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最後の最後でどんでん返しです

魔約解決。そして大きな展開が

「貴方達、弱いわね」

 ガールヤヤの言葉に、千剣が刀を構えて言う。

「五月蝿い、小細工ばかりでまともに戦う気は、ないのか!」

 ガールヤヤが無造作に接近する。

 千剣は、躊躇無く踏み込み、斬りかかる。

「同じことばかりして、飽きない?」

 ガールヤヤは、平然と左腕を犠牲にして千剣の動きを止めると、そのまま右手で喉を掴む。

『バハムートクロー』

 喉への気の攻撃の直撃で意識を失う千剣。

 歩とツモローが両側に別れて、色鳥矢とエアーマグナムで攻撃をするが、それをガールヤヤは、平然と弾く。

『カーバンクルダブルシールド』

 弾きながら、ツモローに接近する。

「何度も同じ手に引っ掛るか!」

 ツモローは、青い弾丸を取り出し、装填発射する。

『ブルーブリッドツー』

 ツモローのエアーマグナムから放たれた弾丸は、ガールヤヤの目前で氷の塊に変化して視界を塞ぐ。

『レッドブリッドツー』

 連続的に発射された赤い弾丸は、氷にぶつかり、激しく反応する。

「やった!」

 ツモローがガッツポーズをとった時、後ろから声がかけられる。

「誰を?」

 ツモローが咄嗟に前方に転がってから後方を確認するが、再び背後から声がかかる。

「フェイントとしては、面白かった。でもそれだけだね」

 ガールヤヤの手刀が決まり、一撃でツモローが沈黙する。

 残った歩が必死に色鳥矢を射るが、全て弾かれる。

「どうして当たらないの!」

 ガールヤヤが呆れた顔をして言う。

「遠糸は、神谷の次に白風との関係が深いのよ。対応方法は、完全に解明済みだよ」

 涙目になる歩の腹にガールヤヤの一撃が決まった。



「また敗れたみたいだな?」

 ゼロの言葉に、戻ってきた歩達がしょげた顔をする。

「強すぎる、やっぱりヤヤさんは、小さい頃から無敵だったんだ」

 ツモローの言葉にゼロが肩をすくめる。

「詰まらない冗談だな。お前の父親は、そのヤヤとバトルで破った数少ない人間の一人だぞ。ついでに言えば、練習で最後まで勝率が高かったのもお前の父親だ」

 ツモローが拗ねた顔をして言う。

「天才で、当時から達人だったからだよ」

 ゼロが溜息を吐いた時、ヤヤが来る。

「どうですか?」

 ゼロが首を横に振る。

「無駄かもしれない。新しい3Sの手配を急いだ方が良い」

「出来ます!」

 千剣が反射的に答えるが、ゼロが冷たい視線で言う。

「あの時代のヤヤに勝てないレベルで瞳輝に勝てると思っているのか?」

 怯む千剣を尻目にゼロがヤヤに話しを振る。

「あの当時のお前は、奴、瞳輝に勝つことは、出来るか?」

 ヤヤは、あっさり答える。

「無理。でも、出し抜くことは、可能かもね」

 歩が手を上げる。

「勝てないのに出し抜けるんですか?」

 ヤヤが頷く。

「根拠は、あちきは、当時から色々コネを持っていたって事。理由は、自分で考えなさい」

 そのままぬいぐるみショップに戻るヤヤ。

 首を傾げる歩達にゼロが言う。

「ヒントは、幾らでもある。ある意味お前達は、旧式の八刃だ。戦うことしか考えない。私達が望むのは、ヤヤや霧流の次期長の様な新しい八刃だ。その為には、何が必要かもう一度考えろ。次は、一時間後だ」

 ゼロは、その言葉を残して、出て行く。

 そして歩が腕を組んで言う。

「ヤヤさんや七華さんって何をやってたんだっけ?」

 ツモローが指を折りながら答える。

「それこそ山の様な事件と関わってたよな。幾つもの組織を潰したって聞いたぞ」

 千剣も続ける。

「七華さんと言うと、有名なのは、竜騎機将ナナカレイで戦った事だ」

 意味が解らない様子で悩む中、歩が言う。

「そういえば、ヤヤさんは、敵を倒すより、その後の後始末の方が大変だったって、よく愚痴ってたっけ」

 その一言に千剣が頷く。

「だから、戦うときは、後始末の事を考えて、戦うようにしていたって。あのガールヤヤもそれくらいの分別があれば良いのに」

「あー!」

 ツモローが叫ぶと千剣が眉を顰めて言う。

「いきなり大声を出すんじゃない」

 しかし歩の反応は、違った。

「何か気付いたの?」

 ツモローが答える。

「あたし達は、凄い勘違いしてたぞ。あたし達がやらないといけないのは、ガールヤヤや瞳輝の攻略じゃない。あたし達が本当にやらないといけないのは、魔約で発生した魔獣の退治だ」

