プロローグ:温泉での再会と混乱
「おい、何恥ずかしがってんだよ! 童貞ならさ、俺と済ませちまおうぜ。俺の処女、もらってくれるよな?」
幼なじみの千陽がニヤリと笑いながら俺に迫ってきた瞬間、頭の中が真っ白になった。
離れて暮らすようになって9年。久しぶりに会った親友と温泉旅行に来たはずが、なぜこんな状況に陥ってるんだ? 俺の理解が追いつかない。
千陽は男らしくタオルを肩に引っかけて隠す素振りもなく、堂々と風呂場に踏み込んできた。湯気の中、俺の視線は自然とそいつの股間に落ちる。そこには……あるはずのものがない。
「えっ?」
俺と同じチンコが付いてるはずなのに、ない。
ない!
思わず風呂の隅に逃げ込んで、
「きゃーーー!」
と情けない悲鳴を上げてしまった。
「ははっ、可愛い声で鳴くなよ。いいじゃねぇか」と千陽は笑う。
「待て、待て、本当に待ってくれ、千陽。チンコはどこ行ったんだよ? 海外にいる間に性転換でもしたのか?」
混乱しかない。
唯一無二の親友に付いてるはずのものが、忽然と消えている。しかも千陽はそれを仁王立ちで隠す気もなく、惜しげもなく見せつけてくる。男らしさなんて言葉じゃ収まりきらない大胆さだ。
よく見ると、薄い毛が綺麗に整えられていて、「埋もれてるだけかも」という淡い期待すら打ち砕かれる。そこにあるのは、紛れもなく女の証だった。
初めて目にするその「丘」。思春期の男なら誰もが夢に見る、あの憧れの丘が目の前に堂々と存在している。
「何言ってんだ、リュウちゃん? 俺、生まれたときから女だぜ?」
千陽は湯船に膝まで浸かりながら、平然と言い放った。
「はあ?」
俺の声が裏返る。
「ほら、ちゃんと見ろよ。ないだろ?」
腰に手を当て、大股を開いて腰をクイッと突き出す千陽。お腹はほどよく引き締まり、あと少しで腹筋が六つに割れそうなほどだ。そして下は……確かに「二つ」に割れている。
見たい。見たくない。見たいけど、見れない。
凝視なんてできるわけがない。恥ずかしさが俺を支配する。
「バカ、そんな見られるかよ!」
声を荒げて抗議すると、千陽はニヤニヤしながら続ける。
「恥ずかしがるなって。俺とリュウちゃんの仲だろ? 初めて見る女の性器、どうだ? 入れてみたいだろ? 思春期の男ってさ、穴ならなんでも入れてみたいって雑誌に書いてあったぞ」
「どんな雑誌読んでんだよ! それより、俺とお前は親友だろ? 親友同士でそういうことしないんだよ!」
背を向けて必死に言い返す俺に、千陽は勢いよく湯船に飛び込んできた。
「うりゃ~! 誰がそんなルール決めたんだよ? 別にいいじゃん!」
「うわっ、抱きつくな!」
ダイビングしてきた千陽に背中からがっちり捕まれる。背中に当たるのは、ぷにゅりとした柔らかい感触。小さめだけど確かに主張する二つの「山」。女の胸だ。
おっぱいだ。サイズは……Aカップくらいか? それでも柔らかさが背中に伝わり、全神経がそこに集中してしまう。
そして、まずいことに、俺の股間が反応し始める。
「俺、出る!」
慌てて叫ぶと、千陽はニヤリと笑って、
「おっ、出すか?」
「違うーー!」
温泉の滑りやすい床を利用して、なんとか千陽の腕から抜け出し、俺は湯船から飛び出した。
背後から聞こえてきたのは、
「ちっ、失敗したか」
という千陽のハスキーな声だった。