表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪詛の祝言  作者: 柱こまち
呪詛の祝言~リテイク~
28/52

母体の中で/在りし日の叡智/戻らない想い出と違和感

ここからは、呪詛の祝言~リテイク~の改訂版を投稿していくことになります。


尚、元の呪詛の祝言~リテイク~のページは最終的に削除されます。

人はそれぞれ、物語を携えて産まれてくる。一生の中でその人にまつわる出来事、そのすべては誰が読むためのものなのだろうか。


 実を言うと、この考え方自体が人の限界を示している。


 物語とは、〝いつか終わることを約束されたお話し〟であり、また〝いつでも切り捨てられる可能性〟でもある。


 万物には必ず始まりがあり、始まりという事実に付随して終わる可能性が付きまとう。物は言いようで、グッドエンドには必ず語られないバッドストーリーという後日談が存在し、バッドエンドには必ず語られないグッドストーリーが後日談に控えている。


 これらはすべて、可能性に過ぎない。物語は、誰かが紡いでそれを他の誰かが知ることで確立する。


 では、私の物語を読んでくれる親切な人はいるのだろうか?


 私という個体の片鱗が、この世に脳髄として形成されたのはもう二十数年前の話。愛しき父母の愛がもたらした結晶なら価値があり、愛無き不貞が生み出す泥なら無価値からのスタート。


 私は・・・私の人生には、どれだけの価値があるのだろうかと悩むこともある。その苦悩に意味はあっても、遺すものなど何もないと感覚でわかっていながら、その事実を突きつけられることをどこかで拒む。ええ、私という女は大変に面倒な生き物。それはわかっているのだけれど、どうしてもこの苦悶だけは一生を懸けても晴れる気がしない。


 まだ愛しき母の胎内ですくすくと成長をしていた頃。そんな自我も何もない時代の私には、僅かながらもあまりに鮮明な記憶がある。


 それは、この世界の絶対的な存在との対話。私がまだ人としての存在意味を持たないからこそ出会うことのできた奇跡。私にとってのもう一人の母とも呼べる究極の存在。


 最古の文明の残り香。恐竜より前で微生物より後にこの星に到来したこの宇宙(せかい)の支配者。霊長類の祖。蒼い肌の女性。彼女の名は〝ユリジャ〟様。


 ユリジャ様は、私に言葉を遺した。

 其方の()を我が後継者として献上せよと。


 ユリジャ様は、私に才能(テオトマ)を与えた。

 其方が我の手足になるのに便利だろうと。


 私こと咲本詩奈は、こうして自身の物語を獲得した。

 


♦♦♦†♦♦♦



 僕には神様が憑いている。神様といっても、存在そのものは幽霊みたいで物理的には何もできないらしい。


 小学生の頃、僕は神様に見出された。あの時はそう、僕が幸せというカタチのないものを我武者羅に求めていた頃だ。


 僕には、幸せというモノがよく理解できなかった。大人に訊いてもよくわからないと返されたり、はぐらかされたりと確定的な答えを知ることができなかった。けれど、神様は・・・狗神様は僕に一つの解を示してくれた。


「ねぇ、狗神様。幸せってなんなのかなぁ・・・幸せってどういうことなのかな?」


(――――――――――――。)


「幸せって、そういうことなの?みんな幸せって言葉にしてる時は笑顔だよ?」


(――――――、――――――――――。――――――――!!)


「幸せを享受する?ってそういうことなんだ・・・。ふーん、なんかつまらないね幸せって」


 これが、狗神様が教えてくれた『幸せ』についての感想だった。


(―――――――、――――――。)


「え、僕が幸せをどう手に入れるのか見たいって?うーん、難しいこと訊くね。そんなの僕にはわからないことなんだからどうすることもできないよ」


 狗神様は、僕が幸せというモノをどう手に入れるのかということに興味があるらしい。そんな影も形も無い感情、これまで実感したことすらないのだから、いざ手に入れられたとしてもきっと自覚が無いんじゃないかという予感がする。


「もし、それを見せることができたなら、何かご褒美をください」


 狗神様は、少しだけ考えるような素振りをした後、その首を縦に振ってくれた。


「やった!じゃあ僕頑張ります!」


 僕は意気揚々に走り出した。何処かを目指すわけでもなく、ただ本能のままに身体を動かそうとしただけ。


「何をお願いしようかな!・・・そうだ、テオトマをお願いしよう。うん、それがいい。僕専用の僕だけの僕しか使えない特別なテオトマ!!」


 こうして僕は、人を超える第一歩を踏み出してした。



♦♦♦†♦♦♦



 最近、季節外れの天候が増えはじめ、世間ではここぞとばかりに地球温暖化現象やその対策に関するニュースが以前にも増して目にするようになった。しかし、その話題について何かのアクションを起こすのかと問われれば何もしないというのが正直な感想で、それ以上に俺は哀しみに更けていた。


「君が死んでから、半年か。時間は過ぎていくもんだな」


 俺こと仲石洋治は、ある一人の亡き女性を愛していた。いや、今でも愛しているのだとは思う。彼女が存命だった頃にこの気持ちを伝えたことは一度もない。そのことに後悔をしているかと問われれば・・・正直なところわからない。