 千剣がイラついた顔で言う。

「だから、その為には、瞳輝を倒すしかないんだろうが!」

 歩も気付いたように言う。

「そうだよ、別に倒す必要は無いんだよね」

 千剣が睨みながら言う。

「しかし、歩やツモローの技は、防がれてしまうだろうが!」

 歩が頷く。

「自分で言っていて気付かない?」

 その一言に千剣がある可能性に気付いて言う。

「しかし、それでは、ロスが大き過ぎる」

 ツモローが笑みを浮かべて言う。

「だからこそ相手の裏をかけるんだよ」

 千剣も少しずつ肯定しながらも否定意見を出す。

「しかし、上手く行くか?」

 歩が答える。

「その為の特訓だよ。ガールヤヤ程適応力高い相手だったら、瞳輝戦の練習になるよ」

 千剣もそれで納得する。

「絶対に勝って、3Sの地位を護る」

 頷く三人であった。



 歩達が特訓している夕食後、真兎と亜李子は、問題の双子の幼馴染、四月一日ワタヌキ夕夜をファミレスに呼びだして居た。

「前置き無しに聞く、陸奥覇矢と威矢との関係を正直に話してもらおうか」

 真兎の言葉に、夕夜が恥ずかしそうに言う。

「単なる幼馴染ですよ」

 真兎が肩をすくめて、亜李子が淡々と質問を続ける。

「あなたが、陸奥覇矢と肉体関係があるという情報は、掴んでいます」

 顔を真赤にし、戸惑いながら夕夜が言う。

「……誰がそんな事を?」

 亜李子が淡々とかえす。

「こちらの調査能力が優れているとだけ思ってください」

 夕夜は、躊躇しながらも言う。

「好きなんです」

 真兎が軽く溜息を吐いてから言う。

「別に構わないが、威矢の方は、どう思ってるんだ?」

 夕夜は、真剣な顔で答える。

「威矢くんも好きなんです」

 呆れた顔をして真兎が言う。

「どっちも選べないって事だな?」

 夕夜が首を振る。

「二人とも大好きなんです!」

 亜李子が少し考え込んでいる間に真兎が言う。

「解った。もしかしたらまた話しを聞くことになるかもしれないが、今日は、もういい」

 夕夜を見送った後に真兎が言う。

「詰り、決めきれなかった所を覇矢に強引に迫られて関係を結んだって所だな。威矢も納得しきれない筈だ」

「恋愛の勝負は、もう決まったって思いますか?」

 亜李子の質問に真兎が言う。

「そうだろうな。威矢もそう思ってしまったから魔約者になったんじゃないか?」

 亜李子が複雑な顔をして答える。

「夕夜って人、少し変でした」

 真兎が首を傾げる。

「どういうことだ? よくいる、優柔不断の女だと思うが?」

 それに対して亜李子が答える。

「二人が好きって感情に揺るぎが無い気がしたのだけど」

 真兎が首を振る。

「覇矢と寝てるんだ、威矢にとっては、救いにならないな」

 亜李子が資料を見直しながら言う。

「質問、ラビットは、自分が寝た女性から他の男性とも寝たいといわれたらどう思う?」

 眉を顰める真兎。

「どういう意味だ?」

 亜李子が首を振る。

「まだはっきりとした事は、言えない。でも次の襲撃ではっきりすると思う」

 真兎が複雑な顔をする。

「警察としては、一番考えてはいけないが、一番に考える事だな」

 亜李子が苦笑する。

「歩達に頑張ってもらいます」

 真兎が不安そうな顔をして言う。

「特訓でも、連敗続きみたいだぞ?」

 亜李子が力強く頷く。

「さっき電話があった。次は、絶対に負けないって」

 真兎が頭をかきながら言う。

「信じるしかないか。帰るぞ」

 真兎と亜李子が戻っていくのを見送ろうとした男の視線をその前に座っていたヤヤが制止する。

「見られる事に敏感だから気付かれるよ」

 その一言に向かいの男が舌打ちしながら言う。

「そうか、せっかく一部では、有名なインターポールのゴールデンルーキーの記事が書けると思ったんだが、もう少し我慢か」

 その男、時野トキノ勇士ユウシが言う。

「しかし、今回の件は、大丈夫なのか? 情報関係は、全て八刃による完全な監視が行われている。あの竜兵器も、全世界の人間がパニックにならない様に流布された。その監視網を抜けられるのか?」

