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おしんにも負けてません

借金を返す為に売られた少女、その名はモゴ

 一人の少女が夜の学園の校庭に居た。

「あちきが頑張るしかない」

 ロリっぽいツインテールの少女が握りこぶしを作る。

「モゴそっち言ったよ!」

 アイドル顔負け金髪青眼の美少女、女子高生が大声で言う。

 ロリ少女は、背中に背負ったリュックから狼の姿をしたぬいぐるみを取り出して掌に乗せる。

百母モモモモモの名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶ジュウショウせよ、風斬狼フウザンロウ

 ロリ少女の手の上のぬいぐるみが大きくなって、青い毛皮の狼に本物の狼に変化する。

 そしてその狼、風斬狼は、迫ってくる赤い牙を持つ狼とぶつかり合う。

 双方が後方に下がった時、金髪女子高生が赤い狼の横に居た。

『オーディーン』

 金髪女子高生の手刀が、赤い狼を切り裂き消滅させる。

 汗を拭う金髪女子高生。

「凄いです、小較さん」

 その言葉に金髪女子高生、白風シラカゼ小較コヤヤが言う。

「当たり前よ、この学校が出来る前からここに出てくる異邪イジャや魔獣の始末をやっているんだからね」

 自信たっぷりな答えだ。

「それより、モゴも早く一人で倒せるようにならないと借金減らないよ」

 その言葉にロリ少女、モゴこと百母桃が溜息を吐く。

「でも百母の技は基本的バックアップ専門だから、前衛が居ないと敵と対決するのは難しいよ」

 指を振る小較。

「そーゆーのを言い訳って言うのよ。ヤヤお姉ちゃんは何時も言ってる。人から指定されたやり方で上手く行かないなら自分にあったやり方を見つけろって」

「ヤヤさんは元から規格外だよ。二十四で八刃ハチバでも強い発言力を持ってる天才なんだから」

 モゴが拗ねる。

 小較はいらいらしはじめる。

「もーそんな事でどうするの! そんなんじゃ一生この学園で働く事に成るよ!」

「両親の作った借金なんか知らないもん!」

 モゴが魂の絶叫をあげる。



 モゴは朝の校舎を歩いていた。

 生徒としてこの学園に入るのは初めてだが、仕事で何度も学園内を走り回ってるので、学園内の地理には詳しい。

 彼女は転校生である。

 来るものは拒まずのこの学園、転校生など掃いて捨てる程居る。

 しかし彼女は特別であった。

 そんなモゴが職員室の扉を開ける。

「おはようございます、転校生の百母桃です」

 そう頭を下げるモゴ。

 するとすぐさま、一人のジャージ姿の女性が近寄ってくる。

 スタイルが良いし、顔も悪くない。

 しかし身に纏っている雰囲気がオヤジそのものである。

 体育教師まるだしのその女性の事をモゴは知っていた。

「モゴ、お前はあたしの受け持ちだ。あたしのクラス知ってるよな先行ってろ」

「良美さんは行かないんですか?」

 モゴの極々当然の質問にその女性、八刃学園中等部体育教師で二-Bのクラス担任、大山オオヤマ良美ヨシミが平然と言う。

「いちいち転校生来たくらいでホームルームやってられっか。あー、クラスの奴等には適当に言っておけ」

 モゴも良美のこの性格を熟知しているので、そのまま職員室を出ると、教室に向かう。



「そー言えば、今日転校生が来るらしいわよ」

「あっそ」

「冷たい反応」

「転校生なんて一日一人、ひどければ十人いるのに驚いてられる?」

「だねー」

 そんな会話があった時、二-Bの教室扉が開く。

 そしてモゴが入ってくる。

 モゴは黒板に自分の名前を書いて言う。

「あちきの名前は百母桃、もが五回続くからモゴって読んでください。特技はぬいぐるみ作成と宝石鑑定、好きな食べ物はドデカフランクフルトです」

 そんなお約束な説明の後、ポケットを探り、一枚の紙を取り出し棒読みする。

「えーと私、百母桃は、理事長の忠実な僕であり、特殊清掃委員として、学園の平和と秩序を守る為、粉骨……砕身の気持ちで働きますので。皆さん異常な事がありましたら、遠慮無く仰ってください。最大限の努力を持って対応させて頂きます……」

