表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

01 世界一の御曹司、乙女ゲーを作る

 僕の名前は鳳城隼人ほうじょうはやと

 超が10個は付く金持ちだ。


 運動神経抜群、容姿端麗、そして超天才的な経営センス。

 誰もが憧れるスーパーダーリンとは、他ならぬこの僕のこと。


 ……自分で言っててちょっとはずかしい? いやいや、事実だから仕方ない。


 世間は、クリスマスイブの真っ最中。

 そんな特別な夜。


 僕はいま、ワンルームの一角――テレビの前に置かれた小さなローテーブルの前に座っていた。


 大好きなこの子と、並んで座っている。


 向かいじゃない。並びだ。

 肩が触れそうで触れない、あの距離。


 ああ、なんて最高のクリスマスなんだろう。

 恋人たちが愛を語らう聖なる夜に、密室で二人きり。

 これはもう、実質デートと言っても過言ではない。


 目の前の液晶テレビ。

 その画面に映っているのは、クリスマスの特番とはまったく関係のない、きらきらした世界。

 そこに踊るタイトルは――


『王子様、正気ですか?』


 大人気乙女ゲーム『リュミエール魔法王国の恋便り』の制作会社、

煌星きらぼしコンテンツラボ』をまるっと買収して、この子の大好きな声優陣と推し絵師と、ついでにお気に入りのシナリオライターまで札束でかき集めて作らせたフルオーダーゲーム。


 それがこの『王子様、正気ですか?』だ。

 もちろん、ハードは最新機種。開発中のROMを特別にインストールして持ってきた。


 うん、我ながら金の使い方がおかしいのはわかってる。


 思えば、ここまで来るのは長かった。

 買収して、企画して、口出して、口出して、口出して、確認して――全部やった。僕が。

 この子のために、僕が指揮して、完璧に仕上げた。


 だが、そんな苦労も――


 このひと時のためなら、安いものだ。


 今、僕の横で、僕の好きな子がそのゲームをプレイしている。

 コントローラーを握りしめ、画面を見つめる横顔は真剣そのもの。


 ああ、こんな幸せな時間が他にあるだろうか。


 ……うん。ないね。断言できる。


 ……と言いたいところだけど。


 さっきからこの子、笑ってない気がするんだよな。

 眉間にちょっとしわ寄ってるし、イベント前になると毎回一時停止するし、ボタンを押す指もやけに重そうだ。


 画面だけ見てたら盛り上がってるクライマックスなんだけど、

 僕の横は、なんかこう……テンションが低い気がするんだよね。


 ……え? もしかして、あんまり刺さってない?


 ……いやいや、そんなはずは。

 だって推し声優フルコンプなんだよ? 推し絵師まで揃えたんだよ? 楽しくないわけ――


 ……喜んでる、よな?


 ……よな??


「ど、どうだい? たのしいかい?」


 そっとたずねてみる僕。


「……うーん……」


 返ってきたのは、めちゃくちゃ微妙な声だった。


 あ、これ、だめっぽいな。


「あああ! このゲーム、選択肢むずかしすぎじゃない??」

「なんで悪役令嬢の思考が一番まともなの? 選択肢難しすぎるよ!!」

「それに、このヒロイン。さすがに性格悪すぎない??」


 コントローラーを握ったまま、隣のこの子は、画面に向かって容赦なくダメ出しをたたき込んでいる。


 まぁ、仕方ないさ。

 だってこのゲームは、僕が思う「女の面倒な部分」を全面的に前に出したゲームなのだから。

 ただ、ちょっとやり過ぎちゃって、こんな人、現実で見たことないけどね。


 なぜそんなクソゲーを開発させたかって?

 そんなの決まってるじゃないか。


 僕の好きな子に、女への興味を無くさせて、僕に振り向いてもらうためなんだから!!


 そう、何を隠そうこの僕――鳳城隼人ほうじょうはやとの意中の子は、佐藤悠真さとうゆうまきゅん☆

 かわいいかわいい、男の子なんだ♡


 べつに完全に男しかダメってわけでもない。

 ただ、今この瞬間、恋している相手が男の子なだけ。


 もちろん、悠真には僕の気持ちは内緒だ。

 彼は”まだ”ストレートだからね。


 このゲームをクリアする頃には、一人前の女性不信が仕上がって、

 その心のスキマに、僕の魅力がするっと入り込む予定だ。


 計画は完璧。

 あとは、実行あるのみ。

初めまして、久澄くずみゆうと申します。

本作が初投稿作品になります。見つけていただきありがとうございます!


隼人の愛が重すぎて、初っ端から方向音痴なスタートを切りました。

ここからさらにドタバタな展開が始まります。


もし「続きが気になる!」「隼人バカだなあ」と思っていただけたら、

ぜひブックマークと【★評価】で応援していただけると、飛び上がって喜びます!


次回、「悪役令嬢の異世界追放」。 お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