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呪詛の祝言  作者: 柱こまち
呪詛の祝言~リテイク~
43/52

空虚な雑音

 夢を見た――。


 夢を見た――。


 知りもしない()()を視た。


 それは、この世界とは違う場所だ。


 僕が視た僕は、今の僕ではなかった。そこにいたのは、ありえない存在だった。なにせ、僕は子供だった。背の丈は今よりも若干低い程度だったり、僕の知る茅木美香さんの子供の頃の姿がそこにはあった。


 なら、それは僕が記憶の中から抽出したものなのか?答えはノーだ。僕が子供の頃は彼女との面識なんて本当に数える程度しかなかったはずだ。千堂霧矢とかいう刑事に話した内容は、()()()()()()嘘偽りのない真実だ。


 だから、今の僕に在っていいような光景ではないのだと直感できる。では、これは単なる虚妄か?それにしては、あまりに鮮明過ぎた上に脳裏にしつこい油汚れのように染みついている。これが妄想の類であるというには、どうしても納得できなかった。


 この夢はある女に遭遇して以降毎晩のように見ている。その女は当時の僕よりも幼く見える容姿をしていながら、瞳の奥底から伝わる異様さは、どんな異常よりも常軌を逸していた。


狗神様は言った。アレはテオトマによる能力ではないと。


狗神様は言った。アレは未知の眼差しだと。


狗神様は言った。狗神様は言った。狗神様は言った。狗神様は言った。狗神様は言った。狗神様は言った。


狗神様が言った。あの空虚に慈悲をくれてやれと。


だから満たしてやった。狗神様はあの女の存在そのものを空虚と表現した。中身が無いなら満たしてやるのが道理というものだろう。


僕の目から見て、あの女は〝何か〟を失った抜け殻のように写っていた。とても重要な〝何か〟。けれど、どうしようもできない立場にいたことによる諦観と後悔による亡者のような在り方が、女の価値をドン底まで落としていた。


観ていられなかった。何があったのかまではわからないし、知ろうとも思わない。しかし、その浅ましいであろう過去の諸行が今の女を象っているのなら、切り離してしまえばいい。


その過去ごと今の空虚な容れ物を世界から乖離させてやればいいと思った。


難しい言葉を並べたが、結局は単純な話だ。


『殺してしまえ』


脳裏に浮かぶ単純明快な回答。僕は、自分自身の本能に従って女の首元に触れてーー。




その瞬間、視界が白くけれどハッキリと風景の輪郭を抑えた。そして刹那の如き白色光が消失し、色に濁されて数秒後・・・轟音が鳴り響いていた。


気づけば、指定した時間まであと僅かというところまで刻は過ぎていた。昔のことに耽るのはいいが、生産性のカケラも見出せない過去を振り返るのはナンセンスだ。


そんな初歩すら思考から放棄した今の僕は、きっと冷静さを欠いているに違いない。


だってしょうがないじゃないか。


あの女ではダメだった。幸福ところか不愉快すら覚えた。そのリベンジが果たせるなら、今度こそ僕が手を下せるなら、僕の幸せの為に彼女の幸福を喰らってやる。


読んでいただき誠にありがとうございます。

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