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わたしの永遠の故郷をさがして第二部 第三十七章 

『ほら、御覧なさい。愚かな地球人さんたちが、まだわたくしに抵抗しようと企んでいるの。おや、これって、悪い宇宙人の常套句よねえ。困ったもんだな。』

 ヘレナの意思が、お付きに乗り移っていりるリリカの意識の中でぼやいている。

『わたくしとしては、地球人類の一員である妹たちに活躍してもらって、この地球世界に、地球人類の歴史上初めての全体的平和をもたらそうと思っているのに、それってとっても、お嫌らしいのね。』

『それは、火星人も同じだったのでしょうか?』

 リリカの精神が、その、素朴な質問をした。

『ああ、そうよね。確かにそうだった。火星にもたくさんの、お国があったの。指導者たちにはそれぞれの利益とか権益とかがあった。まあ、人間は当然反発するわね。無駄なのに。それでも頑張るの。そこは人類のいいところでもあるの。だって、火星人類だって、わたくしが手塩に掛けて育てたのだも。優秀であって当然なのよ。地球人類は、さらに磨きをかけて作ったのだから、もっと優秀なはず。あら、貴方にはごめんなさい。だから、まあ優秀な息子や娘たちが、わたくしを超えようとして頑張る姿は、けっして悪い気持ちはしないのね。でもね、もうそろそろ、自分たちでよく考えて、りっぱに平和を達成できそうなものを、その優秀な頭脳で理解はしているくせに、なぜだか実現出来ないでいるの。これじゃ、育てたわたくしがかわいそう。もういっぺん、全球凍結させて、最初からやり直そうかとも思っているけど、残念ながら、人類の余命は、そこまでは持たないかもしれないでしょう? まあ、仕方なしなのよ。』

『うまくゆかなければ、そうした手段もお考えになるのですか?』

『まあ、ね。でも、今は今の事よ。ほらほら、来たわよ。また実況してあげるから、聞いてなさい。』

 アブラシオが急遽報告してきていた。

『弾道ミサイルが、三機、いや五機、こちらに向かっています。核弾頭装備。無茶苦茶です。これでは、タルレジャ王国本土が、直接被害を受けます。・・・』

『ばかね、本当に世界をほろぼすおつもりなのかしら。”アニー核弾頭無効化させなさい”・・・。『この無駄な示威行為が、人類の弱点ね。でも、習性だから仕方ないの。』・・・”ぶつかるって、ミサイルさんも痛いだろうから、そのあたりの海に、やんわり落としなさい。ちゃんと後で回収できるように”・・・『ね、あんなの海の中にあったら、お魚さんたちに迷惑よね。』」

 核ミサイルは、無為に海中に次々に落ちていった。

 それから、ヘレナ第一王女(火星の女王様)は、アニー(火星時代にはアーニー)経由で、タルレジャ政府に、アブラシオを攻撃するように命じた・・・。



 休憩時間。アマンジャは、第九惑星を眺めながら、軽い食事を取っていた。

 アマンジャにとっては、作業自体はまったく、苦にもならなかった。

 この光景にも、精神的なショックはそう受けることはない。

 しかし、周囲の人間たちは、それなりに、かなり疲れているように見える。

 けれども、それ以上に、このものすごい光景には、実際、相当ショックを受けているに違いない。

「あんた、大丈夫かい?」

 隣で作業をしていたマヤコに、アマンジャは問いかけた。

「はあ、これって、映像でしょう? それにしても、なんだかすっごい迫力だな。見えない圧力というか、なんというか。しびれてしまいそう。また動けるかどうか、自信ないです。」

 実際、惑星は自分では光れない。太陽の光の反射でしか見る事が出来ない。

 可視光に関しては、そのはずだ。

 第九惑星は、太陽から非常に遠くにあるから、火星からでも肉眼で見るのは非常に困難だ。

 ただし、金星の十倍は質量がある巨大ガス惑星だから、可視光以外の強力な電磁波が出てくる。

 アマンジャたちの使っている宇宙服のヘルメットを通すと、肉眼では見られない惑星の姿が浮かび上がってくる。

『まあ、ちょっとした拷問というか。ビューナスは、いったい何考えてるんだろうか。』

 そんな、アマンジャに、アーニーが呼びかけてきた。

『なんで、こんなことをするのか、と、アーニーは考えました。あなた方が飲んでいる飲み物には、一種の鎮静剤が含まれています。それと、さっきのババヌッキのジュースに入っていたのと同じ成分も。』

 アマンジャは、思わず飲み物を吹き出しそうになった。

『忘れてたよ。そんなこと。』

 アマンジャは思った。

 なんとか、口には出さなかったが。

 マヤコが、アマンジャを見つめている。

「まあ、あれから考えました結果、あなたの飲んでる分は、うまいこと処理してます。これも人体実験なんでしょう。おそらく『光の人間』を作り出すためのですよ。第九惑星が放出する電磁波や放射線が、光人間の作製に大いに関係があるのでしょう。そこは、ビューナスが作った、効率よく、歩留まりよく、まっとうな『光人間』を作り出すための実験装置なんだと思います。実際、そこから帰ったはずの人間の半分は、行方不明となってしまっています。何かあったはずですが、意図的にその人間の存在が消されていて、まだよく事後の調査ができないです。あなたも、そこで『光人間』になりますか?』

