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本質

「それじゃ、戦いましょう。勝った方がこれを所有し、以後、星の涙について何一つ言及してはならないって事で。」



そう言い、くるっと俺の方を向き、星の涙を移した、茶色い箱を机にトンと置くトキ。



「最後の言及してはならないって、どういう事だ?」



「また勝負しかけられても困るからね。一回で終わらせたいの。つまり、持つならもう独り占めにしましょうってことよ。」



「成る程、りょーかい。」



一回勝負ね。彼女のことだ、負ける可能性のある勝負はしないだろう。絶対何かあるはず。



「それじゃあ勝負内容の説明をするわ。ルールは簡単。ここに大きいグラスが三つと、小さいグラスが一つあるわ。勇は、大きいのと小さいのどっちがいい?」



「とりあえず、小さいの。」



「賢明ね、わかったわ。」



そう言いながら、小さいグラスの一つに酒を注ぐトキ。量は50mlも無さそうだ。



「私はこっちね。」



そして、大きいグラス三つに酒を注ぐ。量は小さいグラスの三倍程だ。



「じゃあこの大きいグラス三つと、小さいグラス。さきに大きいグラスの酒を飲み干せば、私の勝ち。小さい方のグラスの酒を飲み干せば、勇の勝ちってのはどう?」



え、そんなの絶対勝てるだろ。量も三倍あれば、個数も三倍だ。しかし、不自然に有利な条件には裏があるかもしれない。慎重に考える必要がある。



「本当にいいのか?」



「勿論。ただ一つだけハンデとして、大きい方を飲む私は、先に一杯飲み干させてちょうだい。それと、自分から相手、もしくは相手のグラスに触れるのと、魔法だったり、道具を使うのも禁止にしましょう。妨害されたら困るわ。」



「それぐらいは良いけど・・。」



これはおかしい。妨害有りで困るのは、俺の方だ。こっちは妨害するより、飲み干したほうが早く済む。俺に有利な条件ばっかりだが、ここから突破口はあるのか?同じ酒を注いでいたし、酒に細工はない。となるとコップにすでに何か入れてたとかか?



「疑ってるわね。細工なんてしてないわ。なんなら、逆でも良いわよ?私が小さい方でも。それなら楽なものね。」



・・うーん。確かに、見る限り細工は無さそうだ。しかし、負ける勝負をトキが仕掛けるわけがない。となると、何かあるとすれば前提ルール。大きいグラスと小さいグラスのハンデだ。しかも一対一でなく、三対一。先に一本飲ませてとかいうなら、普通に二対一もしくは一対一でも良かったろうに。だが敢えてそうしたという事は、、



「そうだな、逆で頼む。俺が大きい方を飲む。」



「あらそう、別に良いわよ。」



思考して、ギリギリ答えを出す前に、提案を飲む。これ以上考えると読まれるからな。



「じゃあ、大きい方を飲み干したら勇の勝ちね。ちなみに、ハンデはいるかしら?」



「そうだな、先に一杯だけ飲ませてくれ。」



「分かったわ、じゃあどうぞ。」



「ああ。」



ふ、この勝負貰った。相手を読み切った俺の勝ちだ。グラスを持ち、一気に中身を飲み干す。そして、相手のグラス目掛けて、空になった大きなグラスを逆さまにして置、、



「じゃあ、よーいスタート。」



トキは既にグラスを持っていたようで、そのまますぐ飲み干した。



「せこ!」



「貴方が選んだのよ。文句があるなら、小さい方にすればよかったじゃない。」



「そうだけど!そしたら、最初に飲んだグラスを、小さいコップに逆さまに被せて、一切触らせないつもりだったろ!」



その為の、最初一本飲んでいいハンデと、コップの大きさだ。そして、相手のコップに触れるの禁止の追加ルール。相手のコップに自分のコップを被せて仕舞えば、相手は何もできない。



「あら、そんなこと思いつかなかったわ。頑張ったのは貴方だし、負けてあげようと思って、ハンデをあげてただけよ。全く、想像力豊かなのね。」



こいつ・・。白々しい、絶対知ってたろ。



「まぁ、負けは負けだ。同じ事をやれば、俺は勝ってたんだから。有効活用してくれ。」



「そうするわ。あと、一つ謝っとくと、これ中身入ってなかったわ。ごめんなさいね。」



「え?」



そう言い、茶色い箱をぱかっと開けるトキ。そこには何も入ってなかった。という事は・・。



「せこ!やっぱり返せそれ!」



「あら。最初、りょーかいって言ってたじゃない。」



「だから言ったけども!それってどっちみち負けてたってことじゃねーか!」



勝った方がこれを所有する。以後、星の涙の場所や情報について一切言及しない

つまり勝ってたとしても、あの何も入ってない箱を所有していただけで、星の涙について何も聞けなくなっていたと言うことだ。



「負けた後に何を言っても言い訳にしかならないわよ。ちゃんと中身を見ないなんて、お馬鹿さんね。」



「その通りだよ!くそ、いい勉強になったわ。」



この世界で、俺に運が向くことは無いようだ。しかし、この経験から学び、次はより慎重に状況を分析し、相手の真意を読み取る必要があるということを痛感した。表面的な勝利にとらわれず、勝負の本質を見極めることの重要性を学んだ貴重な機会となった。

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