 彼女とは大学のサークルで知り合った。最初は見向きもしなかったどころか寧ろ苦手意識すらあった。けれど、なにかと話す機会は人並み以上に多くて、段々と惹かれていたのだと思う。それなりに目立つ女性で、一際容姿が整っていたこと、頭脳面で秀でていたこと、そして実家が地主で資産家としての名声も広く周知されていたことから、狙う人間はそれなりに多かったことだろう。


 俺はよく知り合いから相談を受けることが多かった。そのこともあって、何処から聞きつけたのか彼女の方から俺に接触してくるようになり、相談を受けた。


 俺は、はじめにファミレスで話を聞こうと思っていたのだが、彼女の方から彼女の実家で相談したいという要望を受けたので、それに応えることにした。


 彼女の実家は、一言で表すと古風な和の屋敷という感じだった。古風な門がどことなく厳かさを醸し出しているにも関わらず、敷地に入ってみると居住施設そのものは洋館そのもので、統一感が無い雰囲気がどこかおもしろいという感想を引き出さざるおえない。


 屋敷に入ってからは、そのまま彼女の部屋まで招かれたのだが、部屋そのものは現代女性らしさ満載などこにでもいるような雰囲気がある。


「それで、相談したいことがあるって話だったけれど、どうしたの?わざわざ部屋に呼ぶってことは、誰にも聞かれたくないことなんだろ?」


「うん。実はこの前の飲み会で酒井君たちにお持ち帰りされかけてね、そのときはどうにかなったんだけれどそれ以降もしつこく付きまとってくるの」


 なるほど、ストーカー被害というわけか。


「それで?」


「私的には、すぐにでもストーカーするのを止めてほしいのだけれど、仲石くんって酒井君たちと知り合いだったよね?止めるように言ってくれないかな?」


 話としては、彼女を狙う男たちがいて被害に遭ているから助けてほしいということだが、酒井といえばあまりよくない噂ばかりが目立つグループのリーダー格だったと記憶している。


「なんとかなって良かったね。間違いなくそのままお持ち帰りされていたら、クスリ飲まされ、犯され、写真撮られて脅されるっていう状況が待っていただろうし」


「なんとか・・・ならないかな?」


 しかし、彼女は()()をまだ打ち明けていない。


「君が本当に懸念していることって、自分がヤられること?根拠は無いけれど、俺にはそう見えないのだけれど」


 彼女は、一瞬だけ呆気にとられていた。それは見当違いのことを聞かれたことによるものとは違う。言い当てられたことによる驚きでもない。この反応は、安堵から来るものだろう。


「うん、仲石くんなら察してくれると思ってた。予想よりずっと早かったけれどね」


「随分な過大評価だな」


「ううん、過大評価なんかじゃないよ。だってこんなにも早く私の()()に気づいてくれたんだもの・・・」


 彼女が俺に求めたこと、結局のところ酒井たちのストーカー行為を止めさせるということ自体は変わらない。それよりも、彼女が言いたいのは――――。


「うちは地主っていうことで通っているけれど、裏の顔はただの暴力団だからさ。田舎の伝播力も相まって、手を出そうとした時点で人生終わりなのよ」


「だろうね。誰も気づいていなかったかもしれないけれど、ここの構成員の方なのかな?普段から頻繁に君のことをかんし・・・見守っているよね」


「すごい!そんなことまで気づいてたの?」


 彼女と接している間だけ感じる視線がある。どうして他のみんなは気にしないのか、そもそも気づいていないのかまるでわからないけれど、俺が彼女と接することを苦手としていた理由がまさにこれだ。


「視線とか人の注意の向きとかに敏感でね。君と話すときに感じる居心地の悪さが以前から気になっていたんだ」


「仲石くんは私のこと嫌い?」


「おっと話が飛躍したな。嫌いじゃないよ、正確には苦手なだけさ。君がというより見守ってくれている構成員の方々に対してっていうのが本音かもな」


「私は・・・仲石くんのこと嫌いじゃないよ」


 嫌いじゃない・・・好きでもないってことか。ぜんぜんそれでいいんだけれど、それ以上の関係になる必要もないでしょう。


 なのにどうして、頬を赤らめる。そのあからさまさが逆に癇に障る人もいるということを知って欲しいものだ。




 ―――――なんて、露骨に尖った言葉を並べる時期もあったが、この件の解決がきっかけで何かと彼女とは縁があった。そんな彼女ももうこの世にはいない。


 しかし、あれだな。何度か彼女の家にお邪魔させてもらうことはあったが、一度も彼女のご両親と会うことは無かった。葬式の際に一度だけ妹さんに挨拶だけはさせてもらったが、ご両親は()()()参加しなかったらしい。


 自分たちの娘の葬儀だというのに敢えても何も無いだろうとは思ったが、あの妹さんから滲み出る異様さに俺は内心腰を抜かしていたのかもしれない。妹さん・・・というより、その背後に何かがいると感じてしまっただけだが・・・。嫌な話だ、霊感なんてもの信じちゃいない派なんだがな・・・。

読んでいただき誠にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