五重の塔7
五階へ続く重い扉を押し開けた。
中は広い大広間。中央に、場違いなほどぽつんと椅子が一脚置かれており、そこに一人の人影がうなだれて座っていた。
顔は見えないが、あの髪の色、間違いない。
「待たせたな。」
軽く手を挙げて声をかけると、その人物はゆっくりと立ち上がり、こちらへ歩み出てきた。
「やっと来たか。見事に全員揃っているようで何よりだ。」
「よく言うぜ。あんな試練用意しておいて、危うく脱落しかけたんだぞ。」
「確かに、二階とかは大変だったかもな。」
「いや、四階。」
「四階は・・まぁ何か有ってもおかしくはないけど。」
「から五階の通路。」
「それは俺関係ないと思うんだが。」
「バカ言え!きっかけを作ったやつが悪いに決まってんだろ!あの精神年齢を下げる部屋のせいで散々だったんだぞ。どういう仕掛けだよ。」
「あれは魔法だよ。昔、脳波に干渉できる奴がいてな。その能力をコピーしただけだ。」
ほんと、コイツすげぇな。これ以上の驚きなんてそうそうないぞ。
「どうしたのシエン?さっきから目を丸くして。」
「お、お兄ちゃん?」
「嘘だろ?!」
「最速で記録塗り替えられてるわね。」
「そりゃそうだろ。え、神の兄?どういうことだ?」
「シエン、お前のことも待っていたぞ。この転移者のPSを見て、もしかしたらと思ったんだ。」
「やっぱり、本当にお兄ちゃんなんですね!今まで一体どこに・・。」
「ちょっと待って。」
トキが間に入るように声を上げた。
「あなた、シエンの兄というのは本当なの?」
「あぁ、そうだ。」
「じゃあ証拠を見せてくれるかしら。」
確かに、姿を自由に変えられるPSの使い手もいる。シエンの兄を偽ってる可能性は捨てきれない。
「仕方ない。S-バースト!」
シユウが叫び、両手を前へ突き出す。瞬間、腕からスライムがボタボタと垂れ落ちた。
「血縁関係は間違いねぇな。」
「バカ。相手は能力をコピーできるのよ。他人の技を真似ただけかも知れないわ。」
「うん。それに、PSは普通一人一つだしね。」
「いや、それは違うよ。」
シラスの発言を、シユウが否定する。付け加えるようにトキが解説をした。
「シラス。神は通常、PSを二つ持つの。一つは転移者に分け与えるためにね。」
「え、そうなのかい?」
「あぁ。俺のも、元はシエンから与えられたものだ。」
つまり、こいつは転移者に渡さず、自分で二つの力を持っていたということになる。最も、一つはクソ使えない能力だと思うが。
「そう、このスライムを腕から出す能力が、生まれつきのPSだ。これに愛想を尽かした俺は、転移者を呼ぶと嘘をつき、もう一つ能力を手に入れたということさ。」
「となると、やっぱりお兄ちゃんなんですね。」
「そうだ。久しぶりだな、シエン。と言っても、お前は俺のことを覚えてないだろうが。」
「そんな昔から会ってないのか?」
「はい。昔に家を出て行ったとしか聞いてません。なので、姿を見たのも写真だけです。」
そうなのか。じゃあよくわかったな。
「待て、じゃあ転移者じゃないって事か?」
「そうだ。知りたい情報、これで知れただろ?」
「ちげーよ!俺が知りたいのは敵の転移者の情報!お前、まさか敵ですらないのか?」
「ふ、それは違うぜ。」
「な!」
すると、瞬きする間に移動するシユウ。いつのまにかシラスの背後を取っていた。
「俺は敵の転移者と、闘技場を通じて知り合っていた。何故か、死体を欲しがってたんでな。」
死体を欲しがる?!何の目的でだ。悪趣味にも程があるだろ。
「メアリースー様への会い方を教えてやろう。ただし、コイツの命は貰うがな。」
「おっけー、頼んだ。」
「お願いするわ。」
「あれ、コイツそっちの仲間だよな?」
困惑しているシユウ。捉える相手を間違えたな。
「そうですけど、やむを得ません。シラスさん!死んでください!」
「いや、二十回目はちょっと・・。」
「いや一回目で言え!と言うか、どんだけ殺されてるんだ?」
そりゃそうなるよな。生き返るなんて奇天烈にもほどがある。
「シラス、大丈夫よ。貴方が認知してないだけで、百回は普通に超えてるわ。八十回分ぐらいお得よ。」
「ならいいか・・。」
「本人なら良いなら良いけど、つまり生き返るPSって事か?」
「そうだ。今更前言撤回なんてさせねーぞ。」
「それは良いが、ほら。」
すると、シラスの手首に銀の輪っかを付けるシユウ。あれはまさか・・?!
「これならどうなるかな?」
そして、サバイバルナイフをポケットから取り出し、背後から首を切ろうとするシユウ。
「ま、待て!」
虚しく静止は間に合わず、シラスは喉を掻っ切られた。




