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わたしの永遠の故郷をさがして第二部 第三十九章 

 マ・オ・ドクの『ぶっちぎり号』は、アマンジャの『エビス号』よりもだいぶん小さい。

「海賊が小さい船に乗るのは、勇気の記しで当たり前。」

 なのだという。

 そうはいっても、マ・オ・ドクは小惑星をひとつ、まるまる基地として持っているし、小惑星ごと、そのまま移動もできる。不可思議な形の本部が衛星にドッキングしているので、本部だけ切り離して動くことも可能だ。アマンジャに言わせれば、

「言行不一致、ちょっと臆病者さ。お城の周りをいっぱい固めてるのさ。」

 となる。

 そういうアマンジャも秘密基地をちゃんと持っている。

 ただしこちらは、土星の衛星内に隠されているので、そのまま移動というわけにはゆかない。

 だからどうしても、船は多少は大きくなる。

 マ・オ・ドクに言わせると、

「ちょっと食い過ぎのおばあちゃん。」

 なのだそうだ。

 この二人の関係は、一言では言い難いのではあるが、商売敵ではあるものの、仲はけっして悪くないことは周知のとおりである。

 権力との関係も微妙である。

 マ・オ・ドクも、アマンジャも一定のご領主様に属しているという事はない。

 公認の「私掠船」というのでも、もちろんない。

 どちらかと言えば、商売と海賊の両立型であることは共通している。

 あえて言えば、アマンジャは金星中心の海賊で、ビューナスと、合法的にはやりにくい微妙な取引をしている。まあ、合法的には退治しにくいビューナスの敵方を、非合法に叩くこともあるわけだ。

 そのかわり、見逃すところは見逃してもらっている。

 

 一方、マ・オ・ドクは、実際のところ、それがなんだったのかを知る人は少ないが、かつて火星の女王様に助けられたことをずっと義理堅く恩義に感じている。

 彼は火星中心に活躍しているのだが、自分で勝手に女王様の保護者のような立場に立ちたがる。

 女王ヘレナも、その「事実」は認識しているので、マ・オ・ドクの商売には、まず介入はしない。

 ただし、ヘレナ自身が「魔女の中の魔女。化け物の中の化け物。しかも魔女も化け物もはるかに超越」する『何か』であると自認しているので、(ヘレナは『化け物!』『怪物!』『この魔女め!』とか言って罵られることが、大昔から大好きである。)特に、マ・オ・ドクに何かやってほしいとか要求した事はない。

 ブリューリの干渉が無ければ、この宇宙で彼女にできないことは事実上ほとんど何もないのだ。

 気に入らなければ、彼女の意志の力だけで、この太陽系ひとつをアッと言うまに消滅させることなど、ヘレナにとっては、いとも簡単なことなのだ。

 付け加えて言えば、ダレルが勝手気ままに行動したり発言したりできること自体が、すでに決定的に例外事項なのである。

 ダレル本人は、それは自分が強固な『不感応人』だから、と考えてかたずけてしまっていて、全くその自覚がないのだけれども。

 また、ブリューリが手綱を握ってきているおかげで、火星に於けるヘレナの行動が、ある種の社会性を得ていることも、実は否定できないのである。

 が、問題なのは、ヘレナ女王と、アマンジャの関係なのだ。

 この二人(と言ってよければだが)は、これまでずっと、つとめてお互いを無視してきた。

 公にそう言っているわけでは無いにしても、現実にそうとしか言えない間柄だったのだ。



『アマンジャさん、生きてますよね。』

 アーニーが確認を入れた。

『分かってるんだろう。生きてるさ。なんとも表現しにくいけれどね。』

『ええ、よかったです。いまヘレナは、この惑星の反対側に位置しています。誘導しますが、もしご希望なら、あなたの意識をしばらく無くして差し上げましょうか?』

『いいや、遠慮しとく。こんなチャンスめったにないからね。しかし、あえて聞くけどさ、なんでこんなめんどくさい事するのさ? あんたの力で、女王さんを引っ張り上げればいいんじゃないのかい?』

