お約束パワーアップ装備、その名も輝石獣武装
魔約者を使い、無数の魔獣を生み出すオーフェンに対して、3Sでは新たな装備が試験運用される
「新装備のモルモットになれって言うの!」
八刃学園の中央にある、特殊清掃委員の部屋に集められ、良美から説明を受けた後、通が怒鳴る。
「端的に言えばそうよ」
良美があっさり認める。
「良美、もう少し言葉飾ったら?」
小較のフォローに対して良美は肩を竦ませて言う。
「言葉飾ったところで事実が変る訳でも無い。まだ実験段階の装備をこいつ等に使って試そうとしてるのは本当だぞ」
通が立ち上がり言う。
「あたしは嫌だからね!」
それに対して良美が言う。
「ヤヤからも拒否権は認めて良いとOK出てるから構わないが、前回みたいに手も足も出なくても良いんだな?」
その一言に、通の動きが止まる。
「トー姉の代わりは歩がやりたい!」
早速立候補する歩に通が手を引っ張り言う。
「駄目! そんななんだか解らない物は、あたしが許しません!」
「歩装備してみたい。きっとアニメの主人公みたいなカッコイイ装備なんだよ!」
歩が駄々をこねる。
「カッコイイ訳無いでしょうが!」
「酷いわ、デザインにはそこそこ自信があるのよ」
通が出て行こうしたドアから九菜が入ってきて言う。
「今回の新装備って九菜さんが作ったのですか?」
静の言葉に九菜が頷く。
「そうよ。竜騎機将の技術を応用した新装備って事で前々から研究が行われていたの」
その言葉に小較が言う。
「オーフェンに対しての武器としてですか?」
頷く九菜。
「色々の試行錯誤の結果、輝石獣をベースにするのがベストだと結論に達したの。輝石獣を機械的に獣晶させて、装備と一緒に使用者が装着する事で、装着者の戦闘力をアップさせるのよ」
嬉しそうな九菜の言葉にモゴが手を上げる。
「機械的に獣晶を行うなんて事は可能なんですか?」
百母一族の沽券に関わる事なので真面目な口調のモゴ。
「最初だけは高位の百母の人に獣晶してもらい、それを半獣晶化する事で何とかなる事が研究の結果判明したの」
安堵の息を吐いてからモゴが言う。
「高位の使い手ってもしかしてお祖父ちゃんですか?」
その言葉に、九菜が苦笑する。
「最初はそっちの意見があがったらしいが、いちいちそんな事するくらいなら、自分に戦闘させろって言ってきたから、栗理さんに頼む事になったよ。今、七華が呼びに行ってる」
良美の答えに合わせる様に、ドアが開き、七華と何処にでも居る普通の優しげな主婦が入ってくる。
「ママ」
モゴがそう言って、その女性、百母栗理に抱きつく。
「モモ元気にしてた?」
その言葉にモゴは、栗理の方を少し睨むように見て言う。
「何でパパを止めてくれなかったの?」
その言葉に少し辛そうな顔をして栗理が答える。
「ごめんなさい。でもやる気に満ちたあの人の顔見てたら止められなかったの」
最後にはまるで夢見る乙女モードになる栗理に少し後退する通。
「従兄妹同士だけど熱愛夫婦。娘が居るのに新婚状態から脱出出来ない、真性のバカップルだよ」
七華が呆れた口調で言うと、九菜が小さく笑う。
「何ですか九菜さん?」
七華が問い詰めると、九菜が言う。
「だって、あたし達から見ると、七華ちゃんとブンさんもバカップルよ」
その一言に、慌てる七華。
「こんな所で言う必要ないですよ!」
静が傍に居た小較に言う。
「ブンさんって誰なのですか?」
小較が笑いを堪えながら言う。
「七華の恋人で、異世界の人。七華って凄いぞっこんだったりするのよ」
「本当?」
歩がそう言ってにじり寄ってくる。
通も関心無さそうな顔をしながら聞き耳を立てる。
「ゴシップネタも良いが、本題いくぞ」
色恋沙汰は不得手な良美が強引に話を戻す。
「それでどうするの? 通がやらないのだったら、それでも良いけど、余った装備は誰かがつける事になる。遠糸用に調整されているから」
良美の言葉に歩は期待いっぱいの顔をするのを見て、通が言う。
「やれば良いんでしょ、やれば!」
