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呪詛の祝言  作者: 柱こまち
呪詛の祝言~リテイク~
42/52

その存在に・・・

 通話を終えたスマホを僕はハンマーで叩き割る。粉々に砕け散った液晶ディスプレイは、畳の中に紛れ込むようにして埋まっていく。


 寺の中にいた住職は解体した。解体と言っても綺麗に分割するような丁寧さを僕は持ち合せていないし、なにより狗神様が良く思わないだろう。


 狗神様は、残虐性を尊び、巧妙な策略を好み、効率化を愛する。その為には誰をどうすればいいのか、何をどう変化させれば到達するのかを正確に理解する必要がある。


 僕には特別な能力がある。それは、自分自身が持つ様々な機能を思い通りに向上させる。というより、その為の上限を設けないというものだ。


 もっと端的に表すなら()()()()()()()()()()とでも言えば恰好がつくだろうか。もちろんこれを活かすためには自己研鑽が必須だ。物事には様々なスペシャリストが存在している。しかし、それらはすべて()()()()という余計な枷があって初めて成立する、なんとも不便で意味の薄い称号だ。


 僕ならその気になりさえすれば過去、現在のスペシャリストを超えることなんて造作もない。しかし、相応の正しい努力は必要である。それは、あまりに無駄な過程だと思う。けれども、それをスキップできる能力が別にあるとすればどうだろう?それは即ち短期間により多くの能力を獲得できるということだ。


 狗神様に初めて出会った時、僕は契約の報奨に無限に成長できる能力を前金として貰った。そして、この6年間で様々な成長を遂げた。おかげで、身体の中身はボロボロだ。


 今にも崩れ果てそうだ。今にも風化して還りそうだ。今にも新たな芽吹きを迎えそうだ。


 僕の身体は、脳も骨もなにもかもが作り変えられた別物という実感がある。それは、気のせいでなければ、故意的な錯覚でもない。


 僕は、僕のすべてを狗神様に捧げた。奉仕の理念は確かにある。けれど、それは感謝という曖昧な思い込みから発した謎の使命感ではない。いつだって、僕は僕の為にできることを覚え、できないことを破棄し、自分にとって理想的な未来像を叶えるための努力を惜しまなかった。それに拍車がかかっただけのことだ。


 あの夜、女に聞かされた。僕は、ある男と接触したことが切っ掛けで、このどん詰まりな時代に取り残される可能性が存在するのだと。そんなことになれば、すべてが水の泡だ。


 なら、その男が如何に狗神様にとって価値のある男であったとしても、僕は接触してはならない。それが例え、神様によって運命づけられた出会いであったとしても―――。



♦♦♦†♦♦♦


 いつかのように、突発的に空を覆う雨雲が地上の光を少しずつ遮っていく。スマホのディスプレイには雨雲接近中の通知がピロンっという音とともに画面上部を埋め尽くす。

 

 大学を出た二人は、江橋の車で呼び出されたお寺に向かうことにした。倉南が通う大学から墓地までは国道を利用して三十分程度はかかる。おまけに今日は道路が混み合っているらしく、江橋は別のルートを模索しながら走っている。


 そんな運転手を余所に、助手席に座っている倉南は江橋の提案から仲石に連絡を試みている。


 二人だけで来るように指定されているけれども、別動隊としてたまたま住職に用事がある風を呈した侵入ができれば、乙坂聡一も文句は言えないのではという発想からきている。倉南も可能性があるかどうかはともかく、どうにかして身を護る算段を少しでも多く用意しておきたいと思う心理は真っ当なモノであるといえるだろう。しかし―――


 どうにも仲石が電話に出る気配はない。仕事が忙しいのだろうか?何度か間隔を空けながら通話を試みているが上手く繋がらない。


「ダメです。仲石さんに通じません」


「そいつは参ったな、けれど仲石さんの事務所まで寄っていく時間は恐らくないな」


「留守電だけいれときます!」


 倉南は仲石に向けて、起きたことを簡単に掻い摘んで発することにした。


「早々に気づいてくれればいいけれど、とりあえず仲石さんが来れない場合のことも打ち合わせすべきだろうね」


「そうですね」


 でも、他にどうすればいいのだろう・・・。


 こういう場合、安易に警察に通報するのはリスクが高すぎるし、詳細まで説明したところですぐに動けるほど、警察はフットワークが軽い組織でもないと江橋は言った。こういう時にすぐに動けるのは地元の交番勤務員程度だし、千堂を出し抜ける程の人間相手には逆に鎮圧されかねない。最悪死人が増えていくだけだとも。


 倉南もそれには内心同意していた。倉南には、千堂がどれほど優れている刑事なのかは知る由もない。しかし、初めて会った時の佇まいや雰囲気から年齢に不相応なほどベテランさが滲み出ているのは薄々感じていただろう。倉南の中での評価は間違いなく悪いものではなかった。


 どうするべきかを考える。他に頼れる存在を思い浮かべられない。


 ―――いや、今のは嘘だ。本当はわかっている。というより、最初に頼りにすべき存在を倉南は無理矢理蚊帳の外にしていた。それは何故か?


「・・・頼るしかないんだよね」


 ―――それは、今までの自分の方針を曲げることになるのが、たまらなく嫌悪的に感じてしまうからだ。


「他に誰か宛があるのかい?」


 倉南は「はい」と一言返答し、()()()()()()()()()に電話を掛けた。

読んでいただき誠にありがとうございます。

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