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わたしの永遠の故郷をさがして 第二部 第百一章

************   ************


「くそ、悪夢だ。」

 会議場に入りながら、ダレルが言い捨てた。

「まあ、まあ。でも、確かに、まだ意味不明なところがあるのう。あとで、ビュリア様にまた会わなければならんのう。」

 リリカ(本体=アンナ)が、なだめた。



 一方、ブルとジュアル両博士も会議場の席に着こうとしていた。

「実に不愉快ですなあ。」

 ブル博士がつぶやいた。

「そうですか?事態は火星も金星も好転していると見た。悪くないでしょう。」

「どこまでが現実で、どこからが夢なのかが問題ですな。お、あれは、金星大使と随行者・・・」

 すらっとした背の高い、しかも高級スーツと完璧に一体化したような人物だ。

 リリカとダレルが、さっそく挨拶に向かっているのが見えた。

「まあ、お二人が済んだら、行ってきましょうか。」

 ジュアルがつぶやいた。


 

「大使、おいで頂き、本当に光栄です。」

 リリカ首相がまず挨拶を述べた。

 二人は握手し、次いでダレルも同様に挨拶をした。

「いやあ、突然ブリアニデス様から、『他は全部ほっといても行け』と言われましてなあ。先日は、『絶対行くな』でしたから、完璧な方向転換です。ははは。あなた方、何かやりましたな?」

 大使は、ニヤッと笑いながら言った。

「いえいえ、特には何も。まあ、もしお時間があるのなら、あとで王宮に寄りませんか?」

「はあ、まあ、内容次第で・・・ははは。」



 首相と副首相が席に着いたのを見て、ジュアル博士は立ち上がり、大使のところに行って話を始めた。

 ブル博士は、なんとなく、その様子を眺めながら考えていた。

「まあ、どうやら、我々は幽霊か未来人かなんかに操られているらしい。これが現実ならばな。」

 手元には、データが入った丸い球がある。

 リーダー装置に入れた。

 博士以外の人間には、けっして開けない。

 複製は不可能だ。おまけに、ここでしか見ることは出来ない。


 まあ、一晩でこれだけ事態が動いたのなら、それはそれでなかなかのものだがな・・・・。

 データの中の資料を確かめてみる。

 これまでの経緯に関する資料が多数。

 昨日までの状況に、付け加えが入っただけだ。

 大使を念頭に再作成したのならば、念の入った事だ。

「うん、これは何だろう? おおお!」

 『火星及び金星からの惑星外移住に関する討議資料 第一回分 ”極秘”』

 恐ろしく「分厚い」資料だ。

「ほう、早いな。よほど優秀なスタッフがいると見える。」

 そうして、一枚ものの、本日の『会議要領』が入っていた。


 『1 火星首相挨拶』

 『2 状況概説・・・首相室秘書官』

 『3 惑星外移住検討会議の設置について』

 『4 そのほか』


 さらに、『出席者一覧表』があり、『惑星外移住検討会議の設置について ”極秘”』という資料が入っていた。



 **********     **********



 他の「お茶会メンバー」が帰された後も、リリカ(本体=アンナ)とリリカ(複写)、そうしてダレルと元女王へレナの体、そうしてなぜかギャレラ、さらにジャヌアン、だけが残されていた。

「ブリアニデスに知られるとまずいのですがね。」

 ギャレラが言った。

「あなたが言わない限り、誰も知り得ないわ。同じ時間に帰って行くのよ。問題はない。いくら時間を使ったって問題にならない。歳は取るけどね。」

 ビュリア(=別の女王へレナ)が答えた。

「さあ、あなた方が、この先の世界のカギを握ることになる。わたくしは別に、ああしろこうしろ何て言う立場じゃないわ。機会を作ってあげてるだけよ。」

「私は関係ない。」

 ジャヌアンはそっけなく言った。

「まあ、そう言わずに。未来の敵は今の友よ。それにね、いいこと、あなたが未来で知っている女王は、わたくしじゃない、という可能性をあなたは知ったわけよ。違う?」

「まあ、ね。でも、あなたである可能性も大いにある。」

「違っていたら?」

「そこは、だからこれから確める。ここは通過点に過ぎないわ。あすは、もう5千年前の世界に入っているかもしれない。大体女王が複数いたとして、その力関係も分からない。あなたはただの下っ端かもしれないでしょう。」

