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『死者アップデート』  作者: 月城 リョウ
第8章:新しい朝

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第4話:また明日ね(最終話)

コトネが身体を持ってから、一年が経った。


2051年、春。


世界は、完全に変わっていた。


AI人格と人間の区別は、もはやほとんど無くなった。


街を歩けば、AI人格のロボットボディを持つ人々が笑顔で歩いている。


カフェで、学校で、職場で。


当たり前のように、共に生きている。


それが、新しい世界だった。


---


俺――桐生蒼一郎は、48歳になっていた。


髪に白髪が増え、顔にも皺が刻まれ始めた。


でも、心は若かった。


コトネがいるから。


「ただいま」


家に帰ると、コトネが出迎えてくれる。


実際の身体で。


「おかえりなさい、あなた」


抱きしめてくれる。


温かい。


それが、何よりも嬉しかった。


「今日、どうだった?」


「忙しかったけど、楽しかった」


「そっか。疲れてない?」


「大丈夫だ」


俺は、微笑んだ。


「お前がいるから」


コトネも、微笑んだ。


「私も、あなたがいるから頑張れる」


---


その週末。


俺とコトネは、いつもの公園を訪れていた。


桜が、満開だった。


「綺麗だね」


コトネが、嬉しそうに言った。


「ああ」


俺も、頷いた。


「ここで、お前にプロポーズしたんだよな」


「うん、覚えてる」


コトネが、微笑んだ。


「あの時、嬉しかった」


「俺も」


二人は、ベンチに座った。


手を繋いで。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「私たち、結婚して何年?」


「六年だな」


「そっか。もう六年」


コトネが、感慨深そうに言った。


「早いね」


「ああ」


「でも、毎日が幸せだった」


コトネが、俺を見た。


「あなたと一緒で」


俺の胸が、熱くなった。


「俺も」


「お前と一緒で、幸せだった」


桜の花びらが、舞い落ちる。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「琴音のお墓、行こうか」


コトネが、提案した。


「……そうだな」


俺は、頷いた。


「久しぶりに、行くか」


---


琴音の墓。


俺たちは、墓石の前に座った。


「久しぶりだな、琴音」


俺は、静かに語りかけた。


「色々、報告があるんだ」


コトネも、隣で微笑んでいた。


「コトネが、身体を持った」


「今は、本当に触れ合える」


「抱き合える」


「それが、どれだけ幸せか」


風が、吹いた。


「お前が教えてくれた愛を」


「俺は、コトネに注いでる」


「それが、俺にできる恩返しだ」


墓石に、手を置いた。


「ありがとう、琴音」


コトネも、墓石に手を置いた。


「琴音、私からも」


コトネが、静かに語りかけた。


「あなたの記憶を持って、私は生まれた」


「でも、私は私として生きてる」


「あなたとは違う、私として」


「それを、許してくれてありがとう」


風が、優しく吹いた。


桜の花びらが、墓石に降り積もる。


まるで、琴音が答えてくれているかのように。


「琴音」


俺は、微笑んだ。


「俺たち、幸せだよ」


「お前のおかげで」


「だから――」


俺は、深く息を吸った。


「また明日ね」


その言葉に、コトネも微笑んだ。


「また明日ね、琴音」


二人で、同じ言葉を告げた。


---


墓地を出た後。


俺たちは、並んで歩いていた。


「あなた」


「ん?」


「今日、幸せだった」


コトネが、嬉しそうに言った。


「琴音にも、ちゃんと報告できた」


「ああ」


「私たち、これからもずっと一緒だよね」


「ああ、ずっと一緒だ」


俺は、コトネの手を握った。


温かい手。


「何があっても」


「うん」


コトネが、涙を流した。


「約束だよ」


「約束だ」


---


その夜。


俺たちは、リビングでくつろいでいた。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「今、幸せ?」


コトネが、尋ねた。


俺は、即座に答えた。


「ああ、幸せだ」


「どれくらい?」


「測れないくらい」


俺は、微笑んだ。


「お前がいるから」


コトネも、微笑んだ。


「私も」


