『第八話 レッツクッキング!』
「~♪~♪」
私は鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。
なんでかというと、今日の授業はラク…じゃなくて楽しいものだからだ。
料理に華道!
室内でやるものだけ!!
勉強とかつまんないものでも、武道とか疲れるものでもない!!
この日を待っていたー!!
キッチンのドアを開けると、もうリョウさんは居た。
「杏樹ちゃん、来るの早かったねー。他の人からは、よく授業から逃げるって聞いたけど」
げっ、皆なんてことを言ってるんだ!!
「そ、そんなことありませんよ!?」
「目が泳いでるけど」
「はっ!?」
リョウさんに呆れ顔で指摘され、目を見開いてリョウさんの顔に視線を固定する。
「ちょ、怖いよ!?」
「ワタシ、ジュギョウニゲテマセン」
「わかった、わかったから!その顔やめよう!?」
納得してくれたようなので、顔を元に戻す。
疲れきった顔をしているリョウさんに向かって
「早く料理しましょう!お腹空きました」
びしっ、と言ってあげた。
わー、私優等生!!
「いやいや、杏樹ちゃんのせいだから!しかも、お腹すいたって…。ついさっき食べたばっかり…」
「さぁさぁ、作りましょう」
腕を掴んで、引きずった。
「こんな力、どこにあるの!?」
なんかリョウさんが言ってるけど、気にしない。
「おかし~♪オムライス~♪」
歌を歌いながら上機嫌の私はキッチンに向かった。
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「杏樹ちゃんは、料理したことある?」
「………あります!」
「今の間はなに…?」
前世ではある…と思いたい。
転生してからは一回もないけどね!
若干、不安そうにしているリョウさんだがきっと私の料理が完成するころには驚愕しているだろう。
はっはっは、私の料理スキルを見たまえ!!
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結果:別の意味でびっくりされた。
私はリョウさんに言われ、カレーを作ることになった。
この世界にもカレーがあるのか!と地味に感動しながら私は玉ねぎの皮を剥き、切り始めた。
そう、このころから思えばおかしかったのだ。
例えば、まな板においていた玉ねぎがなぜか鍋に入っていたり。
人参の皮が剥かれていたり。
洗っていないはずの調理器具が洗われていたり。
鍋の底から水が湧き出てきたり。
「その時点で気づくでしょ!?なんでスルーし続けてたの!?」
「え、リョウさんがやってくれてるのかと」
「意外に普通の答えだった!!」
さすがにおかしいと気づいたのは、私もリョウさんもキッチンから出ている間にカレーが完成していたときだった。
「遅すぎでしょ!?」
「味見したら、とってもおいしかったです!」
「味見したんだ!?よく食べたね!?」
この世界にはカレー粉なんて便利なものないからスパイスを使わなきゃいけないのに、完璧なおいしさだった。
「…でも、リョウさんがやってないなら誰がやったんですか?」
「んー、妖精かな?」
「妖精がいるんですか!?」
「うん、いるよ。普通は見えないんだけどね」
ふぉおおお!!
妖精とか、いいなぁ…。
見てみたい!!
「リョウさんは妖精をみれるんですか?」
「まぁ、闇妖精だけだけど。基本、ヴァンパイアは夜に活動するから」
「へぇ…」
「妖精についてはサクヤのほうが詳しいよ。次の授業はサクヤだし、教えてもらったらどうかな」
「わかりました!」
「それにしても、杏樹ちゃんはかなり妖精に好かれてるね。契約してもいないのに手伝ってくれるなんて」
妖精に好かれるって、うれしいなぁ…。
どうやったら妖精を見れるか、サクヤさんに教えてもらおう!