表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

第5話 誤解の波紋と守る決意

 春の朝が、静かに訪れてた。

 4月7日。

 新学期2日目の朝だ。

 窓の外。

 桜の花びらが、朝露に濡れて地面に貼り付いてる。

 空は薄曇り。

 昨日より少し肌寒い。

 俺、袋田龍輝は、ベッドで目を覚ました。

 昨日の温泉の衝撃が、まだ頭に残ってる。

 千陽が女だったなんて。

 心臓がドキドキしてた感覚。

 今も少し疼いてる。

 枕元のスマホが鳴る。

 千陽からのメッセージだ。

「リュウちゃん、おはよ。

 今日も起こしに行くから待っててね」

「お前、また来んのかよ…」

 呟きながら返信を打つ。

「服着てこいよ」

 昨日、手紙で千陽の気持ちを知った。

 9年間、俺を忘れなかった親友。

 その想いが、胸に重く響いてる。

 布団から這い出す。

 窓を開ける。

 冷たい風が顔を撫でる。

「おはよ、リュウちゃん!」

 玄関から千陽の声。

 早すぎだろ。

 階段を下りる。

 リビングで母さんが朝飯の支度中。

 千陽がすでにいる。

「おはよう、龍輝。

 千陽ちゃん、また来てくれたよ」

 母さんが笑顔で言う。

「おはよ、おばさん。

 リュウちゃんと朝ご飯食べるの好きだからさ」

 千陽がニコニコ。

「そっか。

 龍輝、千陽ちゃんに感謝しなさいよ」

「…サンキュー」

 千陽が淹れたコーヒーの香りが漂う。

 トーストに目玉焼きとサラダ。

 母さんの手作りだ。

「お前、毎日こうやって俺の隣にいるつもりか?」

「うん、ずっと隣にいたいから。

 親友だろ?」

「お前、昨日『半分本気』って言ったよな。

 あれ何だよ?」

「ふふっ、リュウちゃんが気にしてるんだ。

 嬉しいな。

 半分本気ってのは、半分はまだ親友としてだよ」

「半分って…

 じゃあ残りの半分は?」

「それはリュウちゃんが俺のこと、ちゃんと女として見てくれたら分かるよ」

「…面倒くせぇ奴だな」

「リュウちゃんにしか言わねぇよ?」

 ニヤッと笑う千陽。

 こいつ、ほんとズルい。

 学校に向かう自転車。

 千陽が隣を走る。

 桜並木が、薄曇りの空の下で静かに揺れてる。

「なぁ、リュウちゃん。

 今日も一緒に帰ろうな」

「別に良いけど…

 お前、毎日くっついてくるつもりか?」

「うん、ずっと隣にいたいから。

 親友だろ?」

「親友ってそんなベタベタするか?」

「俺とリュウちゃんは特別じゃん。

 昔みたいにさ」

 昔みたいに、か。

 確かに小さい頃は、千陽が俺について回ってた。

 でも今は、なんか違う気がする。

 教室に着く。

 昨日より視線が落ち着いてた。

 千陽の「女です」宣言が効いたのか?

 でも、休み時間になると様子が変わる。

 男子が数人、寄ってきた。

「なぁ、袋田。

 二島ってほんと女なんだな。

 昨日スカート見て確信したわ」

「だからそう言っただろ」

「でもさ、お前ら付き合ってんの?」

「はぁ?

 付き合ってねぇよ。

 親友だよ」

「親友で毎朝一緒に登校って、怪しくね?」

「怪しくねぇ!

 隣の家だから自然だろ!」

「ふ~ん。

 まぁ、二島がイケメンすぎて女って気づかなかった俺らが悪いか」

 笑いながら去ってく。

 付き合ってるって何だよ。

 あり得ねぇ。

 昼休み。

 千陽が弁当を広げる。

「お前、今日も俺の分まで?」

「うん、おばさんに頼んでね。

 リュウちゃんが食べてくれると嬉しいから」

「…悪いな」

「良いよ。

 親友だもん。

 それに、リュウちゃんの隣で食べるの好きだし」

 ニコッと笑う千陽。

 こいつの気遣い、ズルいな。

 すると、女子数人が近づいてきた。

「ねぇ、二島さん。

 袋田くんと毎日一緒にいるよね?」

「うん、幼なじみだし、隣の家だからね」

「でもさ、なんかカップルみたいだよ。

 昨日のお風呂の話とか聞いてるとさ」

「カップルじゃねぇよ。

 親友だよ。

 ね、リュウちゃん?」

「そうだよ!

