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わたしの永遠の故郷をさがして第二部 第三十章 

 リリカ(複写=アンナ)は、王宮全体の警備監視を行っている第一警備室に到着した。

 部屋に入る前に、彼女は携帯通信機でダレルに連絡を取った。

 しかし、ダレルは通信に出ない。

「こりゃ、おどりゃあなにしとるんじゃ。早よう出ろ!くそダレル、てメぇ。」

 リリカ(複写=アンナ)が毒づいた。

 ダレルは、ちょうど空間を滑っている最中だったのだ。

「くそ、あとじゃ。」

 リリカ(複写=アンナ)は、コンピューターの認証を受けた。

 実はこうした細かなデータも、最終的にはアーニーがすべて管理していたのだが、そんなことは女王以外誰も知らないことだ。

「こんなところで、万一変身でもしたら、おおごとじゃ。先にわいの研究室に入りてぇが、そうもゆかん。」

 リリカ(複写=アンナ)は、そうつぶやきながら、警備室に入った。

「警備主査は?」

 彼女は、責任者を呼んだ。

「すみません、バタバタしていて。」

「そうでしょうね。で、どうなっているの?」

「現れたブリューリ様は二体です。これまでに身を呈した職員は三十五人。カレル大臣も襲われましたが、異状はなかったようです。首相閣下も襲われたとか・・・ただ、ブリューリ様は、閣僚はお食べにならないとか。」

「ええ。で、いまは、どこにいる、いえ、いらっしゃるの?」

「大臣ですか?」

「こほん。ブリューリ様のほうです。」

「いまは行方がわかりません。あなたが襲われた場所の天井の換気口から出て行かれて、建物の外にお出になったようです。もう一体のブリューリ様はすでに、先に戸外に出られた模様です。」

「閣僚の方の中で、いま所在のはっきり分からない方は、いますか?」

「ええ、三人。辺境大臣と労働大臣、それと副首相様です。」

「ダレルはいい。アンベ=ハウとカカルを探して。」

「ええ、カレル大臣からも指示されていますから。しかし、通信にも応答されません。」

「ふうん。まあ、怪しい事ですね。じゃ、がんばって。」

「あ、はい、了解いたしました。首相閣下。」

 火星では、基本的に敬礼などの習慣はない。警備主査はさっさと行ってしまった。

 そこに、通信機が鳴った。

「はい、リリカ。」

「いやー、悪い悪い。ちょっとブリューリに襲われてね。」

 ダレルだった。

「襲われた? 実は私もです。何かされた?」

「いや、作業車の中だったからね。捕まえたよ、一匹。」

「え?それは、すごい。今どこ?」

「秘密研究所の密閉室の中。」

「少し後で行く。あのね・・・、」

「はい?」

「私、それとアリーシャも、たぶん、ブリューリ細胞を植え付けられた。いつ変身するかわからない。私たちをまず拘禁しなさい。準備しておいて。」



 アマンジャは、金星に来ていた。

 面会できる可能性は、けっして高くはなかったが、ビューナスへの目通りを求めて、広くて豪華な待機室で、おとなしく、じっと待っていた。

 逮捕される可能性だってある。

 この空中都市全体が、ビューナスの居城、つまり金星の首都なのだ。

 待つこと二時間。

 彼女は執務室に呼び出された。

 ビューナスは、女性形態だった。

「いらっしゃませ。大宇宙海賊さま。」

 ビューナスは手を差し伸べた。

「よくも、堂々と、おひとりで、ここまでいらっしゃいましたね。ま、もっともあなたの、『惑星クラス高性能分子破壊砲』が、ここを狙っているのでしょう?」

「この仕事は、度胸だけが頼りだからね。」

「まあ、お掛けください。お飲み物は?」

「やめとくよ。時間はかけないから。」

「まあ、そうおっしゃらずに、せっかくなんだから、温泉に漬かって行かれたらいかがですか?」

「そうしたいがね、水爆人間にされたら大変だからね。」

「あいかわらず、情報通ですねえ。で、なんですか?」

「女王が消えた。どこに行ったか、あんた知らないかな?」

「まあ、どうして、わたくしが知っているだろうなどど、お考えになったの?」

 アマンジャは、ソファの上で身を乗り出した。

「あたしのみるところ、火星の実権は、あんたが握ろうとしている。「青い絆」は、事実上あんたの秘密組織だろう。」

「まさか。もうアマンジャさんたら、びっくりするようなこと言わないでください。」

「そうかい、まあいい。まあ、そうだとしてだ、リリカは、もう、ビュリアを通じて、事実上あんたの部下になったし、ダレルは、そのままでは、まともには言う事は聞かないだろうが、とりあえず敵じゃあない。あんたの意向に沿った動きをしてくれる。今のままなら、火星は遠からず壊滅的な状態になる。最終的には、リリカたちを使って、火星は回りまわってあんたの支配下に入る。問題はヘレナ女王と、怪物ブリューリだ。適当に暴れまわって、うまく消えてもらいたい。」

