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分裂系の奴と戦うのは実は大変です

自分の力に悩む通そして、苦戦するモゴと静

「ねーねー一緒に3Sやろうよ」

 教室でモゴが通の机に顔を乗せて哀願する。

 無視する通。

「才能あるんだからさー」

 モゴが更に言うが、やっぱり無視する通。

「おこずかい稼げるよ」

 そのモゴの言葉に、ピクッと反応する通。

 そしてその脳裏に、前回の戦いの報酬として手渡された一万円札が飛び交う。

「あのー出来れば授業したいんですが」

 英語を教える、森本モリモト姫子ヒメコ未婚が弱弱しく言う。

「いま学園の平和に関する重大な事を話してるから後で!」

 モゴの一言に涙を流す姫子。

「良美ちゃんに恩があるからって、こんな学校に来るべきじゃなかったのかも」



「モゴがしつこいんで、どうにかしてもらえませんか?」

 シロキバでぬいぐるみ用材料の仕分けをしながら通が言う。

「ごめんね。正直八刃も人手不足になりつつあるの。私がやれれば良いんだけど、色々なパワーバランスの関係でそうも行かないのよ」

 すまなそうに言うヤヤに、何時もながら残業を殆どしない良美が、ビールを飲みながら続ける。

「ヤヤって八刃のお偉いさんだから、簡単に腰を上げられないんだよ」

 不満そうな顔をする通。

「トー姉って3Sにどうして入らないの?」

 較美と遊んでいた歩が聞いてくる。

「あたしは普通に生きるの。3Sなんて危ない仕事はしないよ」

 それを聞いてヤヤが頷く。

「そうだね。遠糸の長もそれを望んでいたしね」

「だが、戦力不足は本当だぞ。ヤヤと小較で倒していた時期に較べて頻度が格段あがってるんだからよ」

 良美の言葉に、怒った様子で入ってきた小較が言う。

「そうですね、今日は委員会があるって言っておいたのに顧問の先生が居ないなんて非常識な事があったしね」

 良美が平然と応える。

「光からの定例報告だろ?あたしが居なくても困らないだろーよ」

 大きく溜息を吐きながらも、小較は一つのファイルをヤヤに手渡す。

「光からの預かり物です。昨日までの3S関係の収支報告みたいです」

 ヤヤがさっと目を通して言う。

「学園の設備新設費用まで3Sの費用に計上してるなー」

 何気に通がその収支を見て驚く。

「何ですかこの金額?」

「八刃学園の結界の維持費や、壊れた設備の修繕費用。参加した3Sのメンバーへの報酬。かなりの金額になるのよ。基本的には八刃の余裕がある一族がバックアップしてるの」

「余裕ある一族って有るんですか?」

 通の言葉にヤヤが言う。

「八刃の人間は基本的に他人より能力が高いから、お金儲けが上手な人が多いの」

「ヤヤお姉ちゃんは投資に外した事無いし、父も本出してもうけたお金で有力株持ってるもんね」

 小較の言葉に歩が言う。

「凄い!」

 通は少し嫌な物を見る目でヤヤを見る。

「つまりここって道楽商売なんですね」

 それに対して小較が怒った顔をするがヤヤが止める。

「普段の生活費は全てここのお金から出してるわ。投資している元手、何だか解る?」

 その言葉に通は反発するように言う。

「本書いてる父親のお金でしょ!」

 ヤヤはゆっくり首を横に振る。

「私も貴方達位の時は色々あって、殺しを前提にした戦闘ショーに出てたの」

 驚く通。

「お父さんも出てたし、自分でも自分の強さを極めたくって、それに出てたわ。正直そうしてないと不安だったの。投資の元手ってその時に儲けたお金なのよ」

 ヤヤの言葉に良美が頷く。

「確か一試合で数千万掛かる試合もあったっけ」

 通が良美の方を向いて言う。

「大山先生どうして知ってるんですか?」

 良美は平然と応える。

「あたしはその時もう親友だった。一度、毒を撃たれてその中和剤を勝負の商品にされていたな」

 大きく溜息を吐くヤヤ。

「ヨシはその時から変わってないよ、相手に従って、中和剤を貰おうとしたのに八百長は駄目なんて言うんだから。あの時も私は凄く苦労したわ。実力が上の連中と死ぬ寸前まで戦ってたもの」

「懐かしいなーそれってあたしと出会ったときの話ですよね?」

 小較の言葉に頷くヤヤと良美。

「その時、八刃の戦う意味を知ったのかな。だからヨシには一応、感謝してる」

 ヤヤがそう優しげな視線を良美に向けるが掌を差し出す。

「何?」

 良美が首を傾けるとヤヤが言う。

「食費と較美の養育費、さっきも言ったけど普通の生活費はぬいぐるみ屋の儲けから出してるから無駄飯喰らいを飼ってられないの。それとヨシも母親なら少しは較美の世話しなさい!」

