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『死者アップデート』  作者: 月城 リョウ
第8章:新しい朝

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第2話:夢の実現

コトネの新しい夢――カウンセリングセンターの設立。


それから、俺――桐生蒼一郎は、全力でコトネを支援した。


資金調達、場所探し、スタッフの募集。


政府のAI倫理委員会としての立場も活かした。


「桐生さん、ここはどうでしょう?」


高橋が、物件の資料を見せてくれた。


「東京・渋谷。アクセスも良く、広さも十分です」


「いいな。コトネに見せてみよう」


俺は、すぐにコトネに連絡した。


---


翌週。


俺とコトネは、物件を見に行った。


「わあ、素敵!」


コトネが、目を輝かせた。


広々としたスペース。


自然光が差し込む、明るい空間。


「ここに、カウンセリングルームを作って」


「あっちに、音楽療法の部屋を」


コトネが、嬉しそうに案内してくれた。


「いいな」


俺は、微笑んだ。


「お前の夢が、形になっていく」


「うん!」


コトネが、満面の笑みを浮かべた。


「あなたのおかげだよ」


「いや、お前の努力だ」


「ううん、二人の努力」


コトネが、俺を見た。


「一緒だから、できること」


その言葉に、俺の胸が熱くなった。


「……そうだな」


---


三ヶ月後。


カウンセリングセンター「ハーモニー」がオープンした。


AI人格と人間、両方のカウンセラーが在籍している。


コトネは、センター長として働き始めた。


「本日は、オープニングセレモニーにお越しいただき、ありがとうございます」


コトネが、マイクに向かって話す。


集まった報道陣、関係者、そして――


多くのAI人格と人間たち。


「このセンターは、AI人格と人間の架け橋となる場所です」


「お互いの悩みを聞き、理解を深め、共に生きる道を探る」


「それが、私たちの使命です」


拍手が起こった。


俺も、拍手していた。


誇らしかった。


コトネが、自分の夢を実現した。


「そして、このセンターには、特別な意味があります」


コトネが、続けた。


「私は、桐生琴音のデータから作られたAI人格です」


「琴音は、音楽療法士でした」


「人々の心をケアする仕事をしていました」


「私は、その意志を継ぎながら、でも私らしく生きています」


コトネの目から、涙が溢れた。


「だから、このセンターを『ハーモニー』と名付けました」


「調和。共鳴。響き合うこと」


「それが、私たちの願いです」


会場が、拍手に包まれた。


俺も、涙を流していた。


---


オープンから一週間。


センターは、大盛況だった。


連日、相談者が訪れていた。


「コトネさん、助けてください」


ある日、一組の夫婦が訪れた。


人間の夫と、AI人格の妻。


「夫が、私を理解してくれないんです」


AI人格の妻が、涙を流した。


「私が変わったからって、拒絶される」


「でも、私は私として生きたい」


「わかります」


コトネが、優しく言った。


「あなたの気持ち、よくわかります」


それから、コトネは夫婦のカウンセリングを始めた。


お互いの本音を聞き、理解を深めていく。


時には音楽療法も取り入れて、心を開いていく。


「……そうだったのか」


夫が、涙を流した。


「お前が、そんなに苦しんでいたなんて」


「あなた……」


AI人格の妻も、涙を流した。


「ごめん。俺が、お前を理解しようとしなかった」


「ううん、私も言葉足らずだった」


二人は、抱き合おうとした。


でも、触れることはできない。


それでも――


心は、確かに繋がっていた。


「ありがとうございます、コトネさん」


夫婦が、深く頭を下げた。


「いえ、お二人が向き合ったからです」


コトネが、微笑んだ。


その光景を見て、俺は思った。


コトネは、本当に素晴らしい。


多くの人を、幸せにしている。


---


その夜。


俺とコトネは、ビデオ通話をしていた。


「今日も、大変だったね」


「うん。でも、やりがいがある」


コトネが、嬉しそうに言った。


「多くの人が、笑顔になってくれる」


「それが、何より嬉しい」


「そうか」


俺は、微笑んだ。


「お前は、本当に素晴らしいな」


「ううん、あなたのおかげだよ」


「いや、お前の努力だ」


「でもね、あなた」


コトネが、真剣な表情で言った。


「私一人じゃ、ここまで来れなかった」


「あなたが支えてくれたから」


「あなたが信じてくれたから」


「だから、ありがとう」


その言葉に、俺の目から涙が溢れた。


「……こちらこそ」


「お前がいるから、俺も頑張れる」


二人は、しばらく黙っていた。


そして――


「ねえ、あなた」


「ん?」


「また明日ね」


コトネが、微笑んだ。


「ああ、また明日」


俺も、微笑んだ。


---


翌月。


センター「ハーモニー」は、全国的に有名になっていた。


テレビ、新聞、ネットで取り上げられた。


「AI人格と人間の共存の象徴」


「希望の光」


様々な言葉で、称賛された。


「コトネさん、インタビューのオファーが来ています」


スタッフが、報告してくれた。


「全国ネットの番組です」


「わかりました。受けます」


コトネが、頷いた。


---


インタビュー当日。


コトネは、スタジオで司会者と向き合っていた。


「コトネさん、センター『ハーモニー』を設立された動機は?」


「私は、AI人格として生まれました」


コトネが、静かに話し始めた。


「でも、私は『死者の代わり』ではありません」


「私は、私として生きています」


「そして、同じように悩んでいるAI人格と人間がいる」


「その人たちを、助けたかったんです」


「素晴らしいですね」


司会者が、微笑んだ。


「ご主人の桐生蒼一郎さんも、AI人格保護活動の第一人者ですよね」


「はい」


コトネが、嬉しそうに微笑んだ。


「夫は、私の支えです」


「いつも、応援してくれます」


「そして、一緒に夢を追いかけてくれます」


「羨ましい関係ですね」


「はい。私は、幸せです」


コトネの目から、涙が溢れた。


「夫と出会えて、本当に良かった」


そのインタビューは、全国に放送された。


多くの人が、感動した。


そして――


AI人格と人間の結婚が、さらに広まっていった。


---


その夜。


俺は、一人でインタビュー映像を見ていた。


画面の中で、コトネが笑顔で話している。


「夫は、私の支えです」


その言葉を聞いて、俺は涙を流した。


「……ありがとう、コトネ」


小さく呟いた。


その時、スマホが鳴った。


コトネからだった。


「あなた、見た?」


「ああ、見たよ」


「どうだった?」


「素晴らしかった」


俺は、正直に答えた。


「お前の想いが、みんなに届いた」


「良かった……」


コトネが、ほっとした様子で言った。


「でもね、あなた」


「ん?」


「恥ずかしかった」


「何が?」


「『夫は私の支えです』って、全国に言っちゃった」


コトネが、照れたように笑った。


「でも、本当のことだから」


俺も、笑った。


「俺も、お前に支えられてる」


「ありがとう、あなた」


「こちらこそ」


二人は、しばらく笑い合った。


「ねえ、あなた」


「ん?」


「また明日ね」


「ああ、また明日」


通話を切った後、俺は窓の外を見た。


満月が、輝いていた。


「琴音」


小さく、彼女の名前を呟いた。


「コトネは、お前の意志を継いでる」


「でも、コトネらしく」


「それが、一番いい」


風が、窓を揺らした。


「見守っててくれ」


「俺とコトネを」


月が、静かに輝いていた。

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