入学試験
「これから入学試験を始める。全員、三人組以上六人組以下のグループを作るように。」
開会式後突然の校長の一言。日本魔導師養成訓練学校略してJATs入学式。
こんなのってありなのだろうかとハルトは溜息をつく。
西暦2050年石油資源の枯渇やオゾン層の破壊により、一時、地球存続が危ぶまれたが、こうして2115年までなんとか持ち堪えているのは魔法のおかげだった。突如現れた魔法の力を持つ子供達のおかげで生活資源となるエネルギーが大量に供給され、地球は一旦持ち直すことに成功した。だが、その魔法を使える人間を超えた人間、すなわち魔導師の数は人間全体の0.01%。更に殆どの魔導師は魔導師と言うレベルの能力は持ち合わせず、ほぼ一般人と同等で、軍などで鍛えられた一般兵には敵わない。だが、そんな微弱な力しか持ち合わせていないにも関わらず、魔法を持つというだけで煙たがられてきた。そんな中で政府が応急処置のようなものとして、作り出したのが魔導師訓練学校である。日本は各国よりも割合的に魔法適合者が多く、かなりの訓練学校が存在する。そんな中でもこのJATsは日本最大級の規模を持つ、とりわけ有数の学校であった。
ハルトは周りを見渡すと既にパーティを殆どの人達が組み終えていることに気づいた。
この入学試験は恒例行事なのだがハルトはそんなことは知らない。
どうしよう。ハルトはどっかに入れてもらおうにも、上手く周りと合わせられる自信がなかった。そしてなるべく少人数のところを求めた。ハルトは影が薄いほうだ。自分から声をかけないと気づいてもらえないことに気づいていた。
そこで丁度二人組になっている男女を見つけた。そこでなるべく自然なように、ハルトは背後から男の方にぶつかった。
「うおっと、わりぃ。」
ハルトは嘘をつき慣れていないのか、ワザとらしい声を出す。
「おお、大丈夫か」
ぶつかられた男は即座に体制を立て直し戦闘体制に入り、危険がないとわかるとすぐハルトのことを心配してくれている。かなりの強者で優しい性格を持つのが垣間見える。
その心配が罪悪感となってハルトに突き刺さったのか、
「ごめん……。ごめんなさい……。今ワザとぶつかりました。パーティに入れてもらおうとして、気を引くために。」
ハルトは臆病で正義感が強い。これからパーティを組もうって頼もうとしてる相手に、狡い真似をしたまま事実を隠すことができるタイプではなかった。
「ハハッ。いや、別にいいよ謝らなくて。そんなこと自分から言ったら本末転倒じゃないか。面白いな君。パーティいいよなアイリ。」
こいつイケメン過ぎる。全部受け入れてくれた。こいつには一生ついていこうまじで。イケメンはやっぱりいいやつしかいないぜ。騙されるな俺はノンケだ。とハルトは訳のわからない思考回路で男をリスペクトし始める。
「いいよ。丁度一人足りなかったところだし。」
と女の方も賛同する。
「あ゛り゛がどゔございます。」
ハルトの涙が止まらない。こんなに優しくしてもらえたのいつ以来か。と。
「えっ、えっ?おい、こんなことで泣くなって。」
二人とも動揺してハルトが泣いているのをあやしている間にメンバー登録が始まっていて、三人だけのパーティになり、ハルトにとって結果オーライだった。
「次っ!125番柿谷武、鈴木愛莉、竹中春人。入ってこい。」
遂にハルトたちが呼ばれた。
これから戦闘が始まる。
特殊戦闘用の1辺200mある直方体の箱の中、そこに待っている敵は一人。
「今から試験を始める。内容はシンプルだ。俺を殺してみろ。殺す気でやらなきゃ掠りもしないぞ。まあ大抵は何しても掠らないけどね。じゃあ、はじめっ!!」
口ぶりから相当の実力者の試験官。
だが、ハルトは負ける気はなかった。話は単純だ、倒せばいい。などと本気で考えていたのだった。
三人の約束により最初の5分はハルトは何もしないで、隠れて傍観者に徹する。
武と愛莉が早速攻撃に出た。二人は幼なじみだけあって息が合っている。
でも、一向に攻撃が当たる気配がない。向こうは半径30cmの円が描かれている場所から全く移動していない。
4分30秒経過。
「どうしたー?そんな攻撃いつまでやってもあたんねえぞ。あと、もう一人のやつどうしたんだ?」
「ちっくしょう、はぁ……、あたれっ……。くそっ」
「残り30秒になりました。ハルトくんの場所に行ってきます。武くん30秒だけ堪えててください。」
「もうそんな時間かよ。仕方ねえ。能力解除っ!ハンマー縮小っ!」
「んーなんかやろうとしてるのね。まぁ残りまだあと5分はあるよ。残り一人を呼びに行くのか、まあこれは試験だしねえ、待ってあげることにしよう。」
5分経過。
「は、ハルトくん……。敵の能力はわかりませんでしたが、使うつもりはないみたい、です。体術のレベルは世界屈指なのは間違いないでしょう。私の能力じゃまだほとんど解明できませんでしたが、あのレベルだともう関係ないでしょう。お願いします。」
息を切らしながら愛莉がハルトの元へやってきた。
OK。ここからは俺も参戦…………。いや、参戦よりも俺はやっぱり傍観者だな。
そう、思うとなんだか悲しくなってきた。まあ勝てればいい。
ここからがゲームの始まりだ。
初手から飛ばすぜ!
そうハルトは息巻くのだった
「五分たったな。あいつを信じてみるか。」
武はそう小声で呟き、攻撃をやめ、動くのをやめ、そしてハンマーを構える。
「能力展開、ハンマー拡大最大!!」
「お?やる気か?でもそこだと届かないよね。どうする気だい。」
「いえ、良いんです。俺は思いっきり攻撃すれば。ウオリャアア」
掛け声とともに思いっきりハンマーを振り抜く、だがこの攻撃は届かない、
はずだった。
試験官は瞬時に違和感に気づく、掛け声、そう掛け声が背後、後ろから聞こえる。戦士としての直感が避けろと命令する。間一髪で武の攻撃を避ける。
試験官はその時既に自分があの半径30cmの円から出ていることなど忘れていた。
いや、そんなこと考えている暇がなかった。ただ四方八方からくるハンマーの連続攻撃を避けるので精一杯だった。
試験官は何が起こっているのか、わからなくなっていた。
どうなっている。何が起こっている、なぜ、疲れているさっきより早い。能力か?いや、おかしい。こいつの能力はスピードが下がるはずでは?ブラフか?いやなぜ今なのだ。ここまでの能力ならブラフなど必要ない。動揺する試験官
「お前、瞬間移動なんかもできるのかねえ」
途絶えることのないハンマーの連続攻撃を間一髪で全て躱しながら、若干焦りが入った声で、でもさっきと同じように、焦る自分をなるべく悟られぬように喋る。
「おうおう。いい感じに勘違いしてくれてるねえ。まあ強ち間違えではないんだけどさ。」
そう呟くが、ハルトの声はそいつには決して聞こえることがない。
「あいつ、すげぇな。相手を圧倒してやがる。」
戦場で戦う武が呟く。
「これが俺の能力【キャッスル・オブ・ザ・キング】だ。」