其の四(改)
平成24年6月3日現在改稿作業中。
近日中に内容が変わります。
まずはフィリオという街へ向かう。
エイナも詳しくは知らないらしいが、フィリオという街はそれなりに大きな街であり、貴族の直轄地でもあるそうだ。
アクナルド王国というからには、王様がいるんだろうし、その下(かどうかは分からないが)には貴族がいるということなんだろう。
馬車の御者はエイナに任せてある。
今のうちにいろいろ訊いておくか。
「エイナ、憲兵というのはどういう組織なんだ?」
「憲兵は、一定の大きな街に配置されていて、その街を中心としたエリアを巡回し、犯罪を取り締まっています」
「なるほどな。だいたい警察と同じみたいなもんかね」
「ケイサツ……とは何ですか?」
「ああ、いや、気にするな。それより、憲兵というのはどれくらい強いんだ?」
「そうですね……、少なくともさっきの山賊よりは強いと思います」
「まあ、それはそうだろうなぁ」
「あ、でも憲兵より騎士のほうが強いです」
「騎士?」
「はい。ご存じありませんか?」
「うん。よく知らない。教えてくれ」
「騎士は、王国直轄の騎士団と、各貴族の騎士団がいます。王国騎士団は王国首都アクナルドに、各貴族の騎士団は各貴族の直轄領に駐屯しています」
「なるほど」
おそらく騎士団のトップクラスがこの国最強の人間だろう。
普通にしていれば、会うことはまずないだろうが……、自由に生きてると公権力と敵対することもないとは限らないな。
とにかく自分の強さの把握だな。
先の対山賊戦では、元の世界にいた頃とは段違いのスピードで動くことができた。
それについていけるだけの反射神経もあったように思う。
よく考えればあれだけ高速移動したにもかかわらず、脚に異状はないようだ。
さっき荷物を運んでいるときに気付いたが筋力も大幅に強くなっているようだ。
総合的にみて俺の体は異常なまでに強化されている。
当然ながら理由は分からない。
そういうものだと納得するしかないか……。
こういうのを元の世界のネット小説では異世界転生主人公最強ものというのだろうか……。
そうだ、俺は魔法を使えるのか?
エイナと魔法契約を結ぶことはできた。
もし、魔法を使うのに魔力のようなものが必要なのだとすれば、俺は魔力を持っているはずだ。
「エイナ、魔法ってどうやって使うの?」
「えっ?シン様は魔法をご存知ないのですか?」
「いや、知らないというか、使ったことがないというか……」
「でも、私との魔法契約はできましたよね?」
「うん、実は、俺の住んでいたところには魔法はないんだ。だから、魔法契約も……よくわからないけど、適当にやってみた」
「……、そう……なんですか。魔法はいくつかの種類と系統に分かれていると言われています。魔法の素質がある人は何の道具もなしに、初歩的な魔法を使うことができますが、強力な魔法を使うには魔法石などの道具が必要です。私はほとんどエルフの村から出たことがないのでこれくらいしかわかりません。」
「精霊魔法というのはどういうものなの?他の魔法と区別されてるの?」
「はい、精霊魔法はその名の通り、魔法によって精霊にはたらきかけて効果を発動してもらうのですが、普通の魔法とは異なる系統とされています」
「そうなのか。俺は精霊魔法は使えないの?」
「はい、精霊魔法はエルフにしか使えないと言われています。ですが、エルフ以外でも使うことができた者もいたという言い伝えもあります。そのほとんどは歴史に名を残す大魔道士ですが」
「なるほど。エイナは普通の魔法の使い方は知らないんだ?」
「すみません。私も普通の魔法については学んだことがないので、よく分からないんです」
「いや、分からないならいいよ。じゃあ魔法石っていうのは?」
「え?魔法石というのはシン様の剣についている宝石のことですよ?」
「え?」
「あ、シン様はご存じないのでしたね。魔法石を使わなければ強力な魔法を使えないので、武器や腕輪などに魔法石を埋め込んで戦いに使うというのを聞いたことがあります。その剣もそうです」
「ああ、たしかにこの剣を使っていた傭兵のリーダーみたいなやつは魔法を使っていたな……」
「はい」
「そうか、となると、あの山賊の頭みたいなやつも魔法石をもっていたのか?」
「おそらく、そうだと思います」
「ちっ、そいつも盗ってくればよかったな。まあいい。とりあえず一つ手に入ったわけだし。エイナにも魔法石がほしいな」
「あ、いえ、精霊魔法には魔法石は必要ありません。精霊と会話ができれば魔法が使えるので」
「……そうなのか」
まあいいか。まだ魔法の使い方はわからないが、そのうちなんとかして覚えるって程度でも、今のところはいいだろう。
それより……、
「エイナ、さっきの傭兵や山賊とかエイナの言葉の精霊魔法が使われたときに光って見えたんだけど、俺が魔法契約を結んだときは何も光らなかったよね?あれはどうしてなの?」
「光……、ですか?」
「うん、光」
「あの、魔法が使われるときに光が見えるのですか?」
「え?うん、たしかに光が見えたよ?」
「私の知っている限りでは魔法が使われるときに光が見えるということはないはずですが……」
「そうなの?じゃああれはなんだったんだろうか……」
普通は見えないのか。
となると、俺だけに見えるのか?俺の目がおかしくなったのか?
俺が使ったときは見えなかった。
それが魔法契約だからか?それとも俺が使ったからか?
魔法についてまだ知識が足りないから保留だな。
今のところ分かるのは、魔法が使われると俺にだけ光って見えるらしいということ。ただし、俺が魔法契約をした場合は見えない、ということだけだ。もっとも、いずれにも例外があるかもしれないが。
ともかく自分以外の誰かが魔法を使おうとするときに光って見えるというのは、かなり便利かもしれないな。
少なくとも目をそらさなければ、魔法が使われるのが丸わかりになるわけだから。
俺自身がこの世界に来てから変化したと思われるのは、今のところこんなもんか。
さて、少しだけ気になっていることもあるな。
「エイナ、なぜ君はすぐに俺について来ようと思ったんだ?」
「……実は、私は精霊魔法で、シン様が山賊たちを倒すのを見ていたのです。吸血鬼にも比肩しうる強さだと驚きました。このまま奴隷として生きていくならシン様のように強いお方にこそご主人様になっていただきたいと思ったのです」
「……、そうか。エイナは俺の初めての奴隷だ。俺の奴隷になってよかったと思わせてやるよ」
「はいっ!うれしいです」
……、よく分からんが強い人が好きということなんだろうか?
まあなんにせよ好かれているのだから問題ないだろう。
というか、そんなことより、吸血鬼って……。そんなのいるのかよ。
しかもやたらと強そうな話しぶりじゃねえか……。気を付けよう。
などと話しているうちに、日が暮れてきた。
今夜は適当な場所に馬車をとめて野宿かな。まあ馬車の中で寝られるだけましか。
「エイナ、そろそろ日が暮れてきた。フィリオまではまだ遠いんだろう?」
「はい、あと半日くらいはかかると思います」
「じゃあ、太陽が沈んでしまう前に、どこかで野宿の準備でもしようか」
「分かりました」
こうしてエイナとの初めての二人の夜は野宿ということになった。
平成24年1月8日一部修正。




