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目が良くても伊達眼鏡じゃないんですよ

八刃学園に出る魔獣警報、そしてそこに残る小さき少女の運命は

「この店って儲かってるんですね」

 通の言葉に小較が睨む。

「当然でしょヤヤお姉ちゃんが作ったぬいぐるみが売れない訳ないでしょうが」

 通と小較にお店を任せてヤヤは、較美を背負って夕飯の買出しに行っている。

「中学生がお金稼ぐ方法ないかなー」

 通が休憩とばかりにお菓子を食べながら呟く。

「うーん難しいと思う、ヤヤさんに言えばバイト代だしてくれるかもしれないけど、お互いそんな事言える立場じゃないもんね」

 安売り用ぬいぐるみを作りながらのモゴの言葉に頷く通。

「バイト代貰ったなんて言ったらお母さんに殺されるよ」

 そして、ぬいぐるみのラッピングを済ませた静が来る。

「そうですね。私達は、ヤヤさんに御恩がありますから」

 深く頷く3Sメンバー。

 そこに良美が入ってくる。

「いっそ、3Sに入るか?」

 それを聞いて驚く通。

「どうしてそうなるんですか?」

「お前だって八刃の血を引いているんだろ。少なくとも運動能力は常人以上なんだから戦う手段ある筈だぞ」

 良美の言葉に通はかけていた眼鏡の位置を直し言う。

「残念ですが、あたしは普通に生きるのが目標なんですから3Sなんて入りません」

 入り口に通の妹、歩が入ってくる。

「トー姉」

 その声に、通が真面目な顔をして言う。

「歩、お姉ちゃんは遊んでる訳じゃないんだから、来ちゃ駄目だよ」

 そんな通に小較が意地悪そうな顔をして言う。

「そーゆー台詞は、ほっぺたのクッキーのカス取ってから言ったほうが良いわよ」

 慌てて、ほっぺたのカスを取る通。

「歩ちゃん、見るだけだったらタダだから好きなだけ見て行ってね」

 微笑む小較。

「お金の無い客に媚売っても仕方ないですよ」

 ボソっと言う通の頭を軽く叩き小較が言う。

「客商売は人気が全て、直接買う人間だけに愛想振りまけば良いってもんじゃないの」



「あのーアユミもモゴさんみたいにぬいぐるみを、本物にできますか?」

 店の奥に案内されてお菓子を食べていた歩の言葉にモゴが答える。

「無理だよ、これは百母の技だもん」

 歩は食い下がる。

「でもアユミの家もハチバって家の一つなんですよね?」

 その言葉に通が驚く。

「歩それ誰に聞いたの?」

 歩はまっすぐ良美を指差す。

「どうしてそーゆー余計な事を教えるんですか!」

 良美は平然と答える。

「お前みたいに挫折する前に解って居た方がいいだろう?」

 何もいえなくなく通。

 そして、静が言う。

「そー言えば私も他の八刃の事をよく知りません」

 それを聞いてモゴが言う。

「だったら説明するよ。八刃って八つの家系があるの。盟主とも言われている、白風は、殆ど何でも出来る万能キャラ。次にあちきの百母は、ぬいぐるみ、正確に言うと獣の形どる物に触媒になる輝石を埋め込み、それを元に輝石獣を生み出すの。静の萌野は意思を炎に変換する能力があって、理事長の光さんの間結は、結界や魔方陣を得意としてるの。執事の鏡さんの谷走は影を使った術が多いし。あと有名な竜騎機将のパイロットの七華さんの霧流は、竜退治に特化している。そして神谷は闘志を武器に出来る。んで遠糸は、矢に力を込めて放つの。下準備が必要な分、強力な先制攻撃に向いていたみたいだよ」

 目を輝かせる歩。

「それじゃあ下準備をしたらアユミも悪い化け物退治出来るんだ!」

「歩危険な事は駄目!」

 怒る通。

「トー姉のケチ!」

「ケチじゃない!」

 そんな姉妹喧嘩をしている間にヤヤが帰ってきて夕食になる。



「実際問題おこずかい無しはきついよね」

 元良美が使っていた部屋だった現自分の一人部屋(元の家では歩と一緒)で財布の中身とにらめっこする通。

「この家、意外と電化製品あるけどお母さんが勿体無いって使わせてくれないし。新しいCDも欲しいし。でもお父さんがリストラされてる今、おこずかい欲しいなんて言えないしなー」