 ヤヤが笑顔で答える。

「正確に言えば報道関係です。娯楽まで行くと、取り締まりようがありません」

 勇士がコーヒーを啜りながら言う。

「発見が遅れても直ぐにスポンサーに手を打たれて放送が中断や妨害されるおそれがある。実際に、何度かやられた」

 ヤヤが封筒を差し出して言う。

「そこには、十斗さんが大元の企業だけピックアップしてある。今回の企画が、十斗さんが協力を要請するって一筆も同封されてる」

 勇士が苦笑する。

「しかし、本当に良いのか? 八刃に対する裏切りだろ? まさかお前も先行者って奴に組するのか?」

 ヤヤが肩をすくめて言う。

「はっきり言えば、先行者は急ぎ過ぎ。どんなに時間が無くても多くの人間を動かすには、準備が要る。布石は、確実に一手ずつ打たないといけないのよ」

 勇士は、封筒を受け取り答える。

「金払いの良いスポンサーを用意してくれたんだ。後は、こっちの伝手で何とかしてみる。本当は、正攻法で、記事で勝負したいんだがな」

「後々ゆっくりやってください。そっちは、邪魔する可能性あるので、油断したらいけませんよ」

 邪悪な笑みを浮かべるヤヤに勇士が言う。

「一番厄介な敵の手助けしてる気がするぞ?」

「お互いに必要な一手ですよ」

 ヤヤが紅茶を静かに飲みながら答えた。

 立ち去る勇士を見送ってから、お土産用のケーキを注文するヤヤであった。



「こいつ等、進級できるのか?」

 真兎が授業中に豪快に寝ている歩達を見ると織羽が手を上げて言う。

「3Sのメンバーは、出席等で優遇されていますから大丈夫です」

 真兎が納得できない顔になる。

「お前等それで良いのか?」

 織羽が苦笑して言う。

「はい。ここって、出席さえとってれば比較的らくに進級させてくれますし、足りなくてもお金があれば3Sが使っている特別課外学習参加時間って適応されますし」

 頭を押さえる真兎。

「この学校は、教育委員会に訴えられるぞ」

 織羽が余裕の表情で言う。

「それは、大丈夫です、ヤヤさんが日本やアメリカ政府の弱み握っているのを知っていますから、大損害になるのに気付いてるので、事前に握りつぶされます。知ってました? 日本のマスコミの大元で、八刃が絶対的な発言力を保有してるんです。だから、こんな問題がある八刃学園がニュースすらならないんですよ」

