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前回あたりで、魔約者は解って居たでしょ?

遂に魔約者が判明する。そして麻美の力が発動する?

「全部、偶然だって言い張るの?」

 モゴの言葉に、麻美が怯む。

「あたしは、関係ありません」

 モゴは困った顔をする。

「多分そうだと思うんだけど、どう考えてもここで会うのって、必然だよねー」

 通も困惑しながら言う。

「詰り、やっぱ麻美が関係してるって事か?」

「何言いたいのか解らないが、麻美になにかしようというんだったらただじゃおかないぞ!」

 晴菜の言葉に顔を見合わせるモゴと通。

「無関係って事はまずないと思う。多分、こっちの調査を混乱させる為に利用されたって考えるのが普通だね」

「やっぱりそうか」

 二人が溜息を吐く。

「こうやって事件をややこしくしてその間に、目的達成させようって狙いだね」

 モゴの考えに通が愚痴る。

「魔約者を探すこっちの身にもなってみろっていうんだ」

 麻美達を置いて、話を進めるモゴと通であった。

「あのー、あたしは、疑われているんですか?」

 麻美がオドオドしながら聞くと、モゴが首を振る。

「ここで貴女を疑るほど、あちき達は素直じゃないよ。本当に、余計な手間ばっかり増える。これでは借金返済が滞るばっかりだよ」

「しかし、この寮だって事は間違いない。そして関係者を搾り出せば良い筈だ。さっさと調べるよ!」

 通は、そう言って、寮に入っていった。

「結局なんだったんだ?」

 首を傾げる晴菜と、疑られると思って居たのにあっさり開放されて安堵する麻美であった。



「結局成果なしって事だな?」

 良美の言葉に、力なく頷く静。

「はい。玄武の寮に居た、人達は一通り調べましたが、御魂玉を強引に入手しようとしていた人間は居ませんでした」

 溜息を吐いて通が言う。

「入り口で余計な事をやってる間に逃げられたって事だよ」

 意気消沈している3Sのメンバーに較美を寝かせつけてきたヤヤが言う。

「誰が魔約者か本当に解らない?」

 首を傾げる一同に、ヤヤが苦笑して言う。

「相手の術中に嵌っているよ、少し考えれば解るわよ」

「あたしは、なんとなく解った」

 帰ってきた小較が答える。

「誰なのですか?」

 静がストレートに質問すると、ヤヤが小較に御飯をよそりながら言う。

「頭を使いなさい。人に教えて貰っていては、成長しないわ」

「でも被害が広がる可能性がありますよ」

 モゴの極真っ当な言葉にヤヤが余裕たっぷりな態度で質問を返す。

「何のために私が、ここに居ると思っているのかしら?」

 それが答えだった。



「それで教えてもらえなかったんだ?」

 翌日の教室で話を聞いた雅が聞くと、モゴが頷く。

「ヤヤさんも鍛錬には厳しい人だからねー」

「でも少ししか話聞いていない小較さんまでわかったのですから、簡単なことの筈です」

 静の言葉に、モゴが頷く。

「一番、動機がある人間の可能性が無くなったし、誰が御魂玉を欲しがっているのかな?」

 雅が首を捻って言う。

「そうだね、歴史探求部の人間が怪しいけど、部長も副部長も違うんでしょ?」

「そうそう、残りの部員も、後二人しか居なくて、一人は引っ掛けだしねー」

 通が何気なく言った時、モゴが驚いたように立ち上がる。

「そうだ、残り一人が居た。それもあの場所に!」

 その時、アナウンスが入る。

『3Sのメンバー、御魂玉が強奪されたわ! 早く回収して!』

 光の声に、通が呆然とする。

「御魂玉って確か、八刃の人間が護衛してる筈じゃなかったのか?」

 そこに小較が入って来て言う。

「高額で借りたいって人が居たので、光が貸し出そうと輸送している所を狙われた」

 苦笑する静。

「理事長らしいですね」

「折角、解ったんだ、逃がしてたまるか!」

 駆け出す通。

「待ってください」

「落ち着きが無いんだから」

 後をついていく、静とモゴであった。



「晴菜、それどうしたの?」

 晴菜の寮の自室に遊びに来た麻美が恐る恐る尋ねた。

「解らない?」

 妖しい笑みを浮かべる晴菜。

「まさか御魂玉じゃないよね?」

 自分の勘違いである事を望みながら麻美が答えると満身の笑みで晴菜が答える。

「そうだよ、これでお父さんの研究が正しかった事を証明できる」

 困惑する麻美。

「どう言う事?」

 晴菜が御魂玉を掲げて言う。

「葉月教授の、あたしの父親の研究が証明できるの」

 呆然とした顔で麻美が呟く。

「どう言う事ですか?」