「良いだろう金持ちなんだから。親友の面倒くらい見ろ。あたしは酒代で今月はピンチなんだよ」

 逃げに入る良美。

「今月もの間違いでしょ」

 小較が呟く。

 少し騒がしくなるが、通は歩を見る。

「八刃の戦う意味か……」



「ありがとうございました」

 そう言って帰ろうとする通に、ヤヤは一つの包みを渡す。

「これは事情を説明するつもりないからと遠糸の長から預かっていた遠糸の家宝。もう知った以上私が預かっているより家族の人が持っていた方が良いでしょうからご両親に渡してくれる」

 通はその包みを開けると一見すると大きなアクセサリがついた一対の腕輪が出て来た。

「何なんですかこれ?」

「それは九尾弓キュウビキュウ羽矢筒ハネヤヅツって言って、九尾弓は弓になり、羽矢筒は九尾弓の力で作った矢を入れて成長させる事が出来るわ」

 ヤヤの説明を聞き、通は、呟く。

「九尾弓」

 すると、腕輪の飾りが変換し弓に変わる。その弓は、上部が九つに分かれて全て色が違い、その先には尾羽が付いていた。

 九つに分かれる元の所から弦が伸び、弓と成っていた。

 ヤヤは一つの棒を渡す。

「神木や霊木にどれでも良いから羽根に当ててここに書かれた呪文を唱えると、九尾弓で撃つ為の矢、色鳥矢シキチョウヤを作れるわ。作った矢は羽矢筒に入れておける見たいよ」

 その言葉に歩が首を傾げる。

「見たいって使ったこと無いの?」

「使えないの、これは遠糸の家宝だからね。細かいことはここに書いてあるわ」

 そう言って、ヤヤは一冊の手帳を渡す。

 それを受け取り通が言う。

「これ翼お祖母ちゃんが書いたんですよね?」

 頷くヤヤ。

 そして通は本に手帳に書かれてある通りに、白い羽根に木の棒を当てて言う。

『白の尾羽を触媒とし、九尾鳥キュウビチョウの眷属なりし、汝をここに産み創り出さん、純白色鳥矢、産創!』

 棒は一瞬の内に矢尻も木で出来た、白い矢羽が付いた矢に変化した。

 歩が驚き目を丸くする。

「すっごーい!」

 通も驚いたが、不思議と違和感を持たなかった。

 そしてもう一つのリングに付いた円に状の飾りに先を入れて唱える。

『抱卵(ホウラン』

 すると、矢が消える。

「トー姉それって手品?」

 歩が興味深々にもう一つのリングの飾り、羽矢筒を見る。

「そーゆーアイテムみたいだよ」

「歩もやりたい!」

 歩の言葉にヤヤが頭を撫でながら言う。

「それは戦う道具なのよ。でも貴方達にとっては遠糸の長の形見だから返すわ。普通に生きるんだったら危ない道を進まない様にするのよ」

 頷く通。



 通が歩と二人で帰り道を歩いていく。

「シロキバって学校から近いよね」

 歩の言葉に通が応える。

「何でも学園で何かあった時に直ぐに到着できるように、今あたし達が住んでる家から住み替えたって聞いてる」

 納得して頷いていた歩だったが、いきなり

「あー学校にドリル忘れた!」

 その言葉に溜息を吐く通。

「取りに行くよ」

 その言葉に歩が嫌そうな顔をする。

「明日で良いよ」

「駄目、明日提出でしょ」

 通は歩を引っ張り、八刃学園に戻る。



「あちき達、深夜の学校で何してるんだろう?」

 モゴの言葉に静が言う。

「しかたありません白風先輩が、黒犬くらい私達だけで処分しろと言われたんですから」

 溜息を吐く静の前を一匹の中位の魔獣、黒犬が通り過ぎていく。

「静が悪いんだよ、折角あちきが風斬狼で追い詰めたのに、怖いからからって遠くから狙うから、外れた爆発の破片でダメージを受けて分裂しちゃったんだから」

 そう言うモゴの後ろにも黒犬が通り過ぎる。

「でもいきなりこんなに増えるなんて反則です」

 静とモゴを囲むように十匹近くの黒犬が回っていた。

「あたしの風斬狼や冷風隼じゃ、分裂するだけだし。土斧甲虫は動きが遅くて捉えられない。暫刃猫だったら一撃で倒せそうだけどあちきはそれ程剣術得意じゃないから普通にやってあてられる自信ない。静は攻撃力高くてもコントロールがいまいちだから外したらまた大量増幅させかねないから駄目だし、八方塞がりだよ」

