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きままに読み流し短編集

どうやら攻略に失敗したらしいので、別の道を探ってみた。

作者: 菊華 伴

ご都合主義でまいります。

とある乙女ゲーム。

そして、とあるヒロインのぼんやりとした呟き。


 ――聖ローザ学園。

  貴族の子息子女が一人前の紳士・淑女になるべく通う学校にて。


「アルカディオ様、もしよかったら……」

 そう言って手作りお弁当を差し出そうとした私に、アルカディオ様は表情を曇らせた。

「すまない、レーナ。もう、お弁当は貰っているんだ……、キミの妹から」

「ごめんなさい、お姉様」

 レーナというのは私の名前。正しくはマグナレーナ。そして、アルカディオ様の隣でしゅん、と項垂れているのは妹のマグノリア。

 どこでどう間違えたのかわからないが、どうやら私は攻略を失敗したらしい。想いを寄せていたアルカディオ様は妹の手を取ってテラスへ行ってしまった。

(……おかしいな。たしかお弁当の好みを聞くって選択肢で合っている筈なのに)

 いや、剣術大会で惜しくも準優勝になったときの慰め方が悪かったのか。それとも、最初の出会いで妹と一緒に挨拶したのがいけなかったのか。


 ……しかたない。これ以上は何をしても無駄だ、と悟った私はしかたなく教室で1人、2人分の弁当を食べることに。複雑な思いで悶々としながらもこれからの事を考えましょう。


 その1:別の攻略キャラクターを攻めるか?

 失恋してすぐそれはない。淑女としてありえない。

 それに心の整理もついていない。


 その2:妹とアルカディオの恋路を邪魔するか?

 悪役令嬢として破滅の道をたどる事になる。

 ある意味それはそれでオイシイかもしれないが、ごめん被りたい。


 ならばどうするか?

 好き勝手やってみて、反応を試してみるのはどうだろう?


 ゲームにはない選択肢を選ぶという手が、自然と私の脳裏に浮かび上がる。ゆっくりと食事している間に、精神的に落ち着きを取り戻したみたい。

(それもそうよね。男性は彼らだけ(・・)じゃないわけだし)

 私はとりあえず、妹の恋路を応援して尚且つ淑女を目指して真面目に学園生活をおくってみよう、と思い立った。誰とも結ばれず友達として過ごす『友愛ルート』なるものも確かあったが、それになるかもわからない。ゲームには妹の恋路を応援するとか無かったはずだもの。


 それから私の日々は少し代わった。アルカディオ様の事を目で追ってしまうことはあったが、妹と幸せそうなのでそのままにしておく。偶に相談事を持ちかける妹には、未練を悟らせぬよう笑顔で対応した。

 授業は毎日真面目に受け、予習復習をし、時間があれば先輩がたにマナーやダンスなとを教えてもらった。そうそう、時々お茶会にでて情報収集もして……。


 そんなある日。アルカディオ様が妹と一緒に私のところへ来てくださった。因みにアルカディオ様はこの国の皇太子で、私たち姉妹は公爵令嬢である事を今更ながら付け加える。よく見ると、浅黒い肌と銀髪の少年が一緒に来ていた。

「レーナ、すこしいいかな?」

「? 私ですか……」

「ああ。是非、君に会いたいとロビンが言っていてね」

 ロビン様というのは、隣国の皇太子で今年の春から学園に留学に来ている。確か、マグノリアと同じ学年だったはず。私から声をかけることはなかったけれど、何度か会っている。

 今思えば、時々お菓子の味見をしてもらったり、図書室で会ったり、1度だけ落し物を届けたりしたかなぁ、というぐらい。誰かと恋人になりたい、とかもう頭の外に追い出して只管立派な淑女を目指していたからかしら?

「ほら、ロビン様! 勇気をお出しになって!」

「ちょっ、いきなりは困る! 背中を押すな、ノリア!」

 ロビン様が顔を真っ赤にしてわたわたしている。普段クールなロビン様の意外な一面を見ることが出来、それだけで私は満足だった。が、ロビン様はなにやらアルカディオ様に耳打ちされ、更に顔を赤くする。

「あ、あの……ロビン様?」

「マグナレーナ・セイロン嬢。……実は、いつのまにか、貴女のやさしさに惹かれていた。どうか、俺と付き合っていただけないだろうか?」


 ……はい?


 一瞬、頭が真っ白になった。

 彼を攻略した気は全く無かったんですもの。

 同時に、面と向かって告白された事で恥ずかしくなって、私まで顔が真っ赤になってしまって……。


「で、でも私……」

「アルカディオに想いを寄せていたのは、知っている。だから、急に答えをくれとは言わない。友達からでもいい。俺を見て、最終的に……そうだな。貴女が最終学年になるまでに答えを出してくれれば……」

 戸惑う私の手を取り、真剣な瞳で言うロビン様。その真摯な態度に胸がきゅん、としてしまう。なんとなく傍に居たい気持ちがあふれてくる。

「……はい、ロビン様!」

 私はいつの間にか、そう答えていた。彼の笑顔を見ていると、体の奥はきゅぅん、と熱くなってしまう。


「ロビン様、よろしくおねがいします」

「こちらこそよろしく、マグナレーナ」

 顔が赤いままそう言い合う私たちに、アルカディオ様と妹が優しい眼差しを向けていた。


 そして数年後。私はロビン様と完全に相思相愛に。妹もアルカディオ様と相思相愛。祖国とロビン様の国もいい関係を保ったまま、2組同時に結婚式を挙げる事になっていた。



読んでくださり有難うございます。

なんだかぐだぐだですが楽しんでいただければ幸いです。

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