 真兎が大きく溜息を吐いて天を仰ぐ。

「敵をどうこうする前に、この学園自体をどうにかした方が良い気がしてきたぞ……」

 織羽が遠い目をして言う。

「世の中、綺麗事だけじゃ生きていけないのよ」

「子供が増せたこといってるんじゃない!」

 真兎が怒鳴ったとき、校内放送が鳴る。

『魔約警報、現在、魔約によって生み出されたと思われる魔獣が、暴れています。一般生徒は、余計な干渉をせず、避難して下さい』

 それと同時に歩達が目を覚まして、場所を確認すると駆け出していく。

 亜李子も席を立ち。

「ラビット、行こう。魔約の真実を見極めに」

「あいつ等の頑張り次第だがな」

 クラスメイトを見送った後、織羽が言う。

「良いの? 今回は、勝負の分かれ目になるとあたしの予知には、出てるけど?」

 星語明日が頷く。

「目の前の勝負は、関係ありません、必要なのは、最終的な結果ですから」

 胸元の界門円を見る星語明日であった。



 輝石獣武装を済ませた歩達の前に立ち塞がるのは、毎度のように瞳輝であった。

「またやられにきたの?」

「今回は、歩達が勝つ!」

 歩が宣言し、千剣が背中の『ジェットウイング』で加速する。

「ワンパターンの特攻攻撃?」

 瞳輝が余裕の笑みを浮かべた。

華金カキン色鳥矢孵化』

 歩が色鳥矢を九尾弓に番え射る。

 色鳥矢は、なんと瞳輝と千剣の間に飛んでいく。

『羽撃』

 華金色鳥矢は、千剣と瞳輝の間に大きな金属の壁となった。

 その間に、千剣が豹の魔獣に接近し、腕の『ジェットブースター』をフル稼働させて、殲滅していく。

「やらせない!」

 瞳輝が攻撃に移ろうとした時、後方からツモローのエアーマグナムのブルーブリッドツーとレッドブリッドツーが放たれた。

 それは、激しく反応して瞳輝の周囲に濃霧を生み出す。

「考えてみればあんたの遠距離攻撃を防ぐのは、簡単なんだよ、こうやって視界を塞いでやれば良いんだから」

 ツモローの言葉に瞳輝が一睨みで濃霧を散開させて言う。

「これであたしを倒せると思ってるの?」

 歩が首を横に振る。

「無理だよ。基本的にレベルが違うから、接近戦になったらあっという間に終わりだもん」

 舌打ちする瞳輝。

「なるほど気付いたわけだ、あたしに勝つ必要なんて無いって事に?」

 頷く歩とツモローは、油断なく武器を瞳輝の周囲に向けて、視界を防ぐ為の準備を終えている。

 頭をかきながら瞳輝が言う。

「成長したね。あんた等強かったし、本当にやばい戦いは、通達がフォローしていた、だから自分の実力以上の相手に対する対応が不十分だった。自分より強い奴を敵に回したとき、目的を達成の為の手段を考える。それこそが勝つより大切だって事。先輩としては、嬉しいよ。でも、瞳輝としては、もう少し邪魔させて貰うよ」

 瞳輝が地面を凝視する。

「お父さん、後始末お願いね!」

 地面が盛り上がり、千剣達と魔獣を分断させる。

「幾らなんでも反則だろ?」

 ツモローの言葉に歩も頷いているが、地面は、どんどん戻っていく。

 用務員のおじさんが素早く修復しているみたいだ。

 しかし、その間も、魔獣の襲撃が止まらない。

 そして、豹の魔獣は、覇矢に襲い掛かった。

「覇矢、あぶない!」

 夕夜が叫ぶ。

 豹の爪が覇矢に当たる寸前、威矢が飛び込んだ。

 大怪我を負う威矢を見て、驚いた顔をする覇矢。

「どうして、こんな事をするんだ!」

 威矢は、遠い目をしながら言う。

「夕夜を悲しませたくないからだよ。覇矢が大怪我したら、あいつが悲しむ」

「お前が大怪我しても同じだ」

 覇矢の言葉に首を横に振る威矢。

「そんな事無い。俺は、見たんだ、二人がしている所を」

 覇矢の顔に憎しみが浮かぶ。

「お前は、いつもそうだ! なんでそんな良い奴なんだよ! そして、最後には、俺から全て持っていくんだろ!」

 周りの人間が驚く中、真兎が現れた。

「亜李子の詠み通りだったな」

 亜李子が頷き言う。

「覇矢さんあなたが魔約者ですね?」

 周囲の人間が驚く中、地面が戻って駆け寄ってきた千剣が言う。

「どういうことですか? 今回の魔約は、自分の前に立ち塞がる覇矢さんを威矢さんが排除しようとしたんじゃないんですか?」

 亜李子が首を横に振る。

「全ては、確実に後を追ってきて、全てを奪われると思った覇矢さんが、勝ち逃げする為だけの魔約だったんですよ」

 諦めた覇矢が叫ぶ。

「そうだ、何時も何時も俺の後を追いかけて、それも俺には、出来ない地道な努力でだ。俺は、俺なりに頑張った。タイムもあがるが、すぐ下がったりもした。着実にタイムを上げ続けているお前に勝ち続ける自信が無かったんだよ!」