 因みに、電気水道代はヤヤは要らないと言っていたが、通の母親、留美ががんとして受け付けなかった。

 その為、殆ど良美の我侭で買った高級電化製品の殆どがコンセントすら刺さっていない状態である。

「本気でどうしよう……」



「危ないバイトとちょっとエッチなバイトと凄くエッチなバイトだったら紹介出来るよ」

 通が教室で比較的常識的な人(身体的に)雅に相談すると即答された。

「えーと危ないバイトってどんなの?」

 通が一応聞くと雅が答える。

「理事長主催する。実験のモルモット」

 沈黙の後、通が気を取り直し言う。

「ちょっとエッチなバイトは」

 雅がノートで学園の裏サイトを表示する。

 そこには「男性と話すだけでお金がもらえます」と書かれたエンコウを求めるページが出てくる。

「この手のサイトって取締りが厳しいじゃないの?」

 モゴが突っ込むと雅が言う。

「学園内しか流してなくて、裏に理事長がついてるって噂よ」

 また沈黙が訪れるが、通が気を取り直し言う。

「興味で聞くんだけど凄くエッチなバイトって何?」

 雅は小声で言う。

「理事長がつれてくるお金持ちのおじさんとエッチするの」

 通が怒鳴る。

「ここの理事長ってどんなスケベ親父!」

「嫌ねー、あたしはただお金のがない人に仕事を斡旋してるだけよ」

 例の如く、突然現れる光。

「誰?」

 通が質問すると、モゴが申し訳なさそうに答える。

「この学校の理事長で、八刃の一つ間結の次期長候補」

 大きな溜息を吐いて通が言う。

「八刃の未来っておもいっきり暗くない?」

 雅が頷き言う。

「そうだね、白風ってぬいぐるみ屋さんで、萌野は後継者不在で、百母は借金で出稼ぎ行ってる位だもんねー」

 反論できない八刃の面々であった。

「間結はあたしが居る限り、安泰よ!」

 高笑いをする光。

 そこが一番不安だとその場に居た全員の意見だった。



「今日はあたし一人しか居ないんですか?」

 通の質問にヤヤが、較美の相手をしながら答える。

「ええ、小較達は委員の仕事で遅くなるそうよ」

 「シロキバ」は基本的に昼間は何人かのパートさんを雇っている。

 大半が主婦で夕食の時間には帰る為、その入れ替わりで小較達が助っ人に入る形式である。

「うちはお客様にじっくり見てもらう形式で一人一人につく形式じゃないから、私一人でも平気なのよ」

 微笑むヤヤ。

 そして、店の客の一人が、不振な動きをしてから店を出ようとしたのを通が見た時、ヤヤの手が一瞬見えなくなる。

 次の瞬間不振な動きをした客の服が切れて、そこからぬいぐるみが零れ落ちる。

 ヤヤは何も言わずそっちを見つめる。

 逃げていく相手を見ながら通が思った。

『この人、穏やかそうな外見だけど、何か内面が怖い気がする』と。

 そんな時、電話が鳴る。

「はい。ぬいぐるみショップ『シロキバ』です」

 通が電話に出ると聞きなれた通の母親、留美の声が聞こえてくる。

『通ね? 歩はそっち行ってる?』

「来てないけど?」

 通の返事に留美が言う。

『帰ってないの。そっちでも探してくれる?』

「歩がまだ帰ってないの!」

 その言葉にヤヤが反応する。

「通さん、直ぐに学校に行って、今の奴は小較なら大丈夫だけど他の子ではきつい数なの。もし歩ちゃんが側に居たら危ない」

 通が頷き出て行こうとした時、ヤヤは小さなボウガンを渡す。

「これに意識を集中して打ち出せば貴女だったら魔獣も倒せるはずよ」

 それを受け取りながらも躊躇する通にヤヤが言う。

「使わないに越した事は無いわ。でもいざという時に躊躇しないで、それは一生の後悔になる。貴女の力は後悔しない為にあるのよ」

 なおも戸惑う通にヤヤが微笑む掛ける。

「正しい判断は出来る。貴女は最後まで戦い、優しかった遠糸翼ツバサの血を引いているんだから」

 通は頷き駆け出す。



「今回は猪みたいだな」

 呑気に言う良美の前では、小較が数体の猪とにらみ合っていた。

 その後ろにはバタンキューした静とモゴが居た。

「不意打ち食らって気絶するなんて甘いな」

 良美が他人事の様に言う。

 小較が一人で、数体の猪とぶつかりあう。

『フェニックスウイング』

 小較の腕から炎が出て二匹の猪を弾き飛ばすが、猪の数は数十匹に及ぶ。

「ヤヤ呼ぶか?」

 良美の言葉に躊躇する小較だったが、しっかり首を横に振る。

「本当に必要だったら、ヤヤお姉ちゃんはきっと来てくれる。今居ないって事はあたしだけで何とかなるって事だと思う」

 その時、良美の携帯がなる。

 そして少し話した後、倒れていたモゴと静を叩き起す。

「良美さん痛いですよ」

 文句を言うモゴに良美が言う。

「歩の奴がまだ学園に残っている可能性がある。急いで探しに行け」

「歩ちゃんがですか?」

 モゴは一人で数十匹の猪と正面から戦う小較を指差して言う。

「小較さんの手助けした方が良いんじゃ無いんですか?」

 良美が怒鳴る。

「あっさり不意を突かれた気絶した奴等が居ても邪魔なだけだ。歩は八刃の血を引いている、八刃の異質な血は、魔獣を呼び寄せる急げ!」

 その言葉にモゴと静が駆け出した。

「そう言うことだ、ここに居る奴等は逃がすなよ!」