『それが、できないんですよ。』

『どうして?』

『わかりません。』

『はあ?』

『ヘレナとブリューリは、空間に張り付いています。これはビューナスさんが開発した技術なのかどうかはわかりませんが、まるで超強力接着剤で空間にくっついているような状態で、アーニーには、どうしても剝がせないんですよ。』

『そんなこと、ある訳ないだろうに。』

『でも、そうなんですねえ。』

「じゃさ、一歩譲ってそうだとしてだ、あたしに何ができるって言うのかい?』

『さて、そこですよ、アマンジャさん。あなたが普通の人ならば、こんなことアーニーもしません。』

『また、やなことを言うね。あたしは普通の人間だよ。怪物とかじゃあないさ。』

『ええ、怪物じゃないですが、でも普通の人じゃない。だって、あなたは、ヘレナの妹さんだからです。』

『おっと、え? なんで、そんなばかなことを。』

『いえ、つまりあなたは、もうひとりのヘレナそのものなんですから。でも、ヘレナに双子はいない。それは、はっきりしています。』

『じゃ、なにさ。クローンだとでも? ばかばかしいねえ。』

『まあ、そうですね。あなたは、ヘレナの完璧なコピーなんですよ。それも飛び切り上等のですよ。ヘレナから分裂したヘレナ自身です。ヘレナになにか異常事態が起こったときに、ヘレナの本体が乗り換えるためのスペアなんです。普通の人間ならありえない、細胞分裂してできた個体です。顔は故意に変えてますがね。それはお面を被ったようなものです。すぐに元に戻せますよね。アーニーは、こうした事態について、かつてヘレナからの命令を受けていました。あなたは、ヘレナ本体の指示で、ここまで来たわけですよ。』

『それは・・・・、そう、姉が、言ったのか。なら仕方ないねえ。』

『はい。しかし、どう考えても、問題があります。ヘレナの本体は、ブリューリの力で、本来の能力がほとんど使えません。外に放出できる力が、大幅に弱くなっていますから。なのでよほど接近しないと、ヘレナ自身があなたに乗り換えることは、恐らくできないでしょう。しかし、ブリューリ自体も動けなくなっているのですから、あまり妨害ができないのではないかと思うのです。体を直接くっつけるほどまでに接近したら、きっと移動は可能だとアーニーは考えています。そうすれば、ブリューリの魔力からも解放されると。でも、あなたはいったい、どうしたいのですか?』

『追放。』

『え?』

『彼女を宇宙の彼方に追放するのさ。体ごとね。もちろん、ブリューリも一緒にね。そうすれば、この太陽系の大きな不安が取り除けるだろう?しかし、空間から取り外せないとなると、やっかいだからね。』

『アーニーは、ヘレナを救出するのが役目です。それには同意できません。』

『協力してほしいねえ。アーニーさん。人類の未来のためにも。』

『それは違います。ヘレナがいなければ、上手い具合に新しい地球人類は生まれませんよ。』

『生まれるさ。実際生まれるんだ。でも、生まれてもこのままだと、いずれ食べられちゃうだけだよ。いささか趣味的だけだけれども、食料の生産なんだよ、ブリューリさんの目的はね。おまけに姉は、ブリューリからは多分うまく解放されないよ。あんたの考えていることはわかるが、あたしはダメだと思うね。おそらく今の状態では、ヘレナ本体が、ブリューリ細胞をそのまま持ってあたしに乗り換える。それじゃ意味無いだろう。今、姉はあいつにすっかり操られてるんだ。だから、あたしを呼び寄せてるんだよ。わかるだろう? それにね、あのビューナスは、今は金星人の事でもう頭がいっぱいさ。単純な方法で、上手くだませてるようだから、ここがチャンスなんだ。頼むから協力して、なんとかヘレナを追放させてほしいな。ダレルとか、ややこしいのがすぐ来るだろう? それまでに決着をつけたいんだ。『空間磔』にくっついたままでね。それは、きっと今のあたしなら、できるからさ。そのために、あたしも危険を冒して、大金を使って、その技術を手に入れたんだからね。未来の地球からさ。『エビス号』は、いまその機械を乗せて、そのために待機してるんだ。』