 お前ら勝手に変な想像すんな!」

「でも、二島さんってカッコいいし、袋田くんのこと大事にしてる感じするよね」

「大事だよ。

 リュウちゃん、俺のヒーローだから」

「何!?」

 突然の言葉に驚く。

 女子たちがキャッキャ笑う。

「ヒーローって何!?

 やっぱ付き合ってんじゃねぇの?」

「付き合ってねぇって!」

 オリジナルストーリー:誤解の波紋と対決

 放課後。

 教室で千陽が俺を待ってる。

「なぁ、リュウちゃん。

 コンビニ寄って帰ろうぜ」

「良いけど、またお菓子買って俺の部屋か?」

「うん、リュウちゃんの部屋落ち着くし。

 ダメ?」

「…まぁ、良いけど」

 企んでる顔だ。

 分かってる。

 でも、断れねぇ。

 教室を出ようとすると、男子数人が立ちはだかる。

 リーダー格の奴が口を開く。

「なぁ、袋田。

 二島って女なんだろ?

 昨日のお風呂って何だよ?」

「何って…

 幼なじみだから、一緒に入っただけだよ。

 変なことしてねぇ」

「変なことって何だよ?

 お前ら、怪しいだろ。

 BLカップルか?」

「BLじゃねぇ!

 千陽は女だよ!」

「女でもイケメンすぎるし、気持ち悪いって噂になってんだよ」

 気持ち悪い?

 千陽が?

 頭に血が上る。

「何!?

 お前ら、何だその言い方!」

 拳を握る。

 千陽が俺の腕を掴む。

「リュウちゃん、落ち着いて。

 良いよ、慣れてるから」

「慣れてるって何だよ!

 気持ち悪いって何だよ!

 千陽が何したって言うんだ!」

「落ち着けよ、袋田。

 たださ、二島が女なら女らしくしろって話だ。

 イケメンぶってんなよってさ」

「お前らに千陽の何が分かるんだ!

 女だろうと男だろうと、千陽は千陽だろ!」

「へぇ~、熱くなるなよ。

 お前、ほんと二島と付き合ってんだな」

 ニヤニヤ笑う奴ら。

 我慢の限界だ。

 拳を振り上げる。

 その瞬間、後ろから声。

「やめなさい、リュウちゃん!」

 振り向く。

 ゴスロリ姿の小柄な女。

 神峰時見、ミーだ。

「下僕がそんな下等な奴らと戦うなんて、我が許さんぞ」

「ミー!

 お前、なんでここに?」

「チーちゃんが困ってるって噂、耳に入ったからさ。

 リュウちゃん、また殴りかかろうとしてたでしょ?」

 隣にヒロミもいる。

 美少女男がニコッと笑う。

「リュウちゃん、僕らが守るよ。

 昔みたいにさ」

「昔みたいにって何だよ?」

 ミーが扇子を手に持つ。

「下等な奴らは、我が魔力で追い払う。

 下がれ」

 扇子を振る。

 風圧で男子たちが一歩後ずさる。

「何!?

 お前ら、何者だよ!」

「我は高貴なる吸血鬼の一族。

 お前らゲスに用はねぇ」

 ヒロが笑う。

「ミーちゃん、やりすぎだよ。

 でも、リュウちゃん、千陽ちゃんは僕らが守るから。

 殴っちゃダメだよ」

 男子たちが呆気に取られて去る。

「何だ、あいつら…

 気持ち悪い集団だな」

 千陽が肩を落とす。

「ごめん、リュウちゃん。

 俺のせいでまた迷惑かけた」

「何!?

 お前が謝ることじゃねぇだろ!

 あいつらが悪いんだよ!」

 ミーが扇子を閉じる。

「チー子は我が守る。

 リュウちゃんも下僕として守るよ」

 ヒロが頷く。

「そうだよ。

 4人でまた一緒なんだからさ。

 昔みたいに守り合おうよ」

「昔みたいにって…

 何だよ、それ」

「リュウちゃん、忘れてるだけだよ。

 でも、良いよ。

 少しずつ思い出せばさ」

 千陽が俺の手を握る。

「リュウちゃん、ありがとう。

 守ってくれて嬉しいよ」

「お前、いつも俺を混乱させるな」

「リュウちゃんにしか言わねぇよ?」

 ニヤッと笑う千陽。

 ミーとヒロも笑う。

 4人の絆が、春の夕暮れに響き合った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