作戦会議
「それじゃここから15分間作戦会議の時間だそうですので、会議しましょう。というか、まず自己紹介しましょう。武くんのことは知ってるんですが、あなたのことは知らないので。」
「あ、はい。竹中春人と言います。15歳です。」
この学校は10歳から18歳までならいくつからでも入学でき、三年の修行を積んで卒業する。
「俺は柿谷武、16歳だ。誕生日は4月3日だから多分同学年かな。」
武は手に持つ木槌を弄りながら言う。
「私は鈴木愛莉、15歳です。武くんとは幼稚園の頃からの幼なじみです。」
「それ、必要な情報か?」
武が呆れたような声で言う。
「うーん?わかんないけどお互いのことは知っといた方がいいでしょ!ね、ハルトくん!」
「え、あ、はい。」
ハルトは突然女の子に名前呼びに驚く。
愛莉はかなりの美少女であり、ショートカットで、眼鏡をかけている。
ハルトは戦闘のためだったらコンタクトだからショートはただの好みか……。と、わけのわからない考察を入れる。とにかく愛莉美少女だ。ハルトにとって美少女に名前呼びは心臓に悪いようだ。
「まあ、とにかく名前紹介は済んだことですし、能力紹介をしていきましょう。」
能力。魔法適合者には一人一人固有の能力が与えられる。その能力は様々で、時たま、二つ、三つ有する者もいる。
「私の能力は一言で言えば、【分析】です。相手の能力、戦闘能力、知力などが数値化して見えます。でも自分と力の差があり過ぎるとあまりはっきり見ることができません。そして武器は遠距離系の水系統の銃です。」
こういうサブ系の能力は敵にバレてしまうのはよくない。 敵に能力がバレると、真っ先に狙われやすいからだ。こういう戦闘の時においても、自分の能力を明かすのは信頼できる人物にしかしない。
能力以外にも、魔力を込めて使うことができる武器を持つことができる。武器の使用は個人の自由だ。
「じゃあ次は俺な。俺の能力は【破壊】だ、対象の相手に強力な攻撃をぶちかませる。でもこの能力を発動するとスピードが極端に遅くなっちまうのが欠点だ。武器はハンマーだ。このハンマー優れものでよう。長さが調節できるんだ。最大距離は5mだ。次はハルトな。」
スピードの遅さをリーチでカバー。ハルトはこの二人がかなり強い部類に入るということを確信した。
「あ、はい。俺の能力はちょっと説明が長くなるんですが、このチェス盤です。」
「「チェス盤??」」
二人の声が揃う。
「はい。このチェス盤を使って、結界を展開して、自分がこの玉座の位置にいるとして、1マス5mで計40×40mのところにある物体を移動することができます。」
「え?なにそれ、チートじゃない。」
「チートなのか?そんなにすごいとは思わないけど。」
「え、だってこれ敵を動かして、思いっきり地面にめり込ませるとかできるわけでしょ?」
愛莉は控えめな性格とは裏腹にすごいことを考える。
「あ、えっと、結構細かい制約があって、二つほど話せばわかると思うんですけど、一つ目の制約は動いているものは基本動かせないんです。
でもこの能力を知っている人なら能力を使う時に足を動かさなければ移動可能です。で、これが二つ目の制約なんですけど、人の場合、能力を知っている者しか動かせないってやつですね。」
「なかなか難しい能力なのね。でもやっぱり強いと思う。そこら辺に武器を置きまくって相手に投げまくれば良いじゃない。」
「そういう方法もあるんですけど、これは俺の力量が足りてないのが問題なんですけど移動は駒を持てる二本の手、要は二個しか一回で移動させられないんです。さらにこの移動は転移に近いもので、その物を移動エネルギーを持ったまま飛ばすとかそういうことはできないんです。後、敵の体内に物を入れるとかそういうのもできないんで、色々制約が強くて強いように見えてそんなことないんですよ。」
「そうなんだ。いや、ても強いことは確かだよね。」
愛莉が目を輝かせていう。
「ああ、これってお互い信頼してないとできない能力って感じでいいな。合体技できそうだな俺の【破壊】と」
「そうですね。でも結界展開に1分かかるので最初の方はよろしくお願いします。」
「わかったぜ。でも1分と言わず、5分位の方がいい気がする。多分試験官は最初の方は相手の力がわからないから結構本気で躱して力量を測ってくると思うんだ。そっから5分たって、俺らも限界ってところで高速移動&攻撃でビビらせるってのがベストだと思う。」
「なるほど。いい案だねー。こういう頭の回転を勉強の方にも役立ててほしいなあ。」
愛莉が茶化す。
「うっせ。俺は実技で才能発揮するタイプなの!」
武も言い返すが
「またまた御冗談を。実技も筆記も私に勝ったことないでしょ。」
と愛莉に言い負かされる。
どうやらそれは本当のことのようで、
武は、【破壊】じゃなければ、スピードが、と落ち込んでいた。
ハルトはそんな二人を見てこの二人なら仲良くなれそうな感じがしていた。
「その案俺もいいと思います。」
そうとだけ言うと、武が
「ってかその敬語辞めね。これからパーティ組んで戦う訳だしよ。仲良く行こうぜ」
と言う。
「わかりました、いや、わかった。
あんまり慣れてないけど頑張るよ!」
「おう、がんばろうぜ」
武が返すと、愛莉が突然笑い出す。
「何がおかしいんだよ。」
「いやいや、だって敬語使わないのがんばるってハルトくん言ってるのに、武くん戦闘がんばろうって返してるんだもん。本当に武くんって戦闘のことだけしか考えてないよね。」
「まあな」
武がすぐ認めると、ハルトもツボにはまったのか笑い出した。
「すごいね。一緒に勝とうよ」
ハルトがそういうと、
二人とも驚いた顔をした。
ハルトは不思議に思って
「なんかおかしなこといった?」
「いや、なにもいってねえよ。そう、勝つだけだ。」
「そうね、そう。勝とう。勝てるわ。」
二人はそう返答して結局ハルトにはなにに驚いたのかわからなかった。
このJATs始まって以来この入学試験で攻撃を当てられた者はごく少数、さらに試験官を下したグループは10グループもなかったのだったが、ハルトはそんなこと知るはずもなかった。