『それでは、未来が変わるのではないでしょうか?』

『彼らは、未来を変えたがっている。このままでは未来の地球も、姉とブリューリに食い尽くされてしまう。そんな未来は必要ないのだろうねえ。ま、もっとも綿密な計算はしたらしいけれどね。地球の人類はこのまま生まれて、しかも滅ばさずに済むようにね。あたしにゃ、よくわからないけれどね。未来は一つじゃない。多くの選択肢があるんだそうだよ。あんたなら解ってるんじゃないのかい? だいたい、関わっているご御仁が、並じゃないんだ。まあ、絶対秘密と言われてるがね。それにね、あたしゃヘレナ自身になっちまうなんて、おまけに人喰い怪物になるなんて、まっぴらごめんだね。』

『アーニーは、ヘレナの指令を実行するだけです。あなたを、あそこに連れてゆく。ヘレナの本体が、貴方に転移する。ブリューリとはさようなら。きっとうまくゆきますよ。それだけです。あなたこそ、それについて、静かに協力してください。あなたはヘレナに従う責任があるのです。』

『ほう、あんた、実はまだどうなるか、自信がないんだ。コンピューターさんなのに。それか、まだ何か大きなことを、あんたもやはり隠しているのかもしれないね。』

『む。そのいやな言い方、やはりヘレナに似ています。いいえ、きっと大丈夫です。問題点は間もなくすべて解決します。あなたがヘレナのところに到着する頃にはです。』

『ほう、ちなみに、解放した後はどうする予定なのかい?』

『ひとまず王宮に帰します。』

『それじゃあ、結局また、大勢喰われるだけさ。いいかい、歴史がそれを証明してるんだからさ。さあ、あんたがあきらめて、ここで、決着着けようじゃないか。』

『いいえ、駄目です。』

『あんた、ビューナスか誰かに雇われてないかい? 本当の事をぶっちゃけ言いなよ。』

『じゃあ、あなたからどうぞ。』

『いやいや、あたしは、ヘレナの妹だよ。あんたの方が先だよ。』

『あなたには、アーニーに関しての何の権限も与えられてません。』

『ああ、いいよ。じゃあ、あたしは『エビス号』を呼ぶ。もともとそのつもりだったんだから。それでなんとかするさ。ヘレナは警戒するだろうが、仕方ない。』

『その前に、ここだったらもう、あなた死ぬかもしれませんよ。その宇宙服では。もしも、アーニーが保護をやめたら。』

『あたしは、もし死んでも、クルーが実行するから大丈夫さ。大体あたしがなんの準備もしてないなんて、そんなことが、あるわけないだろう? いいかい、あんたは、ヘレナの指令に逆らうことになるんだよ。もしもあたしを連れてゆかなかったら。』

『やっぱり、ヘレナそっくりです。いやな人です。』

『悪かったね。』

 アーニーは、多少危険でも、少し早めにヘレナのところにまで、アマンジャを連れてゆくことにした。

 実際、ダレルやマ・オ・ドクの介入が入れば、やはりめんどくさいから。

 ところが、その、ダレルよりも、リリカよりも、マ・オ・ドクよりも、そうしてビューナスよりも、さらにやっかいなものが、どうやら介入してきていたのだった。

 

               ***** *****
















 























  

 

 

  


























****** 第一・第二王女様へのインタビュー ******

 

作 者   「本当に、罪深きこの私は、まだこの世で生きていていいのでしょうか、王女様?」

第一王女  「もちろん。ちゃんとお話を書いてから死になさいませ。」

第二王女  「そうですわ。お姉さまのおっしゃる通りですわ。」

作 者   「まだ、先を書いたり、筋が通らないのを直したりしてたら、十年はかかりますよ。」

第一王女  「それはもう、五十年でも百年でも、よろしくてよ。」

作 者   「それでは、あなたのような怪物になります。」

第一王女  「まあ、うれしいわ。最高の誉め言葉だわ!」

作 者   「はあ、やれやれ・・・・やっぱ、他の人に相談します。」






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