二人の異端者
気に入らない……。
気に入らない……気に入らない……。
気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない。
なんだこの状況は。何故、江橋に主導権を握られたかのような状況になっている?
二人をここに呼んだのは僕だぞ? 僕の意思、僕の考えでここに集めた。今ここで起きている事象すべては、僕によって運営されてなきゃおかしいじゃないか⁉︎ なのにーー。
「おい! 何を勝手に話進めようとしてるんだよ? アンタに何かを決める権利は無いし、そんなことさせない」
僕は怒気を込めて江橋才加という男に掴みかかる。
「この状況を利用したって言ったよな? ふざけるな! アンタはただここで死ねばいいだけなんだ。アンタの都合も企みも知ったこっちゃない! 」
身長差もあって下から覗く形になるなも腹立たしいが、それ以上に江橋の澄まし顔が気に入らない。
「そうやって、人を小馬鹿にするような態度が苛つく! アンタ、ホントになんなんだよ」
江橋の瞳を覗く。
江橋の表情を読み取る。
その面の奥底を丸裸にしてやる‼︎
テオトマを行使する。僕自身の、未だ未完成のテオトマを。
・・・・・・
行使者 乙坂聡一
認証者 鈍角の覚者
自己覚醒段階 クラス1から3まで承認
・・・・・・
『我、最古の支配者が問う。過去を呪い、今を捨て、未来を祝福するか? 』
僕は躊躇わずに頷いた。
『承認。汝の愚問を解く真理を授ける』
身体の中から何かが消え失せた。それは、形の無いモノ。人間としてあった筈の感情。感傷の概念を喪失した。
†
本堂の神像。その周囲を囲む像たちの中には、生身の血肉が詰められていた。そこには、千堂さんの名前が書かれた紙切れが一枚添えているだけ。その他の像も同じように血肉が詰まった上に名札のように紙切れが添えられている。中には知っている名前もある。きっと、ここで働いていた人たちの成れの果てだ。誰一人として人間としての原型は保たれていない。
「そんな……皆んな、こんな」
『キレイダネ』
「えっ⁉︎ 」
身の毛がよだつ感覚。背筋を走る嫌悪感が気のせいだと自覚する。こんな感覚、これまでも味わった……ような気がする。
そう、私は……咲本倉南はこの光景に見慣れていた。それどころかーー。
バッッッ!! ズドンッ!!
私が像たちに見惚れていると、中心に立つ神像が爆音と共に四散した。強烈な音は下から上に打ち上げられた石蓋によって発生したと思われる。
「なっ……なに!? 」
土埃が舞い、一時的に煙幕となる。次第にシルエットが浮かび上がる。
「そ、そこに誰かいるの? 」
そのシルエットは人型であり、誰かがいるのは明白だった。
「もしかして、江橋さん? 」
その刹那、シルエットの片側に何かが縦に通過したのを見た。
すると、その何かを追うようにしてシルエットの片側が飛翔する。次第にシルエットは大きくなり、こちらに近づいてきているのがわかる。そしてーー。
びちゃーー。
そんな軽い水音が私の頬から発される。それは、血液であり、私の足元にも飛沫している。
シルエットだった飛翔物の正体は明らかとなる。言わずもがな、人間の腕だった。しかも、見覚えのある袖を纏っている。
間違いなく、この腕は江橋さんのだ。
煙幕は薄れ、視界がハッキリとする。目の前には、片腕を失くしたまま俯せに倒れた江橋さんと、大きく咀嚼する少年が佇んでいた。
「ムシャグシャッ……ゴクッ。巧く避けられたな。やっぱり肩じゃ意味がない。その悪辣な微笑みを喰いたいんだよ。ーーん? 」
少年は私の存在に気づいたのか近づいてくる。
「お久しぶりです。覚えてますか? 僕のこと」
「……ええ」
忘れるわけがない。多少成長した事による変化はあるも、雰囲気も基本骨格も変わらない。
「乙坂聡一くん」
乙坂聡一は、口が裂けているかのように大きな笑みを浮かべた。
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