#7.追想
どうも、お久しぶりです。
死んだと思った?残念、モチベ低下でした。
リハビリみたいなもんなので、まぁ、軽い気持ちで読んでください。
帰宅路に就く。僕らの間の会話はいつもより少ない。気まずいというよりも、何を喋っていいのかわからない。
ローファーの、硬い足音だけが耳朶を打つ。高架下のアスファルトに反響する靴音が、妙に意識に上る。普段なら気にしないようなことでも、こんな時はやたらと耳につく。
「ハンバーグ、美味しかった」
「それは良かったです。ソースにも結構力を入れたんですよ?」
「ハーブも効いていて、濃厚で、凄く箸が進んでさ。ご飯が足りなかったくらいだ」
なんて言うと、椎奈はずいぶん嬉しそうに、
「それは…よっぽど気に入って頂けたようで」
などという。まるで僕が味にうるさいみたいじゃないか。
「…僕、そんなに味にはうるさくないと思うけど」
抗議の声を上げると、
「口には出さなくても、表情に出ていますから。啓さん自身は気が付いてないかもしれませんが、深く丁寧に、味わって食べていますし」
驚いた。まさかそんなことがあるだなんて。僕自身ですら気が付いていなかった。そんなに見抜かれているのか────なんて思うけれど、
「そっか、もう5年になるのか。椎奈にお世話になるのも」
「─────そうですね、もうそんなに経ちますか」
僕らは、示し合わせたかのように、高架下を抜けた先の小川に目を向ける。
「小さい頃の椎奈って、どんな子だったっけか」
水の漣というのは不思議で、過去へ思いを馳せさせる魔力でもあるみたいで。
「ずいぶん突然なうえに、思い出を根こそぎ忘れたのかと非難したくなる言動はともかく…そうですね、客観的に見て、大人しい子だったのではないでしょうか」
「自分で大人しいとかいうかなぁ・・・」
「────何か?」
「いえ、何も」
今どういう動きで、ローファー脱いで手に持ったのかとか気になるけど、藪蛇そうだしやめとこう。というか、はしたないですよオジョウサマ。
「そもそも、家が隣というだけで、あまり接点は無かったはずだしね」
「────」
「…え、あれ、僕何か忘れてるかな?」
「────いえ、別にいいです。啓さんにとってはそんなに重要でもないんでしょうし」
僕には、っていうのがすごく引っかかるけども。はっきりと鮮明に覚えているわけでもないけど、椎奈との間にあったことを僕が忘れるようなことってほとんどないから、本当に心当たりがない。
「本当に大したことじゃないんですよ。私にとっては特別な機会に、啓さんが『いつもどおり』をしただけです」
「あの、とてもとても意味が分からないんだけど?」
「これ以上掘り返すのなら、痛い目を見ますよ」
「はい、詮索いたしません」
怖い。笑顔なのに怖い。威嚇ですか、そうですか。というか、詮索されたくないことなら、律義に質問に答えなければいいのに。
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