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10.辺境の街

 乗合い馬車に揺られ午後ようやく街についた。

 辺境の港街『ナルシェ』

 辺境という表現が合わない大きな港街だ。


「大きな街だな。」


「ほんと大きい。開拓を初めて随分たつからここはもう開拓地とは言えないわね。」


「ちょっと見て回りましょう。」


「そうだな、観光がてら宿とギルドを探そう。」


 みんなで街を見回りながら宿を探す。家は木造が多いここは木材が豊富なのだろう。

 街のメイン通りには商店や屋台が立ち並ぶ、魚介類も豊富で食料事情はよさそうだ。

 大きな声で通りを歩く人々に商品を売り込んでいる。

 屋台の人に聞いてみた。


「ここはね、開拓初期は外塀の建築もあったから石材はそっちへ回されて

 家の建築用としてはあまり使えなかったんだよ。だから古い家はほとんど木造さ。」


 成程、しかし火を使う台所はどうしてるんだろう。

 そう思いながら歩いていると疑問は解けた、家々の裏手の壁一面だけ煉瓦作りで赤くなっていた。

 煉瓦が手に入るようになり火を使うような所は改装したようだ。


「あ、あそこギルドじゃない?」


 ギルドは木造の大きな2階建ての古びた建物だった。


「中の様子を見てみるか。ついでに宿を紹介してもらおう。」


 中は広く冒険者も結構いた。テーブルで酒を飲みながら雑談している。


 クエストボードは依頼票が沢山貼ってあった。


「いっぱいあるね。」


「これなら仕事には困らないわね。」


「取り敢えずは宿だ、聞いてみよう。」


 受付には女性の職員が座っていた。


「こんにちわ、宿を紹介してほしい。」


 受付の職員に宿の場所を聞いた。




「宿へ行こうか。」ギルドを出る。


「今日は宿へ行ってゆっくり休もう。

 ずいぶん長い旅だったから3日は休んで旅の疲れをとりながら観光でもしよう。」


 乗合いの馬車は途中立ち寄る街で3日ほど滞在するのでここまで1月かかっている。

 滞在する街でもクエストをこなしつつ魔物狩りをしていった結果

 姉妹はDランクになりレベルも21になっている。


「宿か、しばらくはいいけどできれば家を借りたいわね。」


「そうよね、宿じゃ小声でしか話せないし他にも・・・」


「そうだね、シーラの手料理が食べられないのはさみしいよね。」


 ミリーの言う他の事とは料理の件じゃなさそうだが言わないでおこう。

 これは早めに家を用意する必要がありそうだ。


「ギルドでは宿の他に借家の件で商人を紹介してもらえたので後で訪ねてみよう。」



 宿は古いが3人部屋が開いていた、シーラの勧めで3人部屋にしたので

 結構広めの部屋だった。


「二人部屋2つよりこっちのほうが広いしお得よ。」


 やはり女性は財布のひもが固いが同部屋でいいのだろうか。




 翌日は観光がてら街を散歩した。



「魚介類を食べられるのはいいよね。」


「ほんと、いままでお魚なんて干物くらいしか見た事ないし高いし。」


「たしかに今までの街では魚を見たことがなかったなあ。」


メイリン含め皆気に入ったようなので魚介類もストックしておこうか。

こうなると醤油がないのがさみしい、なんとか作れたらいいが素人に簡単に

作れるモノなのだろうか。その前に大豆が存在するのかどうか。

醤油の作り方を覚えておけばよかった、まさかこんな事態になるなんて想像できないだろ。

現代日本の知識を持っていると思っていたが専門分野になるとさっぱりだ。



「そういえばこの国に医者はいるのか?」


「医者? 見た事ないわね貴族ならともかく平民は薬草を買ってなんとかするぐらいかしら。」


「回復魔法は覚えたが病気にはどうなんだろう。」


「病気に回復魔法はきかないわよ。まあ病気の原因を取り除いた後なら効果あるでしょう。」


