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依存癖のある、彼と彼女  作者: モダンジャズ昆布茶
6/12

#6.臓腑

一限目の前の、SHR後のわずかな休憩時間に、椎奈は遅れて登校してきた。遅刻など無かったかのように颯爽と。半周回って誰も彼女に気が付けないほどに堂々と。風は通り抜けるが道理であるかの如く、教室に足を踏み入れる。




◇ ◇ ◇




彼女の存在に安堵し、彼女の不在に不穏する。───僕の心は、彼女に支配されているようで。尊敬し、友愛する対象であり、何ら悪しきところのない、非の打ちどころのない彼女に、しかし僕は翻弄される。一喜一憂する。心の平穏を保てない。


或いは、僕の支柱だろうか。



其の名は──────依存。



この世で最もくだらない、無意味で愚かで、弱者のみが抱く──歪み淀んだ情愛。



勿論、僕にとって彼女は大切な友人、幼馴染だ。



だから、軋む。


ギシリギシリと慟哭するのだ。


この、心が。




◇ ◇ ◇




響くチャイムに、いつもの通り、僕は目覚める。時は昼休み。椎奈を誘って食堂に行こうと声をかける。


「椎奈、食堂に行こうか。」


友人たちと喋っていた椎奈はこちらに振り向くと、目を二、三度瞬かせると、不思議そうに首を傾げる。


「構いませんが・・・食堂に何の用が?」


今度はこちらが首を傾げる。


「何の用も何も・・・昼食を摂りにだけど?」


すると椎名は、少し寂しそうに言う。


「私のご用意する昼食では、啓さんのお気に召しませんでしたか?」


違う。そうではない。


「いや、椎奈の作る料理はいつだって食堂よりも格段においしいけど。そうじゃなくて、寝坊したんならお弁当を作る暇もなかったでしょ?」


それが当然だ。急いでいるのに弁当をわざわざ作る奴はいないだろう。コンビニなり何なりで買ったほうが早い。まして、学校には学食もある。


椎奈は、その言葉に安堵するように表情を崩した。


「それなら良かったです。それと、お弁当は作りましたよ?」


───何だって?


「椎奈、まさかとは思うけど、今日遅れた理由って弁当を作ってたから、じゃないよね?」


「はい、そうですが?」





────────何だよ、それ。



僕は君を大切に思っている。

君に傷ついてほしくはない。

君の負担にはなりたくない。

君の負担になる僕なんて、僕自身が好きになれない。


君の犠牲を容認した安穏なら──────僕はそんなもの、要らない。



「椎奈の負担になるのなら、そんなことはしなくていい。しなくてもいいんだ。」


罪悪感とか、そういうことじゃなくて。もっと純粋で濁った感情。


思慕よりも独善的で、恋情よりも打算的。


嫌悪よりも肯定的で、愛情よりも合理的。


きっと、君だって分かってる。



◇ ◇ ◇



彼のことは、誰より深く理解している。その、自負がある。


同時に、私も彼に理解されたい。彼に共感されたい。


だけど───見られたくはないのです。


この、臓腑のうちを。


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