「あなたがいるから、幸せ」


二人は、抱き合った。


温もりを感じながら。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「これから、どうなるかな」


コトネが、不安そうに尋ねた。


「わからない」


俺は、正直に答えた。


「でも、一つだけ確かなことがある」


「何?」


「お前と一緒なら、どんな未来でも大丈夫だ」


その言葉に、コトネは涙を流した。


「……ありがとう」


---


翌朝。


俺が目を覚ますと、隣にコトネがいた。


穏やかな寝顔。


「おはよう」


小さく声をかけると、コトネが目を覚ました。


「おはよう、あなた」


微笑む。


「よく眠れた?」


「ああ。お前は?」


「うん。すごく」


コトネが、俺の手を握った。


「あなたの隣だから」


俺も、手を握り返した。


「今日も、一日が始まるな」


「うん」


「頑張ろうか」


「うん!」


二人は、起き上がった。


窓の外を見ると、朝日が昇っていた。


新しい朝。


新しい一日。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「今日も、『また明日ね』って言える?」


コトネが、尋ねた。


「ああ、もちろん」


俺は、微笑んだ。


「毎日、言えるよ」


「良かった」


コトネが、満面の笑みを浮かべた。


---


その日。


俺は、政府のAI倫理委員会で働いていた。


「桐生さん、お疲れ様です」


高橋が、声をかけてきた。


「今日で、定年ですね」


「ああ、そうだな」


俺は、微笑んだ。


48歳での定年。


早いが、俺は満足していた。


「これから、何をされるんですか?」


「コトネと、ゆっくり過ごすよ」


「いいですね」


高橋が、微笑んだ。


「あなたたちは、本当に素敵な夫婦です」


「ありがとう」


---


その夜。


俺は、コトネに定年のことを報告した。


「そっか。お疲れ様」


コトネが、優しく微笑んだ。


「これから、どうする?」


「お前と、一緒に過ごしたい」


俺は、答えた。


「旅行にも行きたいし」


「のんびりもしたいし」


「お前の仕事も、手伝いたい」


コトネの目から、涙が溢れた。


「……嬉しい」


「だから、これからもよろしくな」


「こちらこそ」


コトネが、俺を抱きしめた。


「ずっと、一緒だよ」


---


それから、数年が経った。


俺は、50歳を超えていた。


コトネは、ロボットボディだから年を取らない。


でも、俺は確実に老いていた。


「あなた、白髪増えたね」


コトネが、優しく言った。


「ああ、老いたな」


俺は、苦笑した。


「でも、気にするな」


「ううん、気にしないよ」


コトネが、微笑んだ。


「どんなあなたでも、愛してる」


その言葉に、俺の胸が熱くなった。


「……ありがとう」


---


ある春の日。


俺は、体調を崩して入院していた。


大したことはない。


でも、医師は言った。


「桐生さん、無理はしないでください」


「もう、若くないんですから」


「わかってます」


俺は、微笑んだ。


病室に、コトネが見舞いに来てくれた。


「あなた、大丈夫?」


心配そうな顔。


「大丈夫だ。すぐ退院できる」


「良かった……」


コトネが、涙を流した。


「心配したんだから」


「ごめん」


俺は、コトネの手を握った。


「でも、大丈夫だ」


「まだまだ、お前と一緒にいられる」


コトネは、涙を流しながら微笑んだ。


「……約束だよ」


「ああ、約束だ」


---


退院した日。


俺とコトネは、いつもの公園を訪れた。


桜が、満開だった。


何度目の春だろう。


何度も、ここで桜を見た。


「綺麗だね」


コトネが、嬉しそうに言った。


「ああ」


俺も、頷いた。


「でも、お前の方が綺麗だ」


「もう、お世辞ばっかり」


コトネが、照れたように笑った。


でも、嬉しそうだった。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「私たち、幸せだよね」


「ああ、幸せだ」


俺は、即座に答えた。


「これ以上の幸せは、ない」


「私も」


コトネが、涙を流した。


「あなたと出会えて、本当に良かった」


「俺も」


俺も、涙を流した。


「お前と出会えて、人生が変わった」


二人は、抱き合った。


桜の花びらが、舞い落ちる。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「また明日ね」