 言い終わった後、モゴが怒鳴る。

「何時からあちきがヒカリさんの僕になったんですか!」

 その次の瞬間、モゴの後ろに一人の女子高生が現れる。

 八刃学園の制服(着用義務なし)のセーラー服を着た、十人並みスタイルと顔なのに何故か存在感がある彼女が言う。

「僕が嫌だったら奴隷でも良いのよ? それとも借金を返せるの?」

 その言葉にモゴは溜息を吐いて言う。

「僕で良いですよ」

 拗ねまくるモゴ。

 その一言に満足そうに頷く彼女、この学園の理事長、間結マムスビ光が胸を張って言う。

「これからは、異常事態があったらこの子にどんどん言って、全て即座に解決してくれるわ」

 そして教室を出る。

「帰るわよキョウ

 光の言葉に廊下で待っていた若い執事の男性が頭を下げる。

「了解しました」

 そして執事の男性、谷走タニバシリ鏡が扉を閉めた後、ドアに映っていた二人の影が消えていく。

 一人の男子、鈴木スズキ次郎ジロウが手を上げる。

「さっそくだけど良いですか?」

 モゴが何を聞かれるかは予測しながら頷く。

「理事長は何処から現れたんですか?」

 クラス全員の視線が集まる。

「簡単に言えば、噂をすれば影って奴だよ」

 何と無く納得出来てしまう一言であった。



 放課後、さっそく一人のクラスメイトの女子が話しかけてくる。

「どうして特殊清掃委員になったの?」

 モゴは溜息を吐いて言う。

「パパとママがお店に失敗して、借金作ってあちきはその形なの」

 その言葉に同情するその少女。

「あなたも色々大変ねー。あたしの名前はトドロキミヤビ新聞部よ。これでも噂とかには詳しいつもりよ。今だったら、夜な夜な彷徨う赤い狼とか」

「それは昨日の夜、小較さんと一緒に退治しました」

 モゴがあっさり答えると雅は驚く。

「本当だったんだ」

 頷くモゴ。

「ここは特別なの。日本中探してもここより化け物が出やすい所はないよ」

 その言葉に雅の目が光る。

「それってどういう意味?」

 モゴは少し考えてから答える。

「聞いても無駄ですよ、記事にしても光さんが差し止めにするから」

 その言葉に舌打ちする雅。

「面白そうなネタだと思ったのに。ところであの高校生理事長と知り合いなの?」

 モゴが頷く。

「小さい頃から何度か会った事はありました。小較さんもそうですが、俗に言う化け物退治の家系なんです」

「へー面白いわね、そこんとこ詳しく知りたいな」

 雅の言葉に拗ね気味のモゴは素直に答える。

「八刃って呼ばれる、同じ神様を崇める化け物退治を行う一族が八つあるんです。でも光さんの所はお金持ちで、あちきの家は普通だったんだけど……」

 モゴから聞いた話をメモしながら雅が続ける。

「それで、借金の形に労働奉仕させられているって事ね。どんくらいの借金なの」

 指を二本立てる。

「二百万?」

 雅の言葉に首を横に振るモゴ。

「二千万?」

 再び首を横に振るモゴ。

「まさか二億?」

 頷くモゴ。

「どうしたらそんな借金出来るの?」

「宝石の買い付けでドジやったんです」

 溜息を吐くに深くモゴに同情する雅。

「本気で大変ねー」

 そしてその時、数人の女子が駆け込んでくる。

「貴方、3スリーエスよね?」

 モゴが首を傾げると雅が言う。

「特殊清掃委員の通称。シャドー(影)サイド(側)スイーパー(掃除屋)の頭文字を取って3Sって呼んでるの。委員の名前呼ぶよりカッコイイでしょ」

 素直に頷くモゴ。

「それだったらあちきだけど何?」

 すると、モゴは女子生徒たちに引っ張っていかれる。

「急いで!」



 モゴは数名の女子に連れられて来た所には炎を纏った犬達が居た。

「こないだ白風先輩に退治して貰ったんだけどまた発生したの」

 炎を纏った狼達を写真に取りながら雅が言う。

「よく出てくるのよ。何人かの生徒が襲われている。でも物的証拠は残らないの。非常識過ぎて裁判も起こせない。第一、誓約書があるから問題にも出来ないのよね」

 モゴがリュックを探り三つのぬいぐるみを出す。

「さっきも言ったけど、ここは特殊なの。この手の化け物を集める為の学校だから」

「何でそんな学校を作ったのかしら? もしかして世界征服?」

 雅の言葉にモゴは鳥のぬいぐるみを掌に載せて言う。

「逆だよ、本当は日本全国で少なからず、化け物が出る歪みが出来るんだけど、ここに集約しているの」