 晴菜は喜びを隠し切れない表情で続ける。

「お母さんとは別に奥さんが居たから戸籍は入ってなかったけど、認知はしてもらって居たんだよ。何度か会った事もあるの」

 父親の顔を思い出しながら晴菜は続ける。

「お父さんの助けに成れる様に、歴史探求部にも入ったんだよ。それなのにお父さんが研究半ばで事故にあい、死んだの」

 途端に悲しげな表情になる晴菜だったが御魂玉を見つめて続ける。

「お父さんの意思を継ぐのはあたしじゃなければいけないの! 誰にも邪魔はさせない!」

 激情する晴菜に畏怖しながらも麻美は、勇気を振り絞って言う。

「晴菜は、間違っている!」

 その一言に、愕然とした表情で晴菜が麻美を見る。

「何言うの? あたしは、間違っていない!」

「晴菜のお父さんも犯罪をしてまで、研究を続けて欲しいわけないよ」

 麻美が搾り出す様に言うと晴菜は麻美に掴み掛かる。

「何にも解らない癖に!」

「苦しい……止めて」

 麻美はそう言って、手を外そうと触れたとき、強い思いが強制的に麻美の力を発動させる。

『何で大切な研究費をこんなガキの為に削らないといけないんだ』

『若気の至りで、面倒なことしたな』

『五月蝿い、養育費など払ってる余裕なんて無いんだ! あの御魂玉さえ手に入れば、俺の研究が認められるのだ!』

 麻美は見た、傲慢な顔をした男の顔とその瞳に映る、悲しそうな幼い晴菜の顔を。

「晴菜、お父さんに優しくされた事無いの?」

 その一言が、晴菜の理性の意図を切った。

「何よ、化物の娘の癖に!」

 驚きのあまり、何もいえなくなる麻美。

「あの人に教えてもらったよ、貴女の父親は、人間じゃ無いんだってねー。そして貴女も人間じゃないんでしょ?」

 麻美は何も言い返せず、沈黙する。

「化物の癖に人間の感情を解った風に言わないでよ!」

 晴菜が麻美を突き飛ばす。

「キャー」

 麻美が壁にぶつかりそうに成ったが、風を切り裂く能力を持つ、狼の輝石獣、風斬狼が、受け止めた。

 そして、麻美の前に立塞がり通が言う。

「親友だったんじゃないの!」

 それに対して晴菜がいう。

「勘違いしないでよ、誰がそんな化物と友達なもんですか! 親がいないそいつを哀れんでいただけよ!」

 その言葉に麻美が静かに涙を流す。

「気にしなくても良いよ、化物は麻美だけじゃないよ。あちき達なんて、元からチンパンジーより遺伝子配列違う人外だもんね」

 微笑み宣言するモゴ。

「百母さん」

 顔を上げる麻美を雅に預けて、モゴも晴菜の前に立つ。

「大人しく御魂玉を返して、魔約を解約して下さい。悪いようには、しません!」

 静が説得しようとするが、晴菜は、受け付けない。

「だれがそんな言葉を信じますか!」

「その通りよ」

 声と共に、晴菜の後ろにメイダラスが現れる。

「あの連中は、御魂玉を貴女から奪い、犯罪者として扱うわ。もう貴女は、この御魂玉で研究を完成させるしかないのよ!」

 頷く晴菜にメイダラスが微笑む。

「騙されちゃ駄目です!」

 静の必死の叫びは届かなかった。

 メイダラスの手が、晴菜に体内に入る。

『汝の欲望を阻む存在を自らの力で打ち砕け、魔約獣』

 呪文に答えて、晴菜の全身がカラスの羽根に覆われる。

 遠吠えと共に、無数とも思える、烏の魔獣、疾風烏シップウオが召喚される。

「輝石獣武装するよ!」

 通の言葉に、モゴと静が頷き、 アニライズクリスタルを掲げる。

『百母栗理との約定を持ちて、この装備を寄り座しに、輝石獣よ獣晶し、我が力になれ、爆炎鷹/烈風隼/地孔雀』



『輝石獣武装『爆炎鷹』・『烈風隼』・『地孔雀』がコールされました』

 九菜作成の人工知能『HUTABA』の言葉に九菜が頷き言う。

「座標確認!」

 九菜の言葉に答えて、輝石獣武装システム室の中央にある八刃学園のモデルの玄武エリアの寮が点滅して拡大映像が半球のカバーに展開される。

『座標確認終了しました』

 『HUTABA』の声に九菜が頷く。

「セーフティー解除!」

『セーフティー解除。輝石獣武装『爆炎鷹』・『烈風隼』・『地孔雀』開放します』

 『HUTABA』の声と同時に、円柱の水槽に収まっていた輝石獣達が、水槽を透過して八刃学園のモデルに突っ込んで行った。



 空中に穴が開き、三匹の輝石獣が、モゴ達に迫る。

 モゴは、素早く制服の脱ぐと、爆炎鷹が、モゴの背中につき装備が展開する。

 通は、少し躊躇しながら制服を脱ぐと、地孔雀が、通の背中につき装備が展開する。

 静は、制服を脱がずに、そのまま烈風隼が展開されて、制服が破ける。

「ストームウイング展開!」

