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31.美桃

 朝、みんなで様子を見に行ったら店舗にも客が入っているようだ。


「店のほうも入ってるな。」


「屋台で食べよう。」


「ホットドッグをくれ。」


「魔王様、今日の予定は?」


「そうじゃな、近くで様子を見ておく。」


「全員だと邪魔になるから俺たちは退散しよう。」


 お約束の因縁をつけるやつらが来るかもしれないが彼らなら軽く追い払ってくれるだろう。

 むしろその連中の心配をするべきか。


「なにかあれば手伝う。」


「心配無用だ。」


「そうだな、俺たちは久しぶりにギルドへ行ってみるか。」


 冒険者を名乗っているのだからそれらしくしないとな。



 久しぶりにギルドへやって来たが、俺達を見る周りの目が変わったようだ。

 ボードを見ていると視線を多く感じる。


「さて、どれがいいかな。」


「これは? 美桃の採取。」


 ミリーが選んだのは美桃の採取、納品は5個で場所は森の奥になっている。

 当然ながら危険地帯だ。


「美桃ってなんだ?」


 5個納品で金貨10枚かなり高級品だ。


「美容にいいらしいわ。」


「Cランクかいいかも、シーラはどう思う?」


「いいと思う。私も欲しい。」


「なら、これにしよう。」


 手続きを済ませギルドを出るとメイリンが待っていた。


「森の奥で美桃の採取だ。」メイリンに告げる。


「美桃! 私も欲しい。」


 欲しいのかい、ネコも美容を気にするらしい。


「行こうか。」



 森へ入り奥へ歩いているがみんなの足取りは軽くメイリンの尻尾が左右に揺れている。

 そんなに欲しかったのならもっと早く言えばいいのに。


「あれ、みんな真っすぐ行くと魔物がいるぞ。」


「蹴散らせばいいのよ。」


「迂回しないのか?」


「なんで遠回りするの、早く取りにいくわよ。」


 はあー女性の美の追求には危険な魔物など邪魔でしかないらしい。




 俺が手を貸すまでもなく蹴散らして進んでいくと桃の木があった。


「美桃! いっぱい実っている。」


「すごーい、いっぱいある。」


「全部もって帰るわよ。」


「はいはい。」


 実ってる果実を採取し収納していく。


「木があれば大丈夫だから大きな実は全部取って。早く!」


 なんで急いでるんだ?


「早くしないとあれが来る!」


「あれ?」


『『ギャォー』』


「なんだ?」


「気づかれた! いいから急いで!」


 何かが近づいてくるみたいだ。


「わかった。」


 いそいで実を採取していく。


「限界! 逃げるわよ!」


「わかった。」


 みんなで急いで逃げた。





「休憩しよう。メイリンあれは何だったんだ?」


「ビーストモンキーよ。」


「へ?」


「美桃は奴らの好物だから取ったら集団で襲ってくるから厄介なのよ。」


「そういうことは先に言ってくれ。」


 美桃が高級品というのは納得した、果樹園で栽培していない理由も。


「なによそれくらい、美桃が簡単に手に入るわけないでしょ。」


 やれやれ冷や汗をかいたが目的のものは手に入った。


「帰ろうか。」



 ギルドへ報告を済ませると3人ともCランクになったがみんなはランクより美桃が手に入ったことが嬉しいようだ。


「それでいくつあるの?」


「20個だ。」


「やったー!」


「甘くて美味しいらしいの。」


 スイーツなのか。目の色が変わるわけだ。


「また取りに行くわよ。」


「それはいいが次からはもっと慎重にやろう。」


 戦闘になっても切り抜けられるが集団が相手だと森を破壊するデストロイヤーになってしまう。


「店によってみるか。」



 魔王が店の近くでのんびりと座っていた。


「どうだった?」


「美桃が手に入ったわよ。」


「ほう、美桃か。」


「分けてあげるわね。」


「それで店のほうは?」


「まずまずじゃな。中で食べていくか?」


「そうしよう。」





「美桃か、ここではどんな扱いかな?」


「高級品みたいです。」


「また何か考えてる?」


「うむ、栽培できないかな?」


「できるなら誰かやってるでしょう。栽培すると魔物が大挙してやってくるみたいですから。」


「なら今あるところに木を増やすとか。」


「それなら可能ですが収穫方法に問題が。」


「収穫なら問題ないぞ、私の使い魔もおるしな。」


 Sランクモンスターの使い魔なら連れてるだけで魔物除けになりそうだな。


「高級品だから市場価格を乱さない程度にしてくださいね。」


「わかっておる。」


読んで頂いてありがとうございます。

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