拷問
第四章
拷問
廊下の奥から足音が聞こえる。一歩一歩がずっしりと響き、像か何かの巨大生物のように感じられる。
目の前に姿を現したのは、鉄格子を編み合わせたような兜を被り、腰巻一枚に筋肉が異様に発達し、その片手には斬馬刀のような巨大な刃物が握られていた。
そいつは、檻の前で立ち止まると、腰から鍵束を取り出し鉄格子の錠は外した。
そして、そいつはくいと人差し指を動かし、付いて来るように指示した。
牢から出ると、木村の顔が見えた。酷くやつれ、髪は所々抜け落ち、口の回りには血がべっとりと付いていた。
これから受けるであろう仕打ちを想像するには十分すぎる光景だ。
廊下の突き当たりの重く閉ざされた扉を、いとも容易くそいつは押し上げ、牢屋全体がミシミシと軋む。
10分ほど階段を昇り、振り返ると、禍々しいほどの闇がぽっかりと口を開いているように思えた。
ようやく広場のような場所に辿りつくと、そこには100人程の薄汚れた姿の連中が柱を囲んでいた。
その柱のちょうど真ん中辺りには、全裸の女性が縛り付けられ、ぐったりと意識を失っている。
その柱前に来ると、頭を押さえられ、ひざまづくような体制を強いられた。
ざわめきが鎮まると、群衆の中から一人の老人が姿を見せ、女性の方に近づいていった。
その老人は、両手を天に掲げると、お経のようなものを唱え始め、手を女性の胸に近づけていった。
すると、次の瞬間、女性の胸に老人の手がめり込んでいき、心臓を引きずり出した。
目を疑う凄惨な光景に思わず目を背けた。
やがてその心臓は、牢屋から自分をここまで連れてきた大男に手渡され、運ばれてきた石の台の上で細切れにし、それを口に押し込んできた。
そう、心臓を食わされたのだ。
世にこれ以上の拷問はないだろう。