「部長との恋の邪魔者を消す力が欲しいのね?」
メイダラスの言葉に、魔約を望む者が頷く。
「いいでしょう貴方にその力を授けるわ」
メイダラスは、星型の石、魔約星を相手の胸に押し当てて唱える。
『汝の欲望を満たす約定の星を、汝と一つとせん。魔約星』
呪文と共に、魔約星は、相手の胸に入り込む。
「自分の欲望が儘に動きなさい!」
八刃学園の地下にある特殊施設。
円柱の水槽に、三体の輝石獣が入っている。
全部鳥形の輝石獣であった。
「一体3000万で一年間レンタルと言う事でいいですね」
九菜の言葉に栗理とモゴが驚く。
「本当ですか! そんな大金を貰っても構わないのですか?」
興奮気味に栗理が尋ねると平然と九菜が頷く。
「まったく問題ありません。足らないようでしたら、ヤヤさんに交渉すればあがると思いますよ」
その一言に、首を思いっきり横に振る栗理とモゴ。
「欲張りません! それより今後も同じ様にお金払ってもらえるんですか?」
モゴの質問に九菜があっさり答える。
「ええ、でもこれで結果出したらの話になるわよ」
その言葉にモゴが燃えた。
「絶対結果出して見せます!」
栗理もそんな娘の肩に手を置き言う。
「百母の未来は貴女の双肩に懸かってるわ!」
強く頷くモゴ。
「実際どの様な装備なのですか?」
静の言葉に九菜が三人にペンダントを渡す。
「そこに埋まっている宝石には特殊な加工が施してあって、それを掲げて呪文を唱えれば、八刃学園内部だったらどこでも、装備可能よ」
通がこのペンダント売ったら幾らになるのだろうと考えて居た時、光の声で放送が入る。
『3Sに緊急通達、図書館に魔獣が発生したから急行して!』
その言葉にモゴが拳を握り締めて言う。
「丁度良い! 新装備にお披露目のチャンスだよ!」
モゴが駆け出していく。
「待ってください」
慌てて後を追う静。
「今回は楽できそうだね」
呑気な通。
そんな一同の後ろ姿を見送りながら九菜が言う。
「ところであの子達、呪文知らないでどうやって新装備使うつもりなのかしら?」
その言葉に溜息を吐く小較。
「勢いで動いてしまったんでしょう。呪文教えて下さい。あたしが伝えます」
「魔獣はどこ!」
モゴが図書館に入るとそこには尾が二つある猫の大群が居た。
その中心では、大柄の男がその猫に襲われていたが、必死に抵抗していた。
「こんちくしょう!」
モゴは不敵な笑みを浮かべて言う。
「新装備の実力今示してあげる!」
その時、通が言う。
「どうやって?」
その一言にモゴが振り返り言う。
「このペンダントを使えば、学園内だったら呪文一つで装備が可能だって話でしょ?」
通が質問で返す。
「その呪文は?」
モゴが固まる。
「暴走しない。あたしがちゃんと聞いて来たから」
少し遅れて到着した小較が、モゴ達に呪文を教える。
そしてモゴは、ペンダントをかざして呪文を唱える。
『百母栗理との約定を持ちて、この装備を寄り座しに、輝石獣よ獣晶し、我が力になれ、爆炎鷹』
『輝石獣武装『爆炎鷹』がコールされました』
九菜作成の人工知能『HUTABA』の言葉に九菜が頷き言う。
「座標確認!」
九菜の言葉に答えて、輝石獣武装システム室の中央にある八刃学園のモデルの高等部図書館が点滅して拡大映像が半球のカバーに展開される。
『座標確認終了しました』
『HUTABA』の声に九菜が頷く。
「セーフティー解除!」
『セーフティー解除。輝石獣武装『爆炎鷹』開放します』
『HUTABA』の声と同時に、円柱の水槽に収まっていた鷹の輝石獣が、水槽を透過して八刃学園のモデルに突っ込んで行った。
モゴの直ぐ上の空間に穴が開き、そこから爆炎と機械部品を纏った鷹、爆炎鷹が飛んで来て、モゴの背中に密着する。
爆炎鷹の体に装着されていた装備が、モゴの体に展開される。
頭には目を特殊ガラスでカバーするヘルメット。
両肩、両胸、肘先、腰、膝下に強化パーツが装着される。
最後に、爆炎鷹が翼を広げたところで目立つようにポーズをとるモゴ。
