表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

授業

「ルーミャさん、どこに行くんですか?」

「ルーミャって呼んで、同い年だよ。カウリー先生の所だよ。色々と教えてもらうの」


 色々って何だろう? 学校みたいなところかな? 歴史とかだったら面白そう。この国は、どうやってできたんだろう?

 ルーミャは、お城の外に出て、裏に回る。目の前には草原が広がっていた。所々に建物が見えるが、腰ぐらいまで生えた草が目に入る。


「こっちだよ」


 ルーミャは、獣道のように細い道を迷わず進んでいく。

 しばらくして、大きな岩が目の前にそびえたった。その前には、一人の男の人が立っている。男の人が口を開いた。


「初めましてアスエラ様。私はルーミャお嬢様の教育係のカウリーでございます。これからよろしくお願いいたします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」


 初老のお爺さんだ。姿勢がよく、できる人。という印象を受ける。とても優しそうだ。

 これからどんなに大変か、この時はまだ分かっていなかった。


「えっ……。ル、ルーミャ、あれは何?」


 挨拶をするとカウリー先生は、手先で空中に円を書いた。するとそこには、七色に輝くブレスレットが出来ていたのだ。


「あっ、そっか、アスエラは見たことないよね。魔法だよ。グリモを着けると使えるようになるの」


 魔法が使えるとは。まるで夢みたいだ。

 まさか、夢なのか? けど、草のにおいや地面の感触は本物だ。夢だと、こうも感じられまい。つまり、現実だろう。

 この世界には魔法があるのだ。

 早く使いたい。使ってみたい。


「これから、魔法の授業を行う。アスエラ様はこちらのグリモをお使いください」


 先生から渡されたのは、先ほど作られていた、七色に輝くブレスレットだった。なぜか、二つも渡される。二つとも同じデザインのようだ。

 二つとも着けていいのか?

 ルーミャを見ると、片手に一つずつ着けている。どうやら、二つで一組らしい。左右の手に着ければいいようだ。

 それにしても、どうつければいいのか? ゴムじゃないので伸びないし、金具もない。


「あぁ、そのままブレスレットを手首に押し付けるようにしてください。入れ。と念じると入りやすいですよ」

「は、はい」


 言われた通り、手首に押し付けながら、入れと念じる。


「うわっ」


 手首に押し付けられている感触がなくなり、手首の中を冷たい水が通り抜ける。一瞬のうちに手首にブレスレットが着いていた。


「すごい」

「反対の手も、同じようにやって着けてください」

「はい」


 両手に着いたことを確認すると、カウリー先生は口を開いた。


「お嬢様は、いつもと同じようにコントロールを練習してください。アスエラ様はまず、自分の魔法を見つけましょう」

「はい!」

「は、はい」


 返事を聞くと、ルーミャは岩に魔法をぶつけ始める。先生は、手のこぶしくらいの珠を取り出した。先生は、布で手が直接触れないようにしている。


「アスエラ様、こちらに触れてください」

「はい」


 珠は中で煙が揺れているようだった。


「……うわっ!」


 思わず手を引っ込める。

 触った瞬間、何かが引っ張られる感覚があり、珠が四色に光った。先生を見ると、何かすごいものを見たように目を見開いている。

 引っ張られた時ののゾワゾワが、まだ体に残っている。


「アスエラ様、あなたは……」


 あの光は、何だったのか?