 背中の羽根が伸びて、静を包めるほどになる。

『我が攻撃の意思に答え、炎よ全てを爆炎に包め、爆炎翼』

 静の前で発動した爆炎は、『ストームウイング』から放たれたストームに巻き込まれ、指向性を維持して増幅、広域化して疾風烏を打ち砕いていく。

 モゴがそれで出来た時間を使って、渦巻きをもった竜のぬいぐるみを取り出す。

「大技行くよ!」

 精神統一をするモゴにも少数だが襲ってくる疾風烏も居たが、モゴの特殊装備『ファイアーフェザー』が撃墜していく。

『『乱れし風の渦と共に在らん竜』、百母桃の名の元に、その身をならび在れ。双獣晶ソウジュウショウ

 輝石獣、乱風渦竜が、二体並んで獣晶して、魔約獣に向って突き進み、その風の渦で疾風烏を蹴散らして、道を作る。

「スターブラスターセット」

 通の言葉に答えて、腕に装備されていた鏃が、純白色鳥矢にセットされ、背中の極彩色の尾羽が伸びると床を透過する。

 通のゴーグルにメータが出て、どんどん溜まっていく中、通が舌打ちする。

「魔約星が判断できない!」

 モゴと静が慌てて魔約獣を見る。

「魔約星らしきものが複数あります」

 モゴが頷き言う。

「あれじゃ、通でも撃ち抜けないよ」

 メイダラスが微笑む。

「何時までも弱点を残しておくほど、あたし達は甘くないのよ」

 魔約獣の召喚によって次々と現れる疾風烏に、乱風渦竜の力がどんどん削られていく。

 苛立つ通達にメイダラスが余裕たっぷりな態度で言う。

「貴女達のその装備を使えば、魔約者を殺すつもりだったら滅ぼせるわよね?」

 モゴは難しい顔をするが、通が即答する。

「そんな事はしない!」

 メイダラスが高笑いをあげる。

「甘いわね! 大人の八刃だったら、魔約者を殺してでも、滅ぼすわよ」

 静は信じられない顔をする。

「そんな事は考えられません」

 静の肩に手を置いて、モゴが首を横に振る。

「八刃の人間は正義の味方のつもりは全然ないから、ことと次第によっては、一般人を殺してでも目的を達成するよ」

 静が驚くが、通が怒鳴る。

「あたし達は、あたし達の戦い方をする! モゴ、何か手を考えなさいよ!」

 モゴが腕を組んで言う。

「考えるといっても、多分複製は、本物のパーツを使っている筈だから、力の総量が違うくらいの違いしか無い筈だけど、魔約獣状態では、判断のしようがないよ」

 歯軋りをする通。

 その時、麻美が戻ってきた。

「晴菜やめて!」

 魔約獣の遠吠えが一瞬だけ止まる。

 直ぐに再開するが、麻美は諦めず続ける。

「あたしは、信じる。一緒に悩んでくれた晴菜を。例え同情があったかもしれないけど、親友だった事は信じたい!」

 魔約獣の遠吠えが止まる。

「だからあたしは、止めたい。お父さんが何者かなんてあたし達には関係ない! あたし達はあたし達の進む道を選ぶべきです!」

 魔約獣が麻美を見る。

 麻美は、震える足で近づき、魔約獣の前に立ち宣言する。

「あたしは、ずっと親友です。だから、間違っているのなら正します! 例えお父さんの願いに反し、オーフェンと関わる事になっても!」

 通の目が、激しく拒絶反応を起こす、魔約星を捉えた。

『スターブラスターアローシュート』

 矢は、麻美の頭上を通過して、魔約獣を貫く。

『スターダスト!』

 魔約星が粉砕されて元の姿に戻る晴菜であった。



「臭い台詞ね」

 魔約獣の動きが止まったところで、逃げに入ったメイダラスが、苦虫を噛み潰した顔で言った。

「臭い台詞を真面目に言える人間が、一番正しいんだよ」

 目の前に現れるヤヤにメイダラスが溜息を吐く。

「また、貴女なのですか?」

 ヤヤは、冷静に返す。

「前回と同じだと思わないことだね」

 次の瞬間、鏡を始めとする、谷走とその分家に因る包囲網が形成される。

「倒せない相手ではないけど」

 周りの相手を確認した後、ヤヤを見る。

「貴女から逃亡する邪魔にはなるわね」

 その言葉に鏡が頷く。

「最初からそのつもりです。私達の目的は、貴女を逃がさないこと。その為に命を捨てる覚悟もあります」

 メイダラスが苦笑する。

「諦めますか」

 肩を竦めるメイダラスにヤヤは咄嗟に叫ぶ。

「散れ!」

 全員が大きく離れた時、メイダラスが爆発した。

 周囲の建物が砕けた時に発生した煙が晴れた時、そこには、何も無かった。

「観念して自爆したのか?」

 谷走の分家の一人が呟いた時、ヤヤが首を横に振る。

「以前一度やられた事があるよ。自分の力の大半を犠牲にして、大爆発を起こし、大切な部分だけ逃げるトカゲの尻尾戦法だよ」