通が信じられない様子で言う。
「あれあたし達も装備するの?」
静が気絶する。
「さーこの新装備が有る限り負けないんだから!」
モゴが自信たっぷりに言う。
「どうやって攻撃するつもりだ?」
静を支えながら小較が聞くと再びモゴが固まる。
そこに一斉に中位の魔獣、双尾猫が襲い掛かってくる。
咄嗟に両手を振るった時、爆炎が両手から放たれて双尾猫は撃退された。
『モゴちゃんのは、モゴちゃんが輝石獣を獣晶する間の防御と、簡易攻撃出来る用に、簡単な動作で爆炎を放てる仕様したわ』
ヘルメットから聞こえる九菜の説明にモゴがガッツポーズをとる。
「ありがとう九菜さん。これでおもいっきり強力な輝石獣が使える!」
そう言って、背負っていたリュックサックから、亀のぬいぐるみを取り出す。
その間も、双尾猫達はモゴに襲い掛かる。
反応しようとしたモゴに再び九菜が声をかける。
『大丈夫、術中に襲ってくる敵に対しては自動防御システムもあるから』
その言葉に答える様に、爆炎鷹の翼から羽根が飛び出して、双尾猫達を弾き飛ばしていく。
モゴは集中を開始して亀のぬいぐるみを掲げて唱える。
『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、『光を射る亀』よ我が願いに答え、獣晶せよ、光射亀』
亀は大きさこそそう変らないが、首と手足を引っ込め回転しながら飛び、双尾猫達の中心に特攻をかける。
そして、手足の穴から連続して光を撃ち出しあっという間に双尾猫を殲滅してしまう。
「新装備の勝利だよ!」
勝利のポーズをとると、周りが拍手喝采した。
「不満気な顔をしない。次があるわ」
メイダラスの言葉に魔約者は、舌打ちをする。
「安心して、あんなコスプレモドキが幾ら強かろうが、魔約者だとばれない限り、きっとチャンスがあるわ。くれぐれも魔約者だと言う事に気づかれない様にきをつけて」
魔約者は頷き、人ごみに紛れた。
「面白い装備を考えたわね。でも駄目、最初から力押しでどうにか出来ると思っていないもの。貴方達が魔約者を見つけられない限りあたし達の負けは無いのだから」
微笑を浮かべるメイダラスであった。
「いつまで装備つけたままなんだよ?」
通の言葉に、モゴが言う。
「そうだね、装備脱がないとね」
輝石獣武装を解除すると、爆炎鷹は、再び空間の穴から戻っていった。
その次の瞬間それは起こった。
モゴの服が体からすべり落ちて行ったのだ。
「嘘!」
慌ててしゃがむモゴに小較が自分の上着を着せる。
周りの男子の数人が鼻血を出して倒れた。
「どうして!」
モゴの大声を上げる中、通は、落ちた服を確認して言う。
「あの装備を無理に展開したせいで、下に着ていた服が千切れてたみたいだぞ」
その言葉にモゴが叫ぶ。
「九菜さんの馬鹿!」
今回のモゴの収支
○収入
双尾猫退治 100,000
輝石獣武装モニタリング料金 + 100,000
輝石獣一年間レンタル料金 + 30,000,000 * 3
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合計 = 90,200,000
○支出
光射亀(触媒・ぬいぐるみ製造費) 30,000
制服の買い替え費用 + 30,000
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合計 = 60,000
◎利益
収入 90,200,000
支出 - 60,000
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純利 = 90,140,000
●借金残高
繰越金額 349,008,100
返済金額 - 90,140,000
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借金残高 258,868,100