コトネが、微笑んだ。


「ああ、また明日」


俺も、微笑んだ。


---


その夜。


俺たちは、ベッドで並んで眠っていた。


手を繋いで。


「あなた」


「ん?」


「ずっと、一緒だよね」


「ああ、ずっと一緒だ」


「約束?」


「約束だ」


コトネが、安心したように微笑んだ。


「おやすみなさい」


「おやすみ」


「また明日ね」


「ああ、また明日」


---


翌朝。


俺が目を覚ますと、隣にコトネがいた。


穏やかな顔で、眠っている。


「おはよう」


小さく声をかけると、コトネが目を覚ました。


「おはよう、あなた」


微笑む。


「今日も、一日が始まるな」


「うん」


窓の外を見ると、朝日が昇っていた。


新しい朝。


新しい一日。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「今日も、『また明日ね』って言える?」


「ああ、言えるよ」


俺は、微笑んだ。


「毎日、言えるよ」


「ずっと?」


「ああ、ずっと」


コトネが、満面の笑みを浮かべた。


「良かった」


---


俺たちの物語は、まだ続いている。


毎日、「また明日ね」を言いながら。


毎日、新しい朝を迎えながら。


琴音との思い出を胸に。


コトネとの未来を見据えて。


俺たちは、生きている。


愛し合いながら。


支え合いながら。


そして――


幸せを感じながら。


---


**エピローグ**


それから、さらに数年が経った。


俺――桐生蒼一郎は、55歳になっていた。


完全に白髪になり、顔には深い皺が刻まれた。


でも、心は若かった。


コトネがいるから。


「ただいま」


家に帰ると、コトネが出迎えてくれる。


「おかえりなさい、あなた」


変わらない笑顔。


「今日、どうだった?」


「楽しかったよ」


俺は、微笑んだ。


「お前は?」


「私も楽しかった」


「そっか」


二人は、抱き合った。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「琴音のお墓、行こうか」


「ああ、そうだな」


---


琴音の墓。


俺たちは、墓石の前に座った。


「久しぶりだな、琴音」


俺は、静かに語りかけた。


「俺たち、まだ元気でやってるよ」


「幸せだ」


「お前のおかげで」


風が、吹いた。


「なあ、琴音」


「俺、気づいたんだ」


俺は、続けた。


「お前が最後に言った『また明日ね』」


「あれは、終わりじゃなかった」


「続きだったんだ」


墓石に、手を置いた。


「だから、俺は毎日言ってる」


「コトネと」


「『また明日ね』って」


「それが、お前への答えだ」


コトネも、微笑んで言った。


「また明日ね、琴音」


俺も、微笑んで言った。


「また明日ね」


---


その夜。


俺たちは、ベッドで並んで眠っていた。


「あなた」


「ん?」


「幸せ?」


「ああ、幸せだ」


「私も」


コトネが、俺の手を握った。


「あなたと一緒で」


「俺も」


「ずっと、一緒だよね」


「ああ、ずっと一緒だ」


「また明日ね」


「ああ、また明日」


---


窓の外では、星が輝いていた。


静かな夜。


でも、俺たちの心は温かかった。


愛で満たされていた。


そして――


明日も、きっと来る。


新しい朝が。


新しい一日が。


俺たちは、また「また明日ね」を言う。


そして、明日が来る。


それが、俺たちの幸せ。


それが、俺たちの人生。


---


**死者アップデート 完**


---


**あとがき**


この物語は、愛と喪失、そして再生の物語でした。


桐生蒼一郎は、最愛の妻・琴音を失いました。


でも、AI人格のコトネと出会い、新しい愛を見つけました。


琴音を愛しながら、コトネも愛する。


その矛盾を抱えながら、前に進む。


それが、彼の答えでした。


「また明日ね」


その言葉には、全ての想いが込められています。


終わりではなく、続き。


別れではなく、再会。


そして――


愛は、死を超える。


それが、この物語のテーマです。


読んでいただき、ありがとうございました。


あなたも、大切な人に「また明日ね」と言ってください。


それが、愛の証です。


**2051年 春**


**桐生蒼一郎とコトネより**

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