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依存癖のある、彼と彼女  作者: モダンジャズ昆布茶
3/12

#3.いつものこと

ブラックコーヒーの用意をお勧めします。




僕らは、いつも通りの通学路を歩いていた。何も変わらず、何も起こらず。『すべて世は事も無し』という具合に、僕らは平和に過ごしております。



とは、限らないわけで。



交差点を挟んだ斜向かいで、少年が蹲っていた。他校の制服。数メートル先に倒れる自転車。事故だろうか。








「行ってみましょうか?」


「いや、野次馬になるのが関の山だよ」


僕は言う。

実際、傍目から見ても十分に衆目を集めている。恐らく、善意の誰かがすでに通報した後。行っても邪魔になるだけだろう。


───それは、誤魔化しなのかもしれない。


「そうですか。では、そういうことで」


けれど、椎奈(キミ)は肯定した。


「あぁ───」


だから、良いんだ。これで。


「それじゃあ、行こ───」






























ヒュ───ン、ヒュ───ンッ!!














───白バイだ。





ヒキニゲ?






「行こう、椎奈」


僕は言う。


「えぇ」


気遣わしそうにするも、頷く椎奈。君は優しいね、本当に。


「大丈夫で「大丈夫だよ、心配しないで」───そうですか」


大丈夫。大丈夫だとも。





どうせ、何も感じないんだから。


だから、その言葉は、残酷だ。




◇ ◇ ◇




今日の通学路では、いつもよりも椎奈と話した。平時よりも、ずっと、ずっと。


ソレに何も感じないとしても、やっぱり、僕の心の表層下───顕在化しないほどに深くに───沈んでいるものがあったのだろうか?


(おり)のように、この精神(こころ)に沈殿した感情(おもい)があったのだろうか?



そんなことは、僕ですら分からない。或いは、僕自身であるが故かもしれないけど。




今日も今日とて、僕は誰とも関わらず、誰も僕とは関わらない。




◇ ◇ ◇




教室の前扉から入って真逆にある、少々移動には億劫な場所───なんて言っては、学友たちからはステキな『羨ま死ね』という返答があるだろうが───にある自席。いつものように、パイプ机に学生鞄を立て掛け、重く腰を下ろす。


誰とも目を合わせたくないし、誰とも会話をしたくはないから、体を丸めてしばし眠ろう。こんな辺境の地(教室の隅っこ)に用がある奴も、眠っている僕にわざわざ話しかける物好きもいないだろうから。




◇ ◇ ◇




───ふと、眠気がほつれる感覚に従い、顔を上げると、何やら騒がしい。


様子を見るに、時は昼休み。皆は昼食。僕は未だに寝こけていた、といった具合だろうか。


黒板上に掛かっている時計に目を遣れば、〔12:37〕を指す長針短針。昼休みは35分からだから、僕が目を覚ましたのはチャイムの音によるものだろう。1限から4限まで寝過ごすのはいつものことだ。


「目は覚めましたか?」


いつものように同席する椎奈。心なしか呆れ顔───でもない。いつものことと割り切っている様子だ。啓の勉学に対する不真面目さ加減がよく分かる。


「まだ眠い。もう少し寝ていたいところだよ」


欠伸を噛み殺す啓。


「ちゃんと自宅で寝てください。それとも、私が寝かしつけに行かないといけないでしょうか?」


二人分の弁当を開きながら、冗談っぽく椎奈が言う。

周りの生徒たちも、いつものことと気にも留めない。


「それもいいかもね。退屈しなさそうだ」


僕も、冗談っぽく返してみる。


「ふふ、考えておきます。なんだか、新妻みたいですけどね」


などと揶揄ってくるので、


「椎奈には、胃袋を掴まれているからね———なんてね」


二人、鏡合わせに同じ具材を口に運びながら、褒めてみる。



ぶっちゃけた話、本当に掴まれていたりする。







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