 ヤヤは、モゴ達を見下ろして言う。

「それでも回復には時間が掛かるから暫くは平和な筈よ」



「無事解決したみたいね」

 事件の後始末の為に来た小較の言葉に、頷くモゴ。

「なんとかね」

 学園の医療チームに連れて行かれる晴菜を見送った後、麻美が小較のところに来て頭を下げる。

「前、八刃の人に言われました。出来るだけの事をしてくれると」

 小較が頷く。

「ヤヤお姉ちゃんの言葉だね。何かお願いがあるの?」

 麻美が少しだけ躊躇した後に言う。

「晴菜を処罰しない様に力をかけてください!」

 小較が驚いた顔をして言う。

「利用した相手の為に、親の敵の力を借りたいと言うの?」

 麻美が力強く頷く。

 小較は笑顔で言う。

「親友って良いもんだね。あたしも久しぶりハナに会いたくなったなー」

 その言葉に、雅が乗ってくる。

「ハナって初代3Sメンバーの一人ですよね?」

 頷く小較。

「そう、今は、オーフェンハンターの一人として海外に行ってるけどね。良い機会だから、あたしたちがメインで動いていた時の話でもしてあげるよ」

 雅が嬉しそうに言う。

「面白そう。カオス状態だった八刃学園初期の3Sだもん、面白い事いっぱいあったんですよね?」

 小較が遠い視線をして言う。

「そうだね、あの頃は、結界も不十分で、一般生徒にもそこそこ被害がでてた時だったねー」



 こうして小較の昔話が始まるのであった。

今回のモゴの収支


 ○収入

  魔約(疾風烏)解除                   500,000

  輝石獣武装モニタリング料金          +   100,000

--------------------------------------------------------------------------------

合計          =   600,000



 ○支出

  戦闘費用については、全額支給               0.000

--------------------------------------------------------------------------------

合計 =    00,000



◎利益

収入      600,000

支出  -    00,000

--------------------------------------------------------------------------------

純利   =   600,000



●借金残高

繰越金額       258,328,100

返済金額   -     600,000

--------------------------------------------------------------------------------

借金残高       257,728,100



今回の通の収支

  魔約(疾風烏)解除                   500,000

  輝石獣武装モニタリング料金          +   100,000

--------------------------------------------------------------------------------

合計          =   600,000



  戦闘費用については、全額支給               0.000

--------------------------------------------------------------------------------

合計 =    00,000



◎利益

収入      600,000

支出  -    00,000

--------------------------------------------------------------------------------

純利   =   600,000



●通のサイフ中身

おこずかい残金           545,300

家への入金 -   200,000

退治バイト利益    +   600,000

--------------------------------------------------------------------------------

サイフ残金           945,300

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