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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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人違いで婚約破棄されました

作者: 霜月
掲載日:2026/05/31

「フレイヤ・リュッセル、貴様との婚約は破棄だ!!」


その声でホールがシーンと静まり返った。


私はその様子を見て目を細めた。


「お前はここにいるホーア・バッチーノ男爵令嬢と俺の仲がいいことに嫉妬して散々いじめたのだろう!!」


「私、とっても怖かったんですぅ〜」


何とも白々しい演技だ。傍目から見てもバレバレだ。


その証拠に最初は何事かと見ていた貴族たちも白けた目を向けている。


しかもホーア男爵令嬢は色んな令息に近づいては色目を使っていた。


こんなバレバレな演技に引っかかる令息なんて今まで一人もいなかったが、このズーク伯爵令息は見事に引っかかったらしい。


そして周りの視線に気づいていないようだ。


「おい、聞いているのか!」


「ええ、勿論聞こえておりますとも」


「…?お前は誰だ?俺はフレイヤに言っているんだ」


「…?ですから私がそのフレイヤですが?」


「は?フレイヤはそこに座ってケーキを食べている女だろう?」


そして私を指差した。指をさすとは失礼な。せっかく美味しくケーキを食べていたと言うのに。


「違います。この方と私をどうして間違えられたのですか?」


そう、そこなのだ。似ているならばともかく、フレイヤ様と私は全然似ていないのだ。


フレイヤ様は金髪に碧眼の美女だ。


それに対して私は茶髪に茶目で地味な格好をしている。


間違えるはずがないのだ。


「だ、だってホーアがこいつにいじめられたって。」


「そうですよ〜。私この人にいじめられたんですぅ〜。きっとこの人はフレイヤ様の取り巻きで、この人を使っていじめてきたんですぅ〜。」


「違います。いじめてもいませんし、この方とは今日、初めてお会いしました。」


「あの、すみません。そもそもどうして婚約者である、ズーク伯爵令息はお気付きになられなかったのですか。」


それがどうしても気になってしまい、私は口を挟んでしまった。


「それは…」


そう言ったっきりズーク伯爵令息は黙ってしまった。


私が首を傾げていると、フレイヤ様が説明してくれた。


「実は、私たちはあったことがなく今日も初対面なのです。私たちは政略で婚約させられたので。」


「それでも会うぐらいはするものではないですか。」


同じ学園にいたのですからと私が続けて言うと、フレイヤ様が


「会いましょうと手紙を送っても大抵無視されるうことが多く、返事が返ってきても忙しいからと会えなかったのです。」


そういうとズーク伯爵令息は項垂れてしまった。


「では、なぜズーク伯爵令息とホーア男爵令嬢が親しくしていてリュッセル様が嫉妬するのですか?」


顔も知らないのにと私が言うとさらに項垂れてしまった。


「で、でもあなたが私をいじめていたのは本当じゃない!」


流石にまずいと思ったのかホーア男爵令嬢が初めて口を挟んできた。


「いじめてなどいません。婚約者がいる、令息に親しくしてはなりませんと、注意しただけです。」


そう、この学園には面倒ごとに関わりたくないのかそれとも関心がないのか、誰も彼女を注意する者がいなかった。私も最初は彼女のハニートラップに引っかかる人がいなかったため、注意していなかったが、ズーク伯爵令息と親しくし始めたため、これは看過できないと注意したのだ。それが彼女にはいじめているように見えたのだろうか。


「で、でもでも〜なんでズーク様に婚約者がいることを知っていたんですか〜。…わかりました!!ズーク様のことが好きなんですね!だから私をいじめてきたんですね!!」


どういう思考回路をしたらそういう考えに至るのかがわからない。


「…そうだったのか!だからお前はホーアに嫌がらせをしたのだな!やはり俺の考えは間違っていなかった!!」


しかもそれにズーク伯爵令息がのかかってきた。面倒な。誰がこんな人を好きになるものか。


「ズーク伯爵令息のことは何とも思っていません。留学先の国の貴族の名前と顔、それから誰が婚約者なのかを覚えるのは当然です。あなた方は自国の貴族のことさえも覚えられないのですか?そして繰り返し言いますが、いじめてなどいません。ただ忠告しただけです。」