「鑑定で原因ってわからないかな?」


「どうだろ、やったことないから。」


「これは調べる必要があるな。」


「回復魔法に鑑定!すごい。」


「医者になるの?」


「いや、ちょっと疑問がつぎつぎ浮かんできて。」



「んーそうか病気とか気を付けないとな。

 怪我したら傷口をきれいに洗い流してから回復しないとな。

 破傷風になったら対処が難しくなる。」


 傷にきく薬草にも殺菌効果があるのだろうか。



「はしょふ?」


「んーと、傷口から病気の元が侵入してなる病気かな。悪化したら死ぬから。

 だから小さな傷でも清潔にしておかないと危ないんだよ。

 小さな傷なのに熱がでて死んだりした人っていない?」


 抗生物質なんてないもんな。ここでは珍しくないはず。


「そういえば聞いたことある。」


「そういう理由で怪我した状態で魔物の解体とかしちゃだめですよ。

 料理もですよ、肉とか魚をさばくのもだめです。野菜もだけど。

 シーラは特に気を付けて。二人とも小さな傷でも遠慮なく話してね。」


 醤油からなんでこんな話になるのかすこし苦笑した。



「冒険者で回復魔法使える人もいるんだよね。」


「いるけど少ないよ。」


「それなら目立たないか。」


「いえ、回復ができて攻撃魔法も使える人はいないと思う。」


「少し目立つくらいか。大丈夫そうだね。」




「あ、あの。こんにちわ。」


 後ろから声がした。振り返るとシスター服のきれいな女性が立っていた。


「あ、はい、こんにちわ。何か用ですか?」


「はい、私はこの街の教会でシスターをしています、カーラと申します。

 失礼ですが先ほど回復魔法の話が聞こえてきまして、それで声をかけました。

 あなたは回復魔法が使えるのですね?」


「ええ、まあ使えますね。冒険者をしてます『ナオヤ』です。」


「お願いがあります。時々でいいので教会で怪我人の回復をして欲しいのです。

今ここの教会では回復できる方が少なくて手が足りないのです。」


「なるほど。そうですねー、あとで教会へ伺うことにしましょうか。」


「ありがとうございます。お待ちしています。」そう言って去っていった


「綺麗な人でしたね。なるほどね」えっ何がなるほどなの?


「二つ返事だなんて。」


「シスターですよ。二人とも勘違いです。」


 メイリンまでジト目で見ている。


「あ、あそこのレストラン外にもテーブルがいっぱい出てる。

あそこならメイリンも一緒で大丈夫じゃない? 食事にしよう。」


「レストラン! 高いの頼むわよ。」


「はいはい。」


「私たちも高いの頼みましょう。」


「賛成ー。」


「・・・・」


まあいいか、これで機嫌が直るならよしとしよう。




 夜の宿


「明日はまず教会へ行ってみよう。」



「あら、積極的ですね。」


「なんか、棘があるけど、まあいいや、


 この街への顔見世と情報収集も兼ねてるから。」




「ほら、前に話した盗賊の件、

 あれは俺がよそ者だったから狙われたと思うんだ。

 それで街の人達に顔を売っておこうと。

 それと街の人たちからの情報取集、接点がないと情報も集まらないし。

 街に長く住んでる人しか知らない事もあると思うんだ。

 だから、無駄骨にはならないよ。」


「ふ~ん。まあいいわ。」なんか不満そうだな。


「皆の安全の為なんだから俺が回復役で二人は世間話でもして

 街の人たちから色々と聞いといて欲しい。

 街の噂話を仕入れるの嫌いじゃないでしょ。

 それから住むならどこがいいとかあそこはダメとか

 その辺も聞いといてもらいたい。」


 街の井戸端ネットワークにアクセスできれば虎の尻尾を踏む前に避けることができるかもしれない。



読んで頂いてありがとうございます。

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