借金してる時は堅実に返すことだけ考えましょう
今回も比較的平和なお話です(約一名を除き)
夕食を食べ終えた時、ヤヤがモゴに言う。
「七華から連絡があったわ。百母の次期長夫妻は、七華の見積もりだと一億くらい儲けているから、順調に行けば直ぐに借金返せるわよ」
その言葉に思わず神に感謝の祈りを捧げるモゴ。
「偉大なる戦い神、聖獣戦神、八百刃様。深く感謝致します」
「良かったですね」
笑顔で言う静に頷くモゴ。
「まだ半分近く残ってるじゃん」
ひねくれた事を言う、財布の中身に800円しかない通。
「大丈夫パパも戦闘能力は凄いから、伊達や酔狂じゃ百母の次期長って言われて無いもん」
終始笑顔のモゴ。
そこに小較が来る。
「それじゃあ少しでも早く返せるように3Sの仕事も頑張ってもらいましょう。今朝早くに魔獣の発生が確認されたよ、一般生徒に危害が及ぶ前に処理しないといけないから探索をお願い」
すると前は、渋った探索系の輝石獣のぬいぐるみをあっさり出す。
「豪気だな」
少し驚いた表情で言う通にモゴは余裕たっぷりの顔で言う。
「昨日までは、先が見えなかったから少しでも減らそうと、倹約していたけど、これからは違うよ。パパ達が確実に返せると解った以上、効率第一に行かないとね」
『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、魔追燕』
魔追燕が獣晶すると、少しの間旋回した後、動き出す。
「行くよ!」
魔追燕を追跡するモゴと引っ張られるように付いて行く他の3Sの面々であった。
そして、魔獣はあっさり見つかった。
校舎裏で、不良っぽいかっこうした生徒達と格闘するカンガルーが居たのだ。
「この学校にも不良が居たんだ」
通の言葉に何故か一緒に来た雅が言う。
「彼らは不良じゃなく、文化研究会の人達よ」
眉を顰める3Sの面々に雅が続ける。
「この学園は、学校や社会のルールを馬鹿にしただけの不良が居座れるほど優しくないよ。不思議とそう言う不良の所には魔獣がいっぱい出て来るから、直ぐに転校するか、真面目に成るかしかなかったりするのよ」
静は不良を指さして言う。
「それではあの不良さんたちは?」
雅が言う。
「だから、真面目に人類文化学を研究している生徒で、この学園では見られない不良の生態をまねする事で研究している人達だよ」
カンガルーパンチをバックステップでかわすと、不良のふりをしていた生徒は拳を握り締めてカウンターを入れる。
よろけるカンガルーだったが、すぐさま連続パンチを放つ。
不良モドキは、それを紙一重でかわしてクロスカウンターを決める。
今度こそ地面に崩れるカンガルーと拍手をする3Sの面々。
「よくみると彼って確かボクシング部のホープの人だわ。文化研究会と兼部してたんだ」
雅がそう呟く中、ガッツポーズをとる不良モドキ改めボクシング部のホープの生徒の後ろで、カンガルーが起き上がり、後頭部にパンチを入れる。
「反則だぞ……」
そういい残して気絶するボクシング部のホープの生徒。
「さあ始めるよ」
小較は今の出来事を完全に無視して言う。
するとカンガルーは腹の袋から無数の子カンガルーを吐き出す。
小較は慌てず騒がず、冷静に自分の方向に向かってくる奴だけを片付ける中、準備が整っていない、モゴと通を背後に庇い、静が前面に出る。
『我が守護の意思に答え、炎よ我等を守れ、守炎翼』
静の腕の動きに合わせて、炎の壁が生み出される。
その後ろで、モゴと通が動く。
「雑魚はあちきに任せて!」
モゴは風の渦を持った竜、乱風渦竜のぬいぐるみを出すと唱える。
『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、乱風渦竜』
乱風渦竜が獣晶すると、地面を覆いつくそうとしていた子カンガルー達を一斉に弾き散らす。
『九尾弓』
通が九尾弓を構えて、羽矢筒に指を入れる。
『華金色鳥矢、孵化』
金色の矢羽を持つ矢を番え、通は射る。
親カンガルーに直撃した所で通が唱える。
『羽撃』
華金色鳥矢から伸びる金属の針があっという間に親カンガルーに止めを刺した。
親カンガルーの消滅と共に、残っていた子カンガルー達も消えていく。
「なんか今回やたらあっさり解決したわね」
雅の言葉に顔を見合わせる一同。
小較が呆れた様子で言う。
「理由は簡単よ、モゴが出し惜しみしなかったから。何時もは魔獣を探す為に分かれて行動してるのが、今回はモゴがあっさり探索系の輝石獣を出した上、雑魚を散らすのに高価な輝石獣を惜しみなく使ったのが効いてるのよ」
「確かにそうですね」
静が納得するが、通が冷たい視線をモゴに向ける。
「詰り、モゴが何時も出し惜しみしなければ楽出来たって訳だね」
その言葉にモゴが少し困った表情で言う。
「これからは出し惜しみしないから、勘弁して」
そんな朗らかな魔獣退治であった。