「え〜でもでも、実際どうなんですかぁ〜。留学ってことはこっちで婚約者探しをしているってことですよねぇ〜。」


「だからお前の顔を一度も見たことがなかったのか!!お前は地味だし、きっとその国もお前の家も大したことがないんだな!婚約者がいないだなんて可哀想だな!俺の愛人くらいにはしてやってもいいぞ!ははは!」


「私にはれっきとした婚約者がいます。この国に来たのはこの国の貴族がどんなものなのかを学ぶためです。そして私の国と家を馬鹿にしないでください。」


「婚約者〜?本当にいるのか〜?嘘はダメだぞ!ははは!」


「きっと、地味で、根暗な男なんでしょうねぇ〜ふふふ」


「はあ、本当に愚かでどうしようもないですね。」


そう言って私はつけていた眼鏡とカツラを外した。


出てきたのは絹のような白い髪と綺麗な赤い目だった。そう、地味に見せていたが、実は皆が見惚れるほどの絶世の美女だった。本人は自分が綺麗な部類だとは認識しているが、かなりの絶世の美女である。現にホールにいる全員が彼女に見惚れていた。


「私は隣国の帝国のソベリア公爵家のソフィア・ソベリアですわ。あなた方が馬鹿にした国と家は帝国の公爵家ですよ?そうそう私の婚約者は帝国の王太子である、ユリウス殿下です。あなた方が今、馬鹿にしたのはユリウス殿下なのですが。あと、私が留学にきた本来の目的は国王様からこの国と貿易をする価値があるのかを確かめてこいと言われたからですわ。それを邪魔し、しかも帝国を馬鹿にしたことは国王様に報告させていただきます。」


そうソフィアが言うと、ホールにいた貴族の顔は全員、真っ青になった。まぁそれも無理はないだろう。帝国といえばこの大陸いや、全世界を支配していると言っても過言ではないくらいの影響力を持っているのだ。そして帝国の公爵家ともなれば、この国の王さえも跪かなくてはならないのだ。たとえ、その令嬢だったとしても、だ。また侯爵家でも当主であれば国王も跪かなくてはならない。


しかも彼女はなんて言った?


この国と貿易をする価値があるかを確かめにきたと言っていた。


彼女は皇帝からも信頼を寄せられていると聞いている。しかも王太子も彼女を溺愛しているとも。


そんな彼女が今回のことを報告したらどうなる?


この国は帝国との貿易なしでは生きていくことはできない。他の貿易相手を探そうにも帝国が貿易をやめた国と聞けばどの国も貿易はしてくれないだろう。帝国を敵に回したくないのだから。


終わった、この国はもう終わったのだ。ズークの親であるマーヌー伯爵夫妻なんて今にも倒れそうだ。ズークが騒ぎを起こした時点でもう真っ青になっていたがその顔がさらに青くなり、青を通り越して、もう真っ白になっていた。もうこの場にいる貴族たちは全員絶望のどん底にいた。さっきまであんなに騒いでいた二人も、大変なことになったと知り、静かになっていた。



その時、扉が開く音がした。全員が扉を見ると、そこには国王夫妻と、帝国の王太子であるユリウスがいた。


国王夫妻が王座に座り、ユリウスがさらに何段も高い王座に座るや否や、


国王が

「皆、何故そんなに静かなのだ?何かあったのか?」

と聞いた。


その時、ユリウスはソフィアの変装が解けていることに気がついた。

「ソフィア、何故変装が解けているの?」

とユリウスに聞かれ、ソフィアはここまであったことを全部ユリウスに話した。


話の途中からだんだんと国王夫妻の顔色が悪くなりソフィアが話し終えていた時は気絶しそうになっていた。


「許せないな。ソフィアを愛人にだなんて」


とユリウスが随分と低い言ったときには王妃は気絶してしまった。これから起こるであろうことを想像し、国王も気絶してしまいたかったが、ここで気絶するわけにはいかないと何とかもちこたえていた。


