王様ゲーム
「王様ゲーム!」
「いぇぇぇぇぇい!」
とあるクエストのない日。旅館のラウンジに呼び出され、シエン、トキ、シラス、太郎、俺の五人が集まっていた。そして、丸テーブルを囲うように座っている。
「急にはしゃいでるけど、どうした?変なキノコでも食ったか?」
「違います!勇さん、王様ゲームしますよ!王様ゲーム!」
シエンもノリノリだな。企画者誰だ?
「と言うか、一人心読めるやついるけど大丈夫か?」
「大丈夫よ。」
即答をするトキ。
「いや、心読めるやつには聞いてない。」
「奇遇ね。私も、勇以外に言ったのよ。私は彼の心しか読まないわ。」
なら大丈夫と口にする周辺。俺が大丈夫じゃないんだが。まぁ、所詮はゲームだし良いか。トキがずっと王様になるわけでもないだろうし。それに、やりようはある。
「じゃあルールを説明しますね!」
シエンが目を輝かせながら言った。彼女は銀のコップを掲げ、中身をちらりと見せた。
「ここに、一から四と書かれた割り箸と、王様と書かれた割り箸が入ってます!皆で一斉に割り箸を引き、王様と書かれた割り箸を引いた人が、他の人に何でも一つ命令ができるのです!」
その言葉に、部屋の空気が一変した。太郎の目が欲望に燃え、シラスは期待に胸を膨らませる。トキは無表情を保っているが、その瞳に微かな興奮の色が宿っているのが見て取れた。
「何でもひとつ・・、ぐへへへ。」
「最高じゃないか・・。」
「最高ね。」
太郎が低い声で呟き、シラスが続き、トキも同意する。シエンが手をパンと叩き、注目を集めた。
「それじゃあ合図と共に一つ掴んでくださいね!せーの、王様だーれだ?」
緊張感が高まる中、全員が一斉に手を伸ばす。割り箸を引く音が静寂を破る。
俺は自分の割り箸を確認した。三だ。王様は誰だ?
「やった!私が王様です!」
突然、シエンが歓喜の声を上げた。王様と書かれた割り箸を高くあげ、勝ち誇ったように皆に見せつける。その瞬間、俺の背筋に悪寒が走った。シエンの目が俺に向けられ、その唇が不敵な笑みを形作る。
「じゃあ勇さんが〜。」
「まさかの名指し!そして矛先俺か!」
思わず声をあげる。
「そうです!このデスソースを飲んでもらいます!」
シエンはポケットから真っ赤な液体の入った瓶を取り出し、ゆっくりと机に置いた。その瓶を見た瞬間、俺の顔から血の気が引いた。サンペドロの恨みをここで晴らそうというのか。しかし、まだ諦めるわけにはいかない。
「甘いなシエン。名指しじゃなく、数字で呼んでもらわないと、番号の意味がないだろう?ゲームが成り立たないんだ。」
冷静を装ってそう言う。これで俺に当たる確率は四分の一だ。トキに当たる可能性もあるし、適当には言えないだろう。つまり、あまり酷い事は言えない。これが王様ゲームのいいとこだ。
「ううぅ、そうですよね・・。」
「そうよシエン。ちゃんと三番って言わないと。」
こいつ、余計な事を!これじゃあトキが王様じゃなくても、意味ないじゃないか。上手く誤魔化さないと。
「三番?俺は別の番号だぞ。」
「・・上手く躱そうとしてるわね。まぁ、今回は見逃してもいいわ。」
「いや、本当に違うんだって。勘弁してくれ。」
「え、えっと・・、つまり、見間違えってことですかね?因みにトキさんは何番ですか。」
「一番よ。」
「じゃあ、二番がデスソースを飲んでください!」
「はい!グホァ!」
流れるようにデスソースを飲み、その場に倒れるシラス。
「これで一人減ったわね。」
「デスソースはまだまだあります!後二人、行きますよ!」
「王様ゲームってバトルロワイヤルみたいな感じだったっけ。」
さりげなくもう三本、デスソースを机に置くシエン。おかしい。こいつ、全員仕留める気だろ。そうはいくものか。とりあえず、シラスが復活する五分、耐えてみせる。
それぞれの割り箸をコップに戻す一同。そのコップをシエンがシャカシャカと振り、ちゃんと混ぜた。さて、二回戦だ。
「それじゃあもう一回行きますよ!王様だーれだ?」
そして、掛け声と共に皆割り箸を引く。とりあえず、三番の割り箸には爪で少し傷をつけておいた。それを避けて引いたんだが・・、くそ、一番か。これにも目印をこっそりつけておこう。さて、王様は誰だ?
「また私です!次こそは飲んでもらいます!」
「そうはいくかよ。それとトキ、教えるのは絶対ダメだぞ。番号の情報開示はタブーだ。」
「仕方ないからそうしてあげるわ。」
「あれ。なんか俺が悪い感じになってないか?」
この王様ゲーム、二人で俺をいじめようとしてるだけだろ。くそ、やる前に気づけば良かった。早く王様になって終わらせてしまおう。
「くそ、また四番か・・。」
「どうしましょう。今回はヒントが有りません・・。」
「とりあえず四番にしておいていいと思うわよ。」
「俺もそう思うけど。」
なんかボソッとバカが自分の番号バラしてたしな。
「じゃあ四番の人がデスソース二本で!」
「あれ?!増えていくの?!」
そもそも一本飲み終わる前に気絶すると思うんだが。
「大丈夫です!ちゃんと飲ませてあげます!」
「優しさみたいに言ってるけどただの嫌がらせだからな。まぁ俺じゃないからいいけど。」
「へぇ、誰が飲むんだ?」
バカの表情が絶望に染まるのに、時間はかからなかった。