 炎を纏った狼達が、モゴに気付き、視線を向ける。

『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、冷風隼レイフウジュン

 鳥のぬいぐるみは、水色の隼に変化して、炎を纏った犬達に突っ込む。

 その途端、犬達の炎が弱まる。

「やっぱ冷風隼一発じゃ駄目みたい」

 犬達は、一斉にモゴに襲い掛かる。

 モゴは、溜息を吐く。

「使用料が高いから使いたくないけど、周りの設備壊したらまた引かれるし仕方ないよね」

 モゴは、腕につけたリングをかかげる。

『間結光様のお力をもちて、ここに戦いの為の結界を生み出したまえ』

 次の瞬間、炎の犬とモゴが通常空間とはことなる結界が生み出した世界に居た。

「わー、はじめてみる。それがバトルフィールドリング?」

 結界の外に居る雅の言葉にモゴが頷く。

「そうだよ、光さんが複雑な儀式を用いた術でストックしてある結界魔法。学園内だったら、このリングを媒介に起動できるの」

 そう言いながらも、炎の犬達の攻撃を避け続けるモゴ。

「意外と運動神経良いね」

 そしてモゴは、床に丸い岩に斧をつけた様なぬいぐるみを置く。

『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、土斧甲虫ドフコウチュウ

 ぬいぐるみはモゴの腰辺りの大きさまで大きくなって、向かってくる炎の犬をその両側にある斧で打ち壊していく。

 しかし残りの炎の犬達は散開する。

「動きの遅い、土斧甲虫では対応してきれないし、冷風隼じゃ止めにならない。やっぱりこれしかないか……」

 そういって、取り出した最後の猫のぬいぐるみを両手に持つ。

『百母桃の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、暫刃猫ザンバビョウ

 虎縞の猫のぬいぐるみは本物の猫の様に変化する。

 呪文を唱えているのを隙とみて、炎の犬達は一斉に襲い掛かってくる。

「刀に成れ!」

 モゴの言葉に猫は、刀に変化する。

 土斧甲虫の死角になる奴を切り裂くことで炎の犬を全滅させる。

「一人で出来たみたい」

 その場にしゃがみこむモゴ。



 モゴが下宿する、ぬいぐるみショップ「シロキバ」(住居・道場付き)

「それで、いくらになった?」

 住所は違うのに住み着いている良美が聞くと、モゴが溜息混じりに言う。

「三万円だよ」

「そこそこになったじゃないか」

 良美が言うが、この家の住人、小較が言う。

「モゴの場合、ぬいぐるみ代とかもあるし、リングも使ったとなると半分以上なくなるんじゃない?」

 頷くモゴ。

 そこに、この家の主で、ショップ「シロキバ」のオーナー白風較クラベ、愛称ヤヤが来て言う。

「一歩一歩確実に進みなさい。どんなに遠く見えてもきっとゴールはあるんだから」

 モゴは強く頷く。

「うん、がんばるきっと借金を無くしてみせる」

今回のモゴの収支



 ○収入

  赤狼セキロウ退治サポート   10,000

  炎犬エンケン退治 +(5,000 × 6 )

--------------------------------------------------

合計 = 40,000



 ○支出

バトルフィールドリング使用料    10,000

風斬狼(触媒・ぬいぐるみ製造費) +  2,000

冷風隼(触媒・ぬいぐるみ製造費) +  1,800

土斧甲虫(触媒・ぬいぐるみ製造費) +  2,200

暫刃猫(触媒・ぬいぐるみ製造費) +  3,000

--------------------------------------------------

合計 = 19,000



◎利益

収入    40,000

支出 - 19,000

--------------------------------------------------

純利  = 21,000



●借金残高

繰越金額   199,900,000

返済金額   - 21,000

--------------------------------------------------

借金残高   199,879,000

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