「この国を滅ぼしてしまおうか。」


とユリウスが言ったとき、大半の貴族は失神していた。


「待ってください。この国はいい国です。確かにユリウス様のことや我が家を馬鹿にされたことはとても悲しかったですが、このものたちが愚かだっただけで、他の方々は悪くありません。途中でこの者たちに注意してくださった方々もおりました。また、この国の農民は生き生きとしており、作物はとても豊かでした。この者たちのせいで国を滅ぼしてしまうのはもったいなく思います。」


「そうだね、ソフィアの言う通りだ。この国を滅ぼすのはやめておこうか。これからも貿易を続けよう。(まぁ、でも大切なソフィアを傷つけただなんて許せないな。この二人は死ぬよりも苦しい思いをしてもらおうか。)」


ひとまず、滅ぼされないことに国王は安堵した。




♦︎♦︎♦︎




その後、ソフィアとユリウスは帝国へと戻り、お茶をしていた。


「ソフィア、本当に良かったの、あの国を滅ぼさなくて」


「ええ、滅ぼすには勿体無いですから。ところで、あの二人はどうなったのでしょうか。」


「さぁ、どこかで暮らしているんじゃない?ソフィアは優しいね。」


二人はふふふと微笑みあっていた。




♦︎♦︎♦︎




時は遡り、二人がお茶をしていた少し前のこと。


ズーク伯爵令息とホーア男爵令嬢、改めただのズークとホーアは帝国の地下牢にいた。本来ならば王国の地下牢にいるはずだが、ユリウスが直接、手を下したいと帝国に連れてこられた二人は地下牢の中で絶望のどん底にいた。


「まさかあの地味女が帝国の公爵令嬢だっただなんて」


「ズークについていくんじゃなかった」


「何だと!?元はと言えばお前がいじめられているなんて嘘をつくから!!」


「何ですって!?」


パーティの時の仲の良さそうな姿はもうどこにも見当たらない。


「見苦しいな。」


「「!?」」


ヒートアップしていた二人はユリウスがいたことに気づいていなかったらしい。


「さて、私の婚約者を傷つけた罪は重いぞ。」


低い声でユリウスが言うと二人は震え上がった。


「違うんです!私はズーク様にはめられて!」


「お前!?俺を裏切るのか!?」


醜い争いを綺麗な赤色の瞳でじっと見ていた。


そしておもむろに剣を取り出すと、二人の腕を切った。


「ぎゃあああああああ!!」


「お、俺の腕がああああああ!」


「あまりうるさいと次は舌を切るけど」


そうユリウスが言うと、二人は悲鳴をあげて、静かになった。


「さてと、私の婚約者を傷つけるとはよほど命が惜しくないらしい」


そう言って笑うと、二人はまた震え上がった。




数分後、地下牢では二人の悲鳴がなり響いていた。




♦︎♦︎♦︎




あれから、もう数時間はたっただろうか。


「もう、殺じでくだざい」


涙と血で濡れた顔を歪めながらズークとホーアは殺してほしいとユリウスに言っていた。



二人の血で濡れて、綺麗な顔が真っ赤に染まったユリウスは笑って


「私の婚約者に手を出したらどう言うことになるかもっと分からせてあげよう」



そして数時間後、


ユリウスはソフィアとのお茶会だからと地下牢から出て行った。


「早く体を綺麗にしないとね。汚れた姿なんてソフィアに見せられないからね。」




地下牢ではユリウスが出て行った後も悲鳴がなり響いていたという。

初めて書いてみました。

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― 新着の感想 ―
因果応報。過度なざまぁに見えるけど、小説の世界なのだからこれくらい大胆なざまぁの方が面白く思えます。
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