 信じられない顔をする威矢と夕夜に亜李子が言う。

「天才の不安。天才は、無意識で何かをやり遂げてしまう。だから積み立てが無い。失敗は、成功の母って言葉がある様に、失敗の無い成功程、不安な物は、無い」

 困惑する夕夜の肩をたたき真兎が言う。

「止めを刺したのは、お前の一言だよ。予測だが、寝た後に言ったんだろう、威矢も好きだって」

 周りの人間が信じられない物を見るような目で見る中、夕夜が頷き言う。

「ずっと夢だったんです、覇矢と威矢と三人で恋人になるのが。具体的に言うと前後から……」

「具体的に言わなくても良い、中学生も聞いてるんだ!」

 真兎が怒鳴る。

「それでも最後には、努力家で性格の良い威矢を選ぶんだ!」

 覇矢は、叫びと共に周囲の豹の魔獣と融合して、魔約獣と化す。

 千剣が牽制する中、瞳輝が亜李子の横に現れる。

「こっちの用事は、終わったよ。導輝からのヒントで、夕夜は、単なる双子好きだから、兄弟愛をメインに説得したほうが良いってよ」

 それを告げると、無関係の人間を操って避難させる瞳輝こと、瞳子。

「勝手な事を言ってくれる」

「でもやらないと行けません。覇矢さん、貴方は、負けるのを怖がっているだけです」

『五月蝿い』

 豹のスピードで亜李子に迫る魔約獣。

 氷の壁が立ち塞がる。

「大丈夫!」

 ツモローが叫ぶ中、亜李子が続ける。

「負けるのが嫌いなら勝ち続けなさい。勝つ為の出来る事は、無限にある筈です」

『五月蝿い、お前に威矢の凄さが解るもんか!』

 魔約獣の言葉に、威矢が戸惑いを浮かべる。

「覇矢は、俺の事なんて雑魚だと思っていると思って居た」

 魔約獣が叫ぶ。

『誰が雑魚だ。何時も何時も確実に俺の後を追ってきやがって。こっちだって先行するのにどれだけ大変だったか!』

 真兎が呆れた顔をして言う。

「詰りお前等、二人とも相手の事を意識していた。だからこそ、こんな良い成績だせたんだよ。結局双子だったから出せた結果なんだよ」

 魔約獣になった覇矢と威矢が視線を合わせる。

『俺は、お前に絶対に負けない!』

「俺だって、絶対に勝ってみせる!」

 魔約獣の体の一部が強く光る。

『スターダスト』

 歩の一撃が魔約星を打ち砕いた。

「やったね!」

 手を合わせる歩達に真兎が言う。

「気楽にしてるな。瞳輝の奴が言ってたぞ、目的を達成したと」

「えー」

 歩が驚きの声を上げるのであった。



 導輝と落ち合った瞳輝が言う。

「これで、界門円に十分な力が貯まったのね?」

 導輝が頷く。

「異界との門を開き、新たな世界への一歩が進めます」

 しかし、導輝が持つ界門円が一本の槍によって奪い取られる。

「残念だが、これは、こっちで預からせて貰う」

 声の方向に素早く瞳輝が攻撃の視線を向けるが、弾かれる。

「まさかこのタイミングを狙われるとは、思いませんでした」

 導輝の言葉に小さく溜息を吐いて界門円を奪い取った軽そうな青年、霧流一刃カズバが居た。

「ヤヤさんから、あんたの予知から逃れる為に、異界で待機しろと指示があってね。ちなみにこのタイミングは、瞳輝の動きから読んだんだよ、別に予知能力が無くても予測が可能だって良い例だな」

 導輝が苦しげな顔をして言う。

「それでどうするのですか? 私達は、それを確実に取り戻します」

 一刃が平然と答える。

「総力戦だよ。三日後に全戦力を集める。そっちもそうしろ。それがなされなければ、こっちは、これを砕く」

 瞳輝が舌打ちする。

「どうせ、ヤヤさんの独断でしょ。八刃全体で動いていたら、導輝が絶対に気付いていたよ」

 導輝が強い目で答える。

「了解しました。三日後の放課後、場所は、この学園ですね?」

 一刃が頷く。

「中央に特殊な結界を張る。それを構成するのに四つのエリアで特殊な要を作る。それのどれか二つがこわれない限り、絶対に壊れない。詰り、メイン戦場は、五カ所。予想合戦だ」

「それで、ヤヤさんからの伝言を聞いておきたいのですが?」

 導輝の質問に一刃が肩をすくめる。

「予知能力者は、驚かせる楽しみが少ないな。ヤヤさんは、『遺恨が無い様に。結果に問わず、先行者に加わった若い奴人へのフォローは、任せて』と言っていた」

 複雑な顔をする導輝。

「獣輝より、先行者の考えを理解して、未来を考えている人ですね」

 瞳輝が頷く。

「ヤヤさんは、昔からそう。抜け目が無く、狡猾な八刃の長達相手に、立ち回ってきた人だからな」

 一刃が空間を移動して消えていくのを見送ってから導輝が言う。

「これが、先行者の行く末を決める一戦です。絶対に勝ちます」

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