何時もの如く、ぬいぐるみショップシロキバの手伝いをしていた3Sの面々の所に鏡が来た。
「特殊清掃委員に前回の仕事の明細を持ってきました」
そう言って差し出された明細を見る一同。
「やはり私の報酬は修理費で消えるのですね」
少しだけ残念そうな自家放火娘の静。
「今回は、Sボウガンのレンタル料は引かれてないから何とか黒字だ。これで欲しかったCDが買えるよ」
赤貧生活から脱出出来る通が呟くと固まっているモゴに視線が集まる。
「どうしたのですか?」
静が声を掛けるがモゴは無反応だった。
通が体を揺すり、意識が回復したのか、モゴは鏡に詰め寄る。
「どうして借金が増えてるんですか?」
その一言に3Sの面々も驚き、モゴの明細を見る。
そこに書かれている借金は3億円を超えていた。
「百母柿生様が、借金を完済する為に、元々の商売である宝石の売買を行おうと知り合いの業者に宝石の仕入れを頼んだそうですが、その知り合いの業者が用意した店に宝石を搬入した後、強盗に襲われたそうです。結果、宝石の仕入れ等を含めて2億8千万円程の借金だけが残る結果になりました。七華様が持ち帰った報酬でなんとか1億3千万は返したそうですが、残り1億5千万は新たな借金として間結家が払っておきました」
完全に膠着するモゴ。
「保険には入ってなかったの?」
小較の冷静な質問に、モゴが希望の光を見い出す、しかし鏡が止めを刺した。
「柿生様は、自分がいる限り泥棒に盗まれる何てミスしないと入ってなかったそうです」
崩れ落ちるモゴ。
両親がスポットの仕事を入れた為、お泊りする事になった通と歩と食事だけ食べていく事になった静を含めて、白風家で夕食が食べらる中、モゴが呟く。
「八百刃様に祈ってたのに何でこんな事になるの?」
その一言にヤヤが沈痛な表情を浮かべ、良美がはっきり言う。
「それが原因じゃないか?」
その言葉にモゴが言う。
「どうしてですか! あちき達の守護神ですよ!」
通も頷く。
「そうよ、八百刃様って高位の神様なんだよね」
その言葉にヤヤが言う。
「八刃の人間はね、大きな金が動く時は必ず卵料理の儀式行うの」
歩が嬉しそうに言う。
「何かおいしそうな儀式だね!」
ヤヤは頷く。
「金が動く場所と全く関係ない所で卵料理を奉納する儀式何だけど、これって詰り、お金が関係する時だけは八百刃様を出来るだけ遠ざける為の物なのよ」
「どうしてですか?」
静の問いに良美が答える。
「八百刃は、金運だけは無く、神になる前は何度も金欠で飢え死にしかけたって話だぞ」
モゴの頬が引きつる。
「ついでに言うと神様になってからも、お金が足りなくて、茶屋や飯屋で下働きやっていた事があるって珍しい神様だったりするわ」
ヤヤの言葉が止めになりモゴが壊れた。
「八百刃様なんて二度と祈るものか!」
虚しいモゴの叫びが響く中、歩が呑気に言う。
「そういえば歩のクラスに転校生が来たの」
チャンスとばかりに通が歩の方を向く。
「どんな子?」
歩が笑顔で答える。
「外人さんで、ミリス=ガーランドって言うの!」
今回のモゴの収支
○収入
闘有袋退治 40,000
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合計 = 40,000
○支出
魔追燕 8,000
乱風渦竜(触媒・ぬいぐるみ製造費) + 25,000
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合計 = 33,000
◎利益
収入 40,000
支出 - 33,000
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純利 = 7,000
●借金残高
繰越金額 199,115,100
追加金額 + 150,000,000
返済金額 - 7,000
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借金残高 349,108,100
今回の通の収支
○収入
闘有袋退治 40,000
--------------------------------------------------
合計 = 40,000
○支出
華金色鳥矢 30,000
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合計 = 30,000
◎利益
収入 40,000
支出 - 30,000
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純益 = 10,000
●通のサイフ中身
おこずかい残金 800
退治バイト利益 + 10,000
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サイフ残金 10,800