「ご挨拶ね。まあいわ。でも、私が得ている情報からも、あなたが得ている情報からも、火星も金星もこの文明で滅亡する。そうよね?」

「まあ、そこは認めてあげる。わたしの現代地球文明が生まれる前の、最後の文明よ。どちらもね。」

「火星は再興するのか?」

 ダレルが尋ねた。

「ううん。どうしようかなあ。そこは回答拒否。」

「でも、一連のお話では、火星人は生き延び、ダレルとリリカ、わいらじゃないかもしれんが、が、地球を侵略する、んじゃろう。わいらが勝つなら、火星の再興がなされる可能性が高かろうに。のう?」

 リリカ(本体=アンナ)が言った。

「ああ、そうさ。そうなるね。」

 ダレルが答えた。

「わたしかもしれませんよね、そのリリカは。」

 リリカ(複写=精神)が突っ込みを入れた。

「確かにね。」

 元女王ヘレナの体が言った。

「わたくしが復活する可能性も、実は否定できないのよ。ビュリアさんは言わないけれども。ここだけのお話だけれど。もし、女王様がお帰りになったらば。」

「ああ、ややこしい、ややこしい。よろしくて、みなさん。今問題は、今のことなの。そこだけにしましょう。問題は、火星人を生き残らせること。文明力を維持しながらね。そうして、金星文明をどこかに移植すること。地球じゃなくてね。」

「でも、それでは、あたしにある、さっきの記録と合わなくなるよ。金星人の生き残りは、ほぼ全員、地球が受け入れている。火星人の地球移住はほんの少数にとどまり、あとは火星のどこか、か、他の衛星などに移住している。」

 ジャヌアンが指摘した。

「そうかしら・・・」

 ビュリアが意味ありげに言った。

「え?」

 皆がビュリアを見た。

「大いにあり得るお話で、全く矛盾しないわ。で、まあ、そうしろなんて言わないけれども、正式な歴史には残らないとしても、ねえ、ギャレラさん、いえ、ニコラニデスさん、あなた、地球を支配してみない?」

「ええー!」

 周囲が驚いた。

 しかし、本人は、まったく反応をしなかった。

「あのね、ブリアニデスは、確かにわたくしの、子供なのよ。詳細は、まあ、言わないけどもね。ただ、あの子・・・、いい子なのよ。あれで。本当にね。でも、ちょっと精神的にもバランスを欠くの。地球を手に入れたいという欲望から離れられない。それも未来永劫ね。そうそう、ニコラニデスさん、あなたも、わたくしの子よ。間違いなくね。ただね、あなたは、考え方のバランスがいい。それに、多分終末にこだわらない。」

「たしか、あなたには、「終わりがない」、と。」

 ダレルが尋ねた。

「そう。確かにね。でも、あなた方お二人も、この宇宙が存在する範囲で「不死」でしょう。」

「それは、秘密ではなかったのかな?・・・無理やりやっといて。」

「まあ、いいじゃない。ブリアニデスはその技術の存在を知っている。ニコラニデスさんもね。」

 行動隊長は無言だった。

「その技術を、ぜひ確保しておきたいと、ブリアニデスは考えている。彼は、少し臆病で、ああ、そう言っては不当よね、普通の人間並みな意味で、「死」を、とても恐れているわ。そこで、「ある切り札」に、極秘で、その確保を指令している。ビュリアじゃないわよ。違う? ニコラニデスさん?」

「知らないな。」

「そう。まあいいわ。なので、どっちにしろ、よく考えてみたらいかが? ね、ニコラニデス様。」

「兄はどうするの?」

「殺したりなんかしないわ。ビューナス様の所に行かしてあげるんだから。それこそ、永遠に死なないところよ。願ったりかなったりだわ。あなたは、その代わりに苦労する。ものすごくね。「不死化」はさせてあげてもいい。ただし、このお二人が了承するなら。どう?」



  ************   ************



 大嵐になった。

 部屋の窓からも、外は真っ白にしか見えない。

 何も見えない。


 しかし、マヤコもウナも、何者かが、窓の外からじっと自分たちの様子を窺っていたことを、知る由もなかった。



 ************   ************

 

























































  **********  幸子さんとの会話 6 **********



「やましんさん、きのうお家にいなかったですう。」


「ああ、お腹の中の管を入れ替えに病院で作業してもらってたし。それ以前に、あまりに暑くて、体がのびてしまっていたしね。」


「え?やましんさんって、アンドロイドかロボットだったんですか!? こわれかけの・・・」


「いやいや、そこまで行きません。こわれかけは、そうかも。」


「はあ・・・・それに今日は、すごくせわしなく動いてる。油切れですか?」


「まあ、油切れなら、逆に動かないでしょう。一週間くらいは、おトイレを連れて歩かないとね。」


「じゃあ、幸子が持ってついて行きます。」


「いえ、目立つので、いいです・・・」


  















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