 モゴの言葉に静が言う。

「他に輝石獣は居ないのですか?」

 考え込むモゴ。

「家に帰れば他のもあるんだけど、今あるのはとっておきだけなんだよな」

 静の表情が明るくなる。

「それだったらあの黒犬も倒せるんですよね!」

 モゴが頷く。

「でしたらそれを使って終わらせましょう!」

 静の言葉に首を横に振るモゴ。

「駄目なの、とっておきは使えないの!」

 モゴの強い言葉に静が唾を飲み言う。

「何か問題があるんですか?」

 モゴが強く頷き言った。

「一つで二万もするの使えないよ」

 その言葉に静がこける。

「そんな事なんですか?」

「そんな事じゃない! 黒犬の報酬が十万としても、サポートの静に二万は行くとして、残り八万の四分の一なんだよ。それも一発で終わらなかったらもう一つ使う必要があるんだよ! そしたら半分以上無くなっちゃう!」

 モゴが熱弁した。

 その時、黒犬の動きが変化した。

「何処かに向かっています」

 静の言葉にモゴが悩む。

「この区域には光さんが張った結界で普通の人間は入れない筈だよ」

「突猪と同じ様に一般人は入って来れないんですよね」

 静の言葉にモゴが頷く。

「そー歩ちゃんみたいな八刃の血を引く子でもないとね……」

「それと通さんも結界通れますよね……」

 暫くの沈黙の後、ハモル

「「それだ!」」

 急いで駆け出す二人であった。



「待っててよトー姉」

 そう言いながら歩が自分の教室に駆けていく。

 そして通は校舎の入り口で待っていた。

 その時、目の前を黒い犬達が駆け抜けていく。

「今の何?」

 その直後にモゴが駆けてくる。

「通! 今黒い犬が通らなかった?」

「通ったけどどうしたの?」

 モゴから少し遅れてやってきた静が言う。

「それは黒犬と言う魔獣なんです!」

 その言葉に通は黒犬達が誰を狙っているのか察知した。

 そして眼鏡を外すと、暗い校舎等関係なく、奥の教室に入ろうとしている歩と歩に襲い掛かろうとしていた黒犬を捉える。

 そこから先は、体が反応して居た。

『九尾弓』

 包みから弓の形式に戻った九尾弓を取り出し、羽矢筒を左腕につけてその穴に指を当てて唱える。

『純白色鳥矢、孵化フカ

 先程羽矢筒に収めた矢が輝きながら抜かれる。

 そして矢をツガえ、その瞳で歩に襲い掛かろうとした奴を捉える。

 純白色鳥矢を放つ。

 矢は、まるで白き輝く鳥の様に、黒犬達を打ち砕き、そして今にも歩を襲いかかろうとしていた黒犬を射抜いた。



「凄い威力ですね」

 仕事が終わったので、四人で帰り道を行く途中、静が言う。

「流石は遠糸って所だね。やっぱ3Sに入ろうよ」

 モゴの言葉に通は少し考えた後言う。

「解ったよ。あたしも守りたいものあるから」

 そう言って歩を見る通であった。



 翌日の放課後の教室。

「どうしてあたしが何にもしていないモゴと一緒なの!」

 通の言葉にモゴは胸を張っている。

「経験ってお金になるんだよーだ」

「一匹も倒せないのに経験も何もある訳無いでしょ!」

 通が文句を続ける。

 一人、半額の静だったが普通に二人の様子を眺めていた。

今回のモゴの収支



 ○収入

  黒犬退治               40,000

--------------------------------------------------

合計 = 40,000



 ○支出

風斬狼(触媒・ぬいぐるみ製造費)    2,000

--------------------------------------------------

合計 =  2,000



◎利益

収入    40,000

支出 -  2,000

--------------------------------------------------

純利  = 38,000



●借金残高

繰越金額   199,668,100

返済金額   - 38,000

--------------------------------------------------

借金残高   199,630,100



今回の通の収支


 ○収入

  黒犬退治               40,000

--------------------------------------------------

合計 = 40,000



 ○支出

純白色鳥矢(形見) 000,000

--------------------------------------------------

合計 =000,000



◎利益

収入    40,000

支出 -000,000

--------------------------------------------------

純利  =  40,000



●通のサイフ中身

おこずかい残金       9,250

臨時収入   + 40,000

--------------------------------------------------

サイフ残金        49,250

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