだな。」
「少し肩の力を抜け、正面切って戦うばかりがいいとは限らんぞ。」
「相手はやる気満々かも。」
「そうとも限らんぞ。やる気満々で来るとしても君は犯罪者ではないのだから騎士団の独断だろう。
独断で動くなら大袈裟な数ではない、腕自慢バカが先走って来るような感じだ。
私なら相手の出方をまず見てそれから考えるな。」
「やる気満々できたら?」
「そいつらを撃退して今度はこちらから王都に乗り込む、そして騎士団の団長を殺す。
元を断たねばいつまでも終わらん、騎士団の私闘ならそれで終わるだろう。
貴族同士の小競り合いや暗殺・毒殺など珍しくないだろう?
似たようなものだ面倒ごとには誰も関わらない、親族以外は。」
「考えておこう。」
「ちょうどいい、とっておきの技をみせてやろう。」
そう言って魔王が近くのウサギに向かっていく。
『動くな!』魔王がそう言うとウサギはビクッとしたあと固まって動かなくなった。
「どうじゃこれが『言霊』と言うやつだ人間にも効果あるぞ、集団相手なら効果抜群じゃ。」
しばらくして動けるようになったのかウサギは去っていった。
「言葉に魔力を乗せて放つのじゃ、極めれば石に変えることが出来るようになる。
レベルの高い相手にはきかんが普通の人間相手なら問題ないな。
地味な技じゃ、やってみろ。」
「地味だが恐ろしいな、やってみよう。」
またウサギを見つけたのでやってみる。
『動くな!』ウサギはビクッとしたが逃げて行った。
「魔力が乗ってないぞ。」
「帰りながら練習するか。」
帰り道に練習してなんとか少し動きを止めることが出来た。
「まだまだじゃな。」
「厳しいな、まだ始めたばかりですよ。家でも練習します。」
ウサギを一匹捕まえておいた。
「明日は休みにしよう。無理はしないでやっていこう。」
「それがいいぞ、焦ってもいいことはないし騎士団の腕自慢なんぞ大したことはない。
危ないようなら手を貸してやる。」
家に着いた。
「夕食を用意します。ミリー手伝って。」
「はーい。」
「部屋で練習してる。」
◇
翌日は休みにした。
俺は盾を買うため道具屋にやってきた。次のダンジョン攻略で試すつもりだ。
丸くて大きい盾を買った。これなら飛び道具も防げるだろう。
シーラとミリーを守る為なら盾も使いこなそう。
次に冒険者ギルドへ寄って魔石を売ったら大きな魔石に驚いて入手先を聞いてきた。
もう隠すのはやめだ、実力はアピールしておいたほうがいい。
「ああ、昨日ダンジョンに行ってきた。」
地下15階の魔石は売らずにとっておいた。灯りの魔道具に使えるかもしれない。
それから家に帰って『言霊』の練習をした。
◇
翌日ダンジョンへやって来た。
「今日は盾を使ってみる。行けるとこまでは3人で進みその後は魔王様にお願いする。」
「それでいいぞ。」
左手に盾、右手で魔法を放つこれでやってみよう。
剣は魔法のきかない相手のときに使うことにする。
地下15階まで3人で切り抜けてきた。
盾の効果は抜群だ、とっさの防御はこれが最適。
マジックシールドも使っているがかけっぱなしとはいかない。
「次の階からは魔王様にお願いしよう。」
「任せろ。」
そして魔王とその使い魔による無双が始まり地下20階へついた。
「地下16階からの魔獣はたぶんSランクだな。ここはSSランク。
3人で地下20階をクリアすればこの国の冒険者ではトップになれるだろう。
今日はこれで帰ろう、そして明日は休もう。」
現時点でも騎士団の少数相手なら勝てそうだ、『言霊』を使うまでもないだろう。
◇
翌日は家で『言霊』の練習についやし動きを止めることが出来るようになった。
もっと練習して長く止められるようになっておこう。
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