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good morning
「なぁ、エハ。」
―未だ見慣れない、シトの姿。未だ聞きなれない、シトの声。目の前で動き、語るシト。ほんとうに、久しぶりで。
エハの目に滲んだ涙は、エハのそれよりも体温の高い、シトの指に拭われる。
「エハ、お前、痩せた?」
―首を横に振る。ご飯はきちんと食べてるよ。
人肌の金属の内側で不自由な口もとを歪め、笑う。また、へたくそ、と笑われるだろうか。
「……信じる、からな。」
―笑う。ごめんね。ありがとう。
その夜。深夜の施設。
ぺたり、ぺたりと湿る足音。ぽたり、ぽたりと濡れる雨音。
厨房へと侵入し、一心不乱に食べ物を貪るシトの背中はやはり必死で、あまりに美味しいのかと思わせる。
顔を上げた食欲に促され、おそるおそる、シトの背中から顔を出す。そして雑多に食い散らかされた食べ物を見る。唾液の味。胃液の味。
エハの視線に気づいたか、シトが振り返る。目が合う。笑う。
「お前も食えよ。」
ぽうん、と放り投げられた重たいそれを受け取り、笑う。笑われる。頷く。
そして口を開き、千切った食品を押し込み、咀嚼し、嚥下する。笑う。
「そんながっつくなよ。」
笑う。笑われる。