「あ、あの……。これって……?」

「……あぁ、すみません。四色の光は書物でしか見たことがなく、実際には初めて見たものでして。アスエラ様の魔法の種は氷、炎、風、そして、俊足です。これら四つの魔法を使うことができます。ちなみに私は、物体を作る制作と水の魔法を使うことができます」


 光る色によって、魔法の種類が分かるらしい。使える魔法が限られているのが残念だ。魔法は、何でもできると思っていた。


「ルーミャお嬢様。訓練を中断して、こちらへ来てください」

「はい。先生、アスエラの魔法の種が、わかったの?」

「はい。分かりましたよ。四種類ありました」

「えぇ!」


 ばっと、ルーミャはアスエラの方を向く。目がまん丸だ。驚いているのがよくわかる。


「先生、そんなことがあるんですか?」

「ええ、昔はあったみたいです。私も書物でしか見たことがありません」

「そうなんだぁ」


 話を聞くうちに、受け入れ、賞賛してくれているのが分かった。目がキラキラしている。


「アスエラ、四種類なんて凄いね。私は、二種類だよ。雷と飛翔の魔法だよ。ちなみにアーシュは、会話と水の魔法が使えるの」

「へぇー!」


 色々な種類の魔法があるみたいだ。何種類くらいあるんだろう?


「それでは、ルーミャお嬢様、アスエラ様に魔法を見せてあげてください。しっかりコントロールをしてくださいね」

「はい! 分かりました」


 ルーミャは手を前に出し、目をつむる。手首に着いたグリモが、光に反射して輝いている。ルーミャは集中しているのか、微動だにしない。

 しばらくすると、右手と左手の間に電気が見え始めた。その電気は、だんだんと中心に集まっていき、球体になっていく。最後に、その球を空中に投げる動作をした。花火のように打ちあがり、空中ではじける。光があたりに広がり、上から降ってきた。


「よく練習しました。これでこそ次期我が国王です。あえて言うなら、最後はもっと上まで打ち上げることができるはずです。すると。もっときれいに見えますよ。次は、飛翔の魔法も頑張りましょう」

「はい!!」


 一仕事を終えた少女は、次なる目標に向かう誇らしげな表情をしていた。


「次は、アスエラ様やってみましょう」

「は、はい」


 魔法だ。どう使うのだろう?


「イメージを強く持つことが大切です。イメージをすると、魔法が使うことができます。形や色、様子なども細かくイメージしてください」

「はい」


 イメージするだけなら、簡単そうだ。


「炎は危ないので、まずは氷を出してみましょう。」

「はい。冷たい氷をイメージすればいいのですよね」

「はい」


 目をつむってイメージする。冷たい氷を。冷蔵庫で作る氷を。

 手から冷えた空気が染み出ている気がする。次に球をイメージする。手ででるように、さっきのルーミャのように……。真ん中に、手の真ん中に、冷気を集めていく。

 そして、空中に投げるようにして、雪を降らせるように。手を上にゆっくり上げる。両手で氷の球を押し出すイメージで。

 パッと投げ出した。


「うわぁ」


 ルーミャの声と同時に、冷たい何かが顔に当たる。


「まさか、ここまでやってしまうとは……」


 アスエラはそっと、目を開けた。

 雪だ!

 冬じゃないのに、雪が降っていた。うっすらと広場一面を覆っている。

 これを、自分で作りだしたなんてびっくりだ。


「今日の授業はここまで。アスエラ様は、本当に初めてですよね?」

「は、はい」


 カウリー先生は一度、顎に手を当てると、口を開く。


「よくここまでできました。明日はもっといろいろな魔法を試してみましょう」

「ありがとうございました」


 最後は、ルーミャと声を合わせて挨拶を言った。

 二人は、カウリー先生のいる広場を後にし、来た道を戻る。


「アスエラ、凄いね!」

「ううん、ルーミャの見本が良かったからだよ。電気の光、キラキラしていて綺麗だった」


 ルーミャのおかげで、どうやればいいのか分かった。


「えへへ、そう? ありがとう」


 授業はあっという間だった。 

 計算や、語学について学校のように学ぶと思っていたが、まさか魔法だったとは。それに、思ったより体力を使う。イメージすると頭が痛くなってくるし、手に力を込めて上にあげるからだ。集中すると、疲れる。

 まだ、明るい昼間。放課後は何をするのだろうか?

次は、放課後です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