第5話 俺、レベルアップしないんだけど?
王都に向かう道中、たくさんのモンスターが出てくる。
……が、しかし。
白石、ぷい助がレベルが上がる一方。
阿良木だけは一切上がらないのである。
「なんで俺、ずっと一レベなの?倒す手伝いしてるじゃんか……」
「スキル使ってないからですよ。スキルを使って倒さないと経験値は入りません。」
白石は懇切丁寧に教える。
「スキルが必要なのかよ……だって俺のスキルって……ステータス!」
目の前にステータス画面が開いた。
【ステータス:阿良木龍夜】
役職:最強チート
HP:105 MP:25
スキル:ジ・エンド MP9999
説明:魔王のみに発動する、物語を終わらせるチート技。
「うわ、何その技。使えないじゃないですか。」
「なっ!そう思うよな。これだけしかないからレベルアップも出来ねぇんだよ」
白石にステータスを見せ、共感してもらった。
「えぇ……それって本当に魔王のみですか?なんか、意外とそこら辺のモンスターにやったら4分の1の威力で効くとか」
「おぉ!その手があったか!なんで俺は気付かなかったのか!!ちょっと早速やってくる!!」
白石の意外な提案に、阿良木はノリ気でモンスターを倒しに行った。
「お、いたいた!ラビットちゃんだぜ!よっしゃぁ……行くぜ……!!ジ・エンド!!!!」
ひゅ〜。
風が吹いた。
何も、おきなかった。
「……勘弁してくれよぉ!俺もレベルアップしたいよぉぉ!!うぉーいおいおい」
阿良木は地面に突っ伏し大号泣。
「……ぷぃ〜」
「……まぁ、ぷい助さんがいますから。」
ぷい助が哀れみの込めた瞳をしている。
阿良木の頭に、にゅっと出した手(?)を乗せる。
「うぅー、悲しくなるから……やめてくれよぉ……」
「……行きましょう。阿良木先輩。王都まではもう少しですよ。」
白石は阿良木に手を差し出す。
「うぅ……行くかぁ……とほほ」
しょぼくれながらも手を取り、立ち上がる。
阿良木達は再び歩き始めた。
またしばらく歩いたころ。
「見えました、あの塀に囲まれているところがレヴェーテル王国です。」
「ほへぇ……そうなの。」
ちょっとつまらなそうになりながらも前へと歩く。
「……ん?なんか、入り口のところが人でいっぱいですね。見に行ってみます?」
「え?なんか事件?」
「女性が沢山ですね」
「まじか!行こうぜ!!!」
「…………はい。」
白石は嫌悪の顔をしっかりと出した。
阿良木と白石は、入口の門の所へ走った。
「だーかーらっ!!!許可がねぇと入れねぇんだって!!!!」
門番の男の声がする。
周りにはたくさんの女が群がり押しかけていた。
男は必死にスキル《鉄壁》をつかい中に入れさせまいと、踏ん張っていた。
「ん?聞いたことある声だな。」
鉄壁の向こうから聞こえる声に耳を傾け、ちらりと緑髪が目に入り確信する。
「おっ!森嶋じゃん!おーーい!森嶋ぉぉー!!」
「え?あっ!!阿良木!!お前!!ちょ、助けてくれ!!こいつら蹴散らせ!!」
森嶋と呼ばれた男は助けを求めた。
「いや、蹴散らせって……、無理だよ!俺なんも出来ねぇもん!」
「なんも出来ねぇってなんだよ!なんかぴょぴょいとすすいとやってくれよ!」
「なんだその擬音!?」
阿良木たちがボケている間に、
白石は何かを閃いた。
「……あ。クリアヒール!」
突然、白石はスキルを使い、水色の光が女性たちを包んだ。
女性たちは、皆意識を取り戻し、状態異常から解放された。
「あれ?私何やって……」
「ここどこ?」
「夕飯の食材買いに行かなくちゃ!」
女性たちは何事も無かったように、散り散りに帰っていった。
「「へ?」」
阿良木と森嶋は唖然としていた。
「今の女性たちは、頬が赤らんでいて目がハートでしたので、何かの魅了系の状態異常かと思い治しました。」
白石は淡々と答える。
「流石だなぁ……俺全然気付かなかった!とりあえずこいつらを入れないようにって必死だったからな〜。なっ!阿良木!」
森嶋は白石を褒めたたえた。
そして阿良木を見た。
「そこの美しく可憐なお嬢さん、とてもお美しい……。よろしければ僕と、踊っていただけませんか?」
片膝を着き、女性の手を取り、普段聞かないような声で、阿良木は散り散りになった一人の女性へと声を掛けた。
口元には近くに生えてたたんぽぽが咥えてあった。
「うぇ…きんも……触らないでっ!!」
女性は吐き気を催し、阿良木の頬にビンタを食らわした。
「…………うん、反抗的な君も、とてもすて……き……」
ビンタされてもなお、諦めずに女性の方を向いた。
……が、女性は既に走って逃げていた。
「………………」
呆然としている阿良木。
その後ろでは、腹を抱えながらガシャガシャと鎧を鳴らし、地面をのたうち回って爆笑をしている森嶋。
少し後ろを向き、手で口を隠し必死に笑いを堪えようとする白石。
ひゅ〜。
冷たい風が吹いていた。
誰も救われない、悲しい時間だった。
「……よし、次行こう。」
「はい、そうしましょう。」
「だーっはははははっ!!!!」
阿良木の開き直しの早さには、皆慣れていた。
森嶋は未だにツボっていた。
〘テッテレテー!森嶋郁夜!レベルアップ!〙
「お、やったぜ。」
「俺の周りだけレベルアップかよ!!!」