「ほう・・・・。」

「今回、ダレルが二人をどこかに追放した。ダレル本人は、女王とブリューリがどこに飛んで行ったか、掴んでいないようだが、あのややこしい、とてつもない大砲だけど、あれあんたが作ったものだろう? あたしのは壊すだけが専門だが、あれは違う。細かい事はわからないが、何かの方法で、あの武器の作り方をあんたはダレルに教えた。たぶんダレルは自分が思いついたと思っているがね。で、このあと人間ブリューリは爆発的に繁殖して火星を喰いつくす。でも、どこかで止めなきゃならない。止められるのは、ブリューリ本体か女王だけ。この二人を確保しておくことがあんたにとっては大切だ。ただし、確保する方法なんかわからないよ。でも、液体だから密閉することは意外と簡単だろう。」

「またまた、もう、夢のようなことを。」

「そうかな。あたしはねえ、別に火星の味方でも、金星の味方でもなく、単なる海賊だよ。しかし、考えても見てごらん、いかにリリカやダレルが天才とは言え、五歳頃には、二人ともとてつもない発明をし始めたろう。リリカの後ろには女王がいる。あの子の頭の中は、女王が握っていたから、生まれてすぐにどえらい発明をし始めてもおかしくはない。でも、ダレルがそれに負けない才能を発揮するのはあまりに不自然だ。自分が見たことも聞いたこともない情報を持ってるはずがない。でも、ダレルにはそれがあった。強固な不感応者であるにもかかわらず。小さいころから何でも知っていた。あまりに不自然じゃないかい。」

「そうなの。でも、それと私とは、関係のないことです。第一そんなことは、ヘレナ女王さまが、すべてお見通しになるでしょう。」

「まあね。ただ、ことダレルに関する限り、ヘレナは超親バカだからね。いいかい、もしあんたが女王の行方を掴んでいるのならば、これ以上火星におかしな介入はしないでくれないかなあ。あたしが生きてる間だけでいいからさ。」

「ほう、でも、どうしてですか?」

「売り上げが減って敵わんからだよ。決まってるだろう。こっちの商売がうまくゆかないんだ。火星に混乱してもらっちゃ困るんだよ。あたしは、火星の繁栄のおこぼれを頂いて稼いでいるんだ。ここでおかしな滅亡してもらっちゃ、商売あがったりさ。」

「ほう、で、見返りは? 」

「はあ?」

「それはそうでしょう。ギブアンドテイクは外交の常識ですよ。あなたが生きている間、あと何年か知りませんが、あなたに何らかの利益をもたらそうとするなら、私にそれなりの見返りがなければ。」

「そうだね。じゃあこうしよう。あたしはあんたには、あの、あたしの大砲は向けない。あんたは、あんたの商売の利権の一部を回してくれるってことで。」

「ふうん。ちょっと恐喝に近くありませんか?」

「海賊だから、当り前さ。」

「なるほど。そういわれると、ごもっともですね。ええ、いいでしょう。どのくらい回せばいいの?」

「あんたの銃利益の5%の相当の取引。」

「そんなむちゃな。つぶれます。わたくし。」

「いやいや、そこからまた利益が生まれるから、還元してあげる。」

「どのくらい?」

「三割でどうかな。」

「それで、金星に対して中立を守ってくれる?」

「あたし一代はね。」

「ふうん。まあ、じゃあそうしましょう。」

「よかった、あとで暗号契約書作らしてもらうよ。」

「ええ、どうぞ。」

「よし、これで、ついでの仕事は済んだ。」

「本命は?」

「新しくできた、『スーパー・スぺース・超空間ワールド』ってのを見て帰りたいんだけど。」

「まあ、素晴らしい。ぜひ見て行ってください。今、金星の子供たちも、親たちも夢中なのですよ。」

「逮捕されちゃ、かなわないからね。あんたのお許しを頂かなくっちゃ。」

「ええ、大丈夫です。ビップ用の入場券をあとで差し上げましょう。案内人もお付けしましょう。」

「いや、入場券だけでいいよ。一人が好きだから。」

「まあ、残念。どうぞご自由に。」

「ありがと、じゃあね。健康でね。」

「あなたもね。」

 アマンジャは出て行った。

 ビューナスの前に、ふらふらっと、小さな光が出てきた。

「何しに来たのであるかな、なのである。」

「何しに来たのかなあ、ですね。」

 アレクシスとレイミだ。

「さてねえ。何か掴んでるかなあ。きちんと普通に帰るかどうか、確認してね。」

「了解なのである。」

「了解だったりもしますがねえ、ですか。」

 二つの光は、すーっと消えてしまった。


 どうやら、王宮も、王都の中も、それ以外の都市でも、動きは終息した。

 やっと、ブリューリ様の今夜のお食事は、終了したようだった。

「辺境大臣様と、労働大臣様、それから嫌ですが、カレル様も、隔離病棟に強制収容して。理由は、なんでもいい。変身していたと思われる住民も、確保しなさい。まあ、それで収まるとは、とても思えないけれど。あすは、火星人全部がブリューリ様になったりするかもしれないな。まあ、それじゃあ食べられる相手がいないか。他に変わりはなかった?」

 リリカ(複写=アンナ)は、応接室のアリーシャに命じた。

「じゃあ、済んだら、あなたは、私と一緒に来て。私たちも隔離する。さっきの車出してね。その部屋で合流しましょう。」

「はあ・・・・・了解です。」

 





















































































































 



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