 良美の言葉に強く頷き、モゴを追おうとした猪に手を振る小較。

『ヘルコンドル』

 カマイタチがその猪を消滅させる。

「ヤヤお姉ちゃんが信用してくれてるんだからあたしは負けないよ!」

 そして小較が猪の集団に突っ込んでいく。



「どうしよう」

 歩は木の影に隠れていた。

 魔獣警報が発令された為、3Sの人間以外は帰っていた。

 歩は、3Sの活躍を見たく、残っていたがトイレに行った帰りに猪に見つけられて追いかけられて居たのだ。

「歩ちゃん何処!」

 モゴの声が聞こえて来たので、歩は木の影から出て手を振る。

「アユミはここだよ!」

 その声に応える様に猪たちが歩に向かって突進を開始した。

「歩ちゃん!」



 モゴは急いで水色の狼ぬいぐるみを取り出す。

『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、風斬狼』

 獣晶した風斬狼は、高速で猪を追撃し、二体の足止めが出来たが、一体はそのまま歩に突き進む。

 そして二体は、モゴ達に向かって突進してくる。

 静が手を広げて呪文を唱える。

『我が守護の意思に答え、炎よ我等を守れ、守炎翼シュエンヨク

 炎の防御幕が猪達の突進を受け止めるが、それが二人の限界だった。

 歩に向かう猪を止めるすべは二人には無かった。



 歩の声は探しに来ていた通の耳にも本当に小さい声だが聞こえた。

 そして、通は、眼鏡を外す。そして脳裏に優しかった曾祖母翼の言葉がよみがえる。

『貴女の目は私と一緒、どんな遠くの物でも捕らえる目。でも今は必要な無い力ね。だからこの眼鏡をつけてその力を抑えておきなさい。でも必要な時はその二つの目でしっかりと見てそして、捉えなさい。そうすれば貴女は決して外さない』

 通の目には通常では木々が邪魔して見えない筈の歩とそして歩に襲い掛かろうとしている猪の姿を捉えた。

 手に持っていたボウガンを猪に定める。

 そして絶対の確信の元、ボウガンの引き金を引く。

 ボウガンから放たれた矢は、まるで生き物の様な軌道を駆け、猪を貫き消滅させた。



「いけー風斬狼(×2)!」

『我が攻撃の意思に答え、炎よ敵を撃て、撃炎翼』

 モゴと静が残りの二匹と対決してる後ろで。

「トー姉怖かったよ」

 大泣きして通に抱きつく歩。

 その歩に怒った顔を向ける通。

「本当にバカなんだから!」

 しかし直ぐに歩を抱きしめて涙を流す。

「本気で心配したんだからね」

 そんな二人を遠くから見るヤヤ。

 そのヤヤの隣に来て良美が言う。

「較美も連れて来たのか?」

 眠っている較美を背負ったヤヤが苦笑する。

「預けられる人が居なかったから。でも間に合って良かった」

「お前でも助けられたか?」

 ヤヤは肩をすくめて言う。

「あちきじゃ、この距離を精密射撃不可能だから、後ろの校舎ごとに成ってたよ」

「通が間に合って良かったな」

 頷くヤヤ。

「光にとってだけどな。ヤヤだったら絶対校舎を壊すの躊躇しないからな」

 確信をこめて言う良美にヤヤが頷いた。

今回のモゴの収支



 ○収入

  突猪トツチョ退治サポート     80,000

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合計 = 80,000



 ○支出

風斬狼(触媒・ぬいぐるみ製造費)    2,000 × 2

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合計 =  4,000



◎利益

収入    80,000

支出 -  4,000

--------------------------------------------------

純利  = 76,000



●借金残高

繰越金額   199,744,100

返済金額   - 76,000

--------------------------------------------------

借金残高   199,668,100



今回の通の収支



 ○収入

  突猪トツチョ退治サポート     10,000

--------------------------------------------------

合計 = 10,000



 ○支出

キラーボウガンレンタル(無料)     000,000

--------------------------------------------------

合計 =000,000



◎利益

収入    10,000

支出 -000,000

--------------------------------------------------

純利  =  10,000



●通のサイフ中身

おこずかい残金        2,300

臨時収入   + 10,000

--------------------------------------------------

サイフ残金        12,300

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