五重の塔3
二階へ続く階段を登る。登り切ると、一番奥に人の形をした、真っ黒で影のようなものが立っていた。どうやら今回はアイツと戦うことになりそうだな。まずは近くの立て札を確認する。
「こいつは闘技場で君と戦った時の僕と同じ戦闘力のものだ。あの時との違いを見せてくれ。横に立てかけてる剣を使えば、一撃当てるだけで倒せる。」
「おいおいマジか。あのレベルのやつなら相当キツイぞ。」
「でも、この剣を使えば一撃で良いって書いてます。とりあえず当てれば大丈夫そうですね。最悪、投げてもいいかもです。」
そう言って、立て札に立てかけられていた剣を手に取るシエン。その発想もありだな。
「そうね。しかも今回は四人いるし、それなら強敵でも問題ないわ。」
戦った事がないからか、余裕を見せるパーティーメンバーたち。しかし俺から見れば、あの闘技場で戦ったシユウそのものなら、不意をつくことすら許されなさそうなんだよな。陰や陽に一発当てろと言ってるようなものと一緒だし。
「心配しないで。物は試しよ。行きなさい、私のmyスレイブ!」
「あいあいさー!」
トキの掛け声で、臨戦態勢になるシラス。
「myの無駄遣いすんな。と言うか、スレイブでシラス反応するんだな。」
「そりゃあ、レディのナイトは僕しかいないだろう?」
ん?スレイブの意味をナイトと勘違いしてると言うことか?どっちも英語なのに何でそんな事が起きるんだ。ま、俺も様子を見たいから、そのままお願いしよう。
「そりゃそうだ。頼んだぜ。」
「あぁ。出番を奪って悪いね!じゃあ!」
そう言いながら突っ込んでいくシラス。ただし、剣はシエンが持ったままだけど、どうするつもりだ?
「よし、後ろを取った!今だ!やっつけてくれ!」
敵を羽交い締めにするシラス。意外に使えるな。
「私がいくわ!シエン、その剣借りるわよ!」
「はい、どうぞ!」
すぐさまシエンから剣を受け取り、敵に向かって突進するトキ。。そのまま剣を突き刺すーーと思ったら、シラスごと突き刺した。
「ぐはぁ!」
血を吐いて地面に倒れるシラス。
「あら、ごめんなさい。わざとじゃないわ。」
「うっかりでもやっちゃダメだろ。」
そしてそう言ってる割に、全く躊躇いを感じられなかった。
「大丈夫、ちゃんと後で葬式をするわ。」
「供養したらいいってことじゃねーんだよ。どう見ても無駄死にだろ。生き返るからって可哀想だと思わないのか。」
「そんなこと思わないわけないじゃない。」
あれ、意外だな。思ってるわけないと思ったんだけど。
「ただ、物事には優先順位ってものがあるの。可哀想と思うより、死ぬのを見るのが楽しいの。」
「やっぱり可哀想と思ってねーじゃねーか。」
「いじめ依存症なの。仕方ないでしょ。」
「無理矢理病気っぽくしてもダメだぞ。」
それが許されるのは本当に鬱病とかの人だけだ。
「別にいいじゃない。どうせ五分経てば時効になるんだから。」
どうやら今までのも無かったことにされてるらしい。みんなの分まで、おれが彼を憐んであげるとしよう。
「それより・・トキ、剣を貸してくれ。」
「どうしたの?・・成る程、さっきのは幻覚だったのね。」
また別の場所に現れている黒い影。最初のはトキが言った通り幻覚だったみたいだ。今見えてるのも本物とは限らない。
俺はトキから剣を受け取り、W-サーチを発動させた。