『まさか!』

 アマンジャがつぶやいた。

『まあ、そうですよね。で、さっそくですが、休憩後の作業中に、事故を起こします。あなたは、ケーブルから切断されて、その惑星方向に落下します。で、行方不明となります。それで、それからですが・・・』

「『まさか』って? どうかした?」

 マヤコが、びっくりして問いかけてきた。

「ああ、まさかの風景だね、と。」

「そう、そうですよね。ほんとうに、まさかの風景!」

 アマンジャが答えた。

『ええと、いいですか? それからですが、アーニーがあなたの周囲を保護しながら、惑星の内部に降りていってもらいます。慎重にやります。だから時間が掛かります。まあ光人間にはならないと思いますが、ヘレナのところに到達するのに、たぶん三日はかかります。その後は、まだ考えていません。』

「はあ?」

 再びマヤコがびっくりして、アマンジャを振り返った。

「あの、大丈夫ですか? ルルカさん?」

「ああ、いやあ、ちょっと昔の事を思い出していた。すまんすまん。」

「ああ、ああ、それはありますよね。ははは・・・」

 ヘルメットの中で、怪訝な顔をしているマヤコが見えるようだ。

 といっても、その顔さえ、アマンジャはまだ知らなかったが。



「なんとも、物凄い宇宙船だ。」

 ダレルがつぶやいた。

「まったくじゃ。」

 リリカ(複写=アンナ)が、文句なしという感じで同意した。

「不必要に大きい。」

 ダレルが追加して言った。

「女王なら、やりそうなことだ。」

 リリカは、多少は面白そうに、また、でも、もっと不思議そうに、ダレルを見ながら言った。

「そんなに、お母様が憎い?」

「憎くならない理由があったら、教えろよ。」

「まあ、孫であり、あんたがお見通しのように、アンナでもある”わい”が、いえ、私でも、そこまでは言いにくいのに。」

「君は、精神構造が複雑になりすぎている。無理もない。」

「はあ? また、そんなこと言って。」

「言われたくなければ、もう話すな。」

「もう!」

 リリカ(複写=アンナ)は、ダレルのご機嫌を取るのは諦めて、そこから離れて行った。


「アブラシオさん、あんたしゃべれるんだろう。何か言えよ。」

 指令室と思しき場所で、すこし不敵に、ふんぞり返りながらダレルが尋ねた。

「どうして、そうお思いでしたか?」

 どこからという事もなく、女性の声がした。

「あんたが、アブラシオさんかな?」

「そうですよ。どうして私がしゃべるとお考えでしたか?」

「そりゃあ、アーニーが、あんたを競争相手みたいに言っていたからね。」

「なるほど。その通りです。でも、私は、アーニーさんを競争相手などとは、考えておりません。」

「競争相手にも、ならないと?」

「その意味は、どう解釈したら良いですか?」

「君の方が、優秀だ、という意味でね。」

「いえいえ、私たちは、よって立つ、その基礎が全く違います。アーニーさんは、太陽系の天体そのものが部品というか、素材です。かれは星そのものから出来上がっていて、だから機械的な本体がありません。お星さまが、ヘレナさまのお力で、独自の意思を持ったようなものです。私は、宇宙船自体であって、限定された本体を持っております。この宇宙船が壊れれば、私は崩壊します。」

「能力的にはどうなの? 計算はどっちが早いの?記憶力は?思考力は?」

「一般的に言って計算は、私の方が早い。体が小さい分だけ。でも、ほんの小さな差です。記憶力は圧倒的にアーニーさんが大きい。太陽系の多くのお星さまが、記憶領域なのです。思考力は、さあ、それは判りません。非常に哲学的な問題です。」

「哲学的? ふうん。太陽も、アーニーの母体なの?」

「太陽は、わかりません。そこはヘレナ様しか、ご存じありません。」

「だって、太陽こそ、太陽系のほとんどなのに、だよ。」

「ですが、わかりません。直接尋ねてみてください。あなたは、ヘレナ様のお子様です。教えてくださるかもしれませんよ。」

「憎まれてるだけだ。」

「では、一つ真実をお教えいたしましょう。ヘレナ様の本体は、多くの人間に宿り、多くの子を作りました。その中で、最も愛されているのが、貴方なのです。」

「はあ? またおかしなお世辞を言うコンピューターだな、君は。」

「事実です。あなたは、あなたがご自分で思っておられるより、はるかに、それ以上の存在です。いずれそのことが理解できる時が来ます。」

「何時?」

「この世界が終わる前に。」

「はあ? まったく、本当におかしなコンピューターだ。もっとよくわかるように、説明してくれないかなあ。それでは、最近人気の月刊誌でうわさの『超古代』の火星の文書みたいで、訳が分からない。」

「いいでしょう。また、あとで、お話します。」

「ほう? 何時?」

「帰りがけにでも。」

「ほう、それは良い。是非そうしよう。で、いつ第九惑星に到着するの?」

「あと、火星時間で、まる三日半は、かかります。でも、もしかしたら、攻撃を受けるかもしれない。」

「ふうん?」

「何か?」

「いや、いいよ。」

 ダレルは、もう、少し別の事を考えていた。












































 























